現在地 HOME > 掲示板 > 戦争32 > 356.html ★阿修羅♪ |
|
04/17 17:04 半世紀ぶりの帰郷に光 イラク生まれのユダヤ人
イラク戦争の推移を特別な思いを胸に見守ってきたイスラエル人
たちがいる。一九四八年のイスラエル建国前後に移民したイラク生
まれのユダヤ人たちだ。反イスラエルのフセイン政権崩壊で半世紀
ぶりの帰郷に道が開かれる可能性が出てきたことに喜びを隠し切れ
ないでいる。
「私の心はもうイラクに飛んでいるの」。イスラエル中部モディ
インに住むサリマ・トメルさん(82)はフセイン大統領の銅像が
倒されるのをテレビで見ながら、うれしさのあまり踊り出した。
夫と子供五人とともに後にした生まれ故郷、二度と訪れることが
できないと思っていたイラクの地を再び踏むことができるかもしれ
ないからだ。
イスラエルの全人口約六百五十万人のうちイラク系ユダヤ人は二
十五万人。第一世代は約十二万人で、イラクの文化、風習を保つ人
も多い。
サリマさんはバグダッド近郊の町ヘッラ生まれ。記憶の中にある
のはイスラム教徒とユダヤ教徒が共存していた古き良き時代のイラ
クだ。
三二年に英国から独立したイラク王国ではユダヤ教徒が財務相を
務めたこともあった。しかし、親ナチス政権の登場やパレスチナに
ユダヤ人国家を建設するシオニズム運動の影響などで反ユダヤ感情
が高まった。イスラエルへの移民は五一年にピークに達し、ほとん
どが無一文で移住した。
金細工師だった父親はイスラム教徒からも尊敬された町の名士。
一家がイラクをたつ朝には近所のイスラム教徒たちが「どうして行
ってしまうのか」と涙を流し、サリマさん自身も「自分の国を離れ
る悲しみでいっぱいだった」という。
イラクでの戦況を伝えるテレビ映像はサリマさんに半世紀前のバ
グダッドを鮮明によみがえらせた。チグリス川にかかる美しい橋。
漁師が捕る魚のにおい…。思い出を語る時は昔使ったアラビア語に
なる。
「生まれ育った土地が戦火にまみれるのを見るのは胸が張り裂け
る思い」。フセイン大統領は憎いが、苦しんでいるのは罪のない一
般の人たちだからだ。
世界中からのユダヤ人移民で成り立つイスラエル。その建国はパ
レスチナ人の故郷を奪い、これまで三百七十万人の難民を生むと同
時にイスラエル・アラブ紛争の根源となり、サリマさんらの帰郷を
阻んできた。
「祖先の墓の跡地を捜し、近所に住んでいたイスラム教徒たちに
会いたい」。イラク戦争の結果、サリマさんの夢が現実になろうと
している。(エルサレム共同=島崎淳)
(了)
[2003-04-17-17:04]
nifty共同通信ニュース速報