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【哲学クロニクル】世界無秩序の始まりの終わり(2)
http://www.asyura.com/0304/war32/msg/252.html
投稿者 愚民党 日時 2003 年 4 月 17 日 13:24:55:

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哲学クロニクル 第371号
(2003年4月16日)
世界無秩序の始まりの終わり(2)
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ウォーラーステインのコメントの後半です。文中で言及されている書物には邦訳
があります。『ユートピスティクス : 21世紀の歴史的選択 』松岡利道訳、藤原
書店, 1999.11です。

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世界無秩序の始まりの終わり(2)
(イマヌエル・ウォーラーステイン、2003年4月1日)
http://fbc.binghamton.edu/110en.htm


この政策はソ連が崩壊するまでは、かなり成功した。しかしソ連の崩壊で、第一
の中心的な目標は支えを失ったのである。この1989年以降の新しい状況のもとで、
サダム・フセインはクウェートに侵入するというリスクを犯せたのだし、アメリ
カと休戦することもできたのだ。この1989年以降の地政学的な状況のもとで、第
三世界の多くの諸国が崩壊し、アメリカと西欧は、熾烈な内戦を防ぎ、なくすと
いう基本的に勝利のない試みを迫られたのである。

この分析では、もう一つ別の要素を考える必要がある−−世界の資本主義システ
ムの構造的な危機である。ここでその原因を説明する暇はないし、『ユートピスティクス』
という書物で詳しく説明している。ここでは結論だけを要約しておこう。わたし
たちが経験している五〇〇年前からのシステムは、もはや資本の蓄積の長期的な
展望を保証することができなくなっている。そのためにわたしたちは世界がカオ
スとなる時代に突入した。経済、政治、軍事状況が激しく揺れ動き、ほとんど制
御することができない時代である。

そのカオスのためにいま、システムは分岐しようとしている。世界は共同で、ど
のような種類の新しいシステムを選択するのだろうか。この新しいシステムは資
本主義のシステムではないだろう。選択肢は二つある。資本主義以上に階級的で
不平等なシステムとなるか、ほぼ民主主義的で平等なシステムのどちらかだろう。

アメリカのタカ派の政治を理解するために必要なのは、タカ派が目指しているの
は、資本主義を救うことではなく、資本主義の代わりに、別のもっと悪いシステ
ムを確立することであると理解することだ。アメリカのタカ派は、ニクソンから
クリントンまで受け継がれたアメリカの世界政策が、現在では実行不可能になっ
ているし、災厄をもたらすと考えている。

これがもはや実行不可能だというのは、おそらく正しいだろう。タカ派が短期的
に、この世界政策の代わりに採用しようと望んでいるのは、アメリカ軍が計画的
に介入する政策である。非常にマッチョで攻撃的な政策だけが、自分たちの利益
になると信じているからだ(アメリカの利益になるというわけではない。わたし
はこの政策はアメリカの利益に反すると考えている)。

オサマ・ビンラディンが2001年9月11日にアメリカにテロ攻撃を成功させたこと
で、タカ派はアメリカ政府の短期的な政策を初めてコントロールできるようにな
った。タカ派はすぐにイラク戦争の必要性を訴えた。イラク戦争がタカ派の中期
的な計画を実行するための第一歩となると、見抜いたからだ。そしていま
この第一歩がやってきた。戦争は始まった。この戦争が、始まりの終りというの
は、そのためだ。

それではタカ派は次にどう動くのだろうか。それはイラク戦争のなりゆきに応じ
て異なるだろう。戦争が始まって一週間たったいま、タカ派が望んだほど事態は
楽観できないことがはっきりしてきた。長く、血なまぐさい戦争になりそうだ。
アメリカはおそらくサダム・フセンイを打ち負かすだろう(まだ確実ではない)。
しかしその後で問題は山積みになる。わたしは前回のコメント「ブッシュはもて
るだけのものを賭けた」で、この問題について詳細に分析した。

タカ派にとって事態が思わしくないという事実によって、タカ派はさらに絶望的
になるだけだ。タカ派は自分たちの目指すものに関しては、さらに攻撃的になる
だろう。短期的には、タカ派が目指しているものは二つある。第三世界で核兵器
を所有する可能性のある諸国と闘うこと(北朝鮮、イランなどの諸国だ)。そし
てアメリカ合衆国の国内に、抑圧的な警察装置を確立することである。

この二つの目標を実現するには、タカ派は大統領選挙でもう一度勝利する必要が
あるだろう。タカ派の経済政策は、アメリカを破産させる政策のようだ。これは
まったく意図しないなりゆきなのだろうか。それともアメリカ国内の核心的な資
本主義層が、タカ派の計画を完全に実現するための障害になると考え、この層を
破滅させようとしているのだろうか。

この時点ではっきりしているのは、世界の政治的な闘いが熾烈なものとなってき
たということだ。1970年から2001年までのアメリカの世界政策に固執する人々は、
アメリカ国内では穏健な共和党と民主党のエスタブリッシュメントであり、フラ
ンスやドイツなど、多くの意味で反タカ派の西欧の諸国だ。しかしこれらの人々
はこれからは、これまでよりも苦痛の多い政治的な選択を迫られることになるだ
ろう。

しかし全般的にみて、このグループの世界状況の分析には、明快な中期的な構想
がない。そしてアメリカのタカ派がやがて姿を消すという願望に、あてにならな
い望みを託しているのである。しかしタカ派は姿を消したりしないだろう。それ
でもタカ派を打ち破ることはできるのだ。

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