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(回答先: ノーム・チョムスキーインタビュー(益岡氏のHPより) 投稿者 キャプテン 日時 2003 年 4 月 24 日 02:23:57)
New York Timesのために
イラクにおける米国の冒険主義に反対する陳述
現在ワシントンは世界に危険な教訓を与えている。
ノーム・チョムスキー
2003年3月13日
(翻訳:寺島隆吉+岩間龍男+寺島美紀子)公開:2003年3月22日
http://terasima.gooside.com/essay030313iraq1dangerous2adventure3usa.html
現在ワシントンは世界に危険な教訓を与えている。それは「もし米国から身を護りたいのであれば、北朝鮮の真似をして、核兵器などを持ち、相手にとって明確な脅威となるほうがよい。さもなければ米国はあなた方を粉々に粉砕するだろう。」というものである。
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歴史上最強の国家(米国)は世界を力によって支配するつもりであると宣言した。その力における次元では米国は絶対的優位の勢力を誇っている。
ブッシュ大統領と彼のグループは、彼らの手中にある暴力手段が並外れているので、邪魔者は誰であろうと追い払うことができると明らかに信じている。
その結果はイラクや世界中で破滅的なものになる可能性がある。米国はテロリストの報復の嵐を受けるかもしれない。さらに核を使ったアルマゲドン[聖書:世界の終末に善と悪が最後に戦う決戦場]へ突き進む可能性があるかもしれない。
ブッシュ大統領、ディック・チェイニー副大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官と彼らの仲間は「帝国の野望」という態度をはっきり表明している。これについてはG・ジョン・アイケンベリーが『フォーリン・アフェアーズ』の9月号と10月号に「米国がそれに匹敵する競争相手を持たず、世界の指導者・庇護者・用心棒として、いかなる国家も同盟も挑戦できない一極支配の世界」と書いている。
その野望は、ペルシャ湾の資源への拡張的な支配とその地域に米国好みの秩序を作るための軍事基地を持つことを含んでいるのは確かだ。
政権がイラクに対して戦争の太鼓を打ち鳴らす前でさえ、米国の冒険主義は、抑止あるいは復讐のためのテロの拡散と同じように、大量破壊兵器の拡散を起こすだろうと、多くの警告がなされた。
現在ワシントンは世界に危険な教訓を与えている。それは「もし米国から身を護りたいのであれば、北朝鮮の真似をして信憑性のある脅威の姿勢を持ったほうがよい。さもなければ米国はあなた方を粉々に粉砕するだろう。」というものである。
イラクとの戦争は、部分的には「帝国(米国)が一撃を加えることを決定したとき何が待ち受けているのかを証明すること」を意図したものだと考えるのには、もっともな理由がある。しかし、そのはなはだしい軍事力の不均衡を考慮に入れるならば、「戦争」という言葉はほとんど適切な用語でない。
「もし今日我々米国がサダム・フセインを押し止めないなら、明日には彼が我々を破壊するだろう」というプロパガンダ的警告が洪水のようにあふれている。
去年10月、米国議会が大統領に戦争を始める権限を認めた時、それは「イラクによる持続的な脅威に対して米国の国家安全保障を護るため」だった。
しかしイラク近隣諸国で、サダムを過度に心配しているように見える国はひとつもない。その殺人的暴君を憎んではいても。
おそらくそれはイラクの人々が生存の瀬戸際にいることを近隣諸国が知っているからである。イラクは中東地域では最も弱い国のひとつとなっている。『米国人文自然科学アカデミー』の報告が指摘しているように、イラクの経済軍事支出は近隣諸国のほんのわずかな額でしかない。
確かに近年では、イラクによって侵略されたイランやクウェートも含め、近隣諸国はイラクを中東地域に再統合しようと試みている。
イランとの戦争以来、クウェートの侵略のその日まできっかり、サダムは米国の支援から利益を得ていた。その責任者のほとんどは今日ワシントンの舵取り役に返り咲いている。
ロナルド・レーガン大統領と前ブッシュ政権はサダムに対して大量破壊兵器の開発手段とともに援助を与えた。この時のサダムは現在よりはるかに危険人物であったし、毒ガスで何千人ものクルド人を虐殺するような最悪の犯罪をすでに犯していた。
確かに、サダムの支配を終わらせることはイラクの人々から恐ろしい重荷を取り去ることになるだろう。そして、ニコラエ・チャウシェスク[ルーマニアの政治家で、89年の革命で銃殺刑]や他の悪辣な暴君の運命をサダムが辿るだろうと考えるのは妥当である。ただし「もしイラク社会が厳しい経済制裁によって荒廃させられていなかったなら」である。[しかし残念ながら]イラクへの経済制裁は、人々が生きていくためにサダムに頼るようになり、彼と彼の派閥を強化することになっていたのだ。
サダムはその支配権の及ぶ範囲の人々にとっては恐ろしい脅威のままである。が今日、彼の手の届く範囲は自身の領土を越えて広がってはいない。しかし、米国の侵略によってテロリストの新しい世代が復讐をしようと決意する可能性があるし、すでに用意のできているかもしれないテロリストの行動を[政権転覆後の]イラクで実行に移すことになるかもしれない。
現在サダムにはイラクが持っているかもしれない生物化学兵器を厳しい統制下に置く十分な理由がある。彼はそのような兵器を世界中のオサマ・ビンラディンに与えることはないだろう。なぜなら彼らはサダム自身にとっても恐ろしい脅威であるからだ。
ブッシュ政権のタカ派は、攻撃された場合の最後の手段として以外、イラクがその所持する大量破壊兵器を使用する(すなわち即座の焼却という危険を犯す)ことはしないと理解している。
しかし攻撃にさらされてイラク社会は崩壊し、大量破壊兵器の管理統制も崩壊するだろう。これらの大量破壊兵器は、国際的な安全保障問題の専門家ダニエル・ベンジャミンが警告するように「民営化」され、巨大な「非通常兵器の市場」に提供され「買い手を見つけるのに何ら困難もないだろう」。それこそ本当に「悪夢のシナリオ」であると彼は言っている。
戦争でのイラクの人々の運命に関しては、誰も確信をもって予測出来ない。CIAもラムズフェルドもイラクの専門家だと主張する人々も誰も予測出来ない。
しかし国際的な救援機関は最悪の事態に備えて準備している。
尊敬を受けている医療機関による研究では、死亡者数は数十万人になるだろうと見積もっている。国連の機密文書は、この戦争は「並外れた規模の人道上の非常事態」を引き起こし得ると警告している。この警告には、イラクの子どもの30%が栄養失調で死ぬ可能性も含まれている。
今日ブッシュ政権はイラク攻撃の恐るべき余波についての国際救助機関の警告に注意を払っていないように思われる。
私生活においてであろうが国際問題においてであろうが、まともな人間なら圧倒的な力をもつ理由が提示されない限り暴力の使用や脅しを考えるようなことはない、という多くの理由の中に、予想される大惨事は存在しているのである。そして確かにそんな正当化が出てくる可能性は、ほんのわずかですら今までにはなかった。
Noam Chomsky is a political activist, professor of linguistics at the Massachusetts Institute of Technology and author of the bestseller "9-11." He wrote this article for the New York Times Syndicate.(ノーム・チョムスキーは政治的な活動家であり、マサチューセッツ工科大学の言語学の教授であり、ベストセラー『9.11』の著者である。彼はこの記事をニューヨーク・タイムズ通信社のために書いた。)