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【ジッダ(サウジアラビア)会川晴之】イラクに対する米英軍の攻勢が続く中、アラブ有数の親米国家サウジアラビアで反米感情が急速に高まっている。政府の厳しい統制下にあるサウジでは、表立った反発は起きていない。だが、イスラム発祥の地・サウジの市民はイスラム同胞が次々と命を奪われてゆく映像や報道に接し、動揺が広がっている。
紅海に面するサウジ最大の商業都市ジッダ。イスラムの2大聖地メッカ、メジナの入口にあるジッダには1500を超すモスク(イスラム礼拝堂)がひしめく。午後6時過ぎ、旧市街地の中心にあるスーク(市場)に、夕刻の礼拝開始を告げるアザーンがあちこちのモスクから流れ、建物に反響しこだまする。
モスク内では連日、イマーム(導師)が「不正義な戦争の即時停戦」「米英軍の即時撤退」を訴える。「傷つき、悲しむイラク同胞のために祈りを捧げよう」。その言葉に、サウジ国民の戦争反対の思いが高まる。
「この戦争は、米国がイスラエルの利権を守り、石油を支配するためだ」。地元英字紙のマフムッド・アーメド記者(26)はまくしたてた。だが、サウジの内政の話になると一転、「政治のことはよくわからない。他の人に聞いてくれ」と声をひそめた。
教師歴は20年間近い男性(52)は匿名を条件に話し始めた。「この国で3人が集まって政治の話をすれば、逮捕される。よくて監獄行き、悪けりゃ海に浮かぶか、砂漠に捨てられるの運命だ。『明日の夜明けを見たいのなら、政治には関心を持たないことだ』なんて格言もある」
サウジは90年の湾岸危機を機に、イラクとの国交を断絶したが、ここ1年間は一時的に国境を開放するなど関係改善を図ってきた。しかし、イラク戦争開戦に前後してジッダのイスラム会議機構(OIC)担当のイラク大使を秘密裏に国外退去させたほか、フセイン大統領の亡命や退陣を公式に呼びかけるなど「フセイン後」を目指す外交姿勢に転換した。フセイン体制崩壊は織り込み済みだったといえる。
市民の間では、91年の湾岸戦争時にイラクからミサイル攻撃で味わった恐怖が根強く、フセイン大統領を支持する声はまったくない。だが、20〜30%に達する失業率にあえぐ若者たちは現状への不満から、反米感情を高める。
「(米同時多発テロの黒幕とされる)ウサマ・ビンラディンはナイス・ハートの持ち主だ」と話すのはタクシー運転手のハムダンさん(25)。若者にとってサウジ出身のビンラディン氏はヒーローに映る。「僕だってチャンスがあれば、米軍と闘いたい。死ぬのは少しも怖くない」と米国への敵意をむき出しにする。
サウジの国内では昨年から米国人、英国人を狙ったテロが相次ぐ。今年2月には首都リヤド郊外で英国人が銃撃されて3人が死傷したほか、米軍が駐留するリヤド郊外のプリンス・スルタン基地や北西部の都市タブークの駐屯地で爆破騒ぎが伝えられた。
サウジ最大の乳業メーカー・アルサリ乳業の広報担当者アムロ・アテイアさんは「要請があっても米軍には絶対に売らない」と断言する。「もし米軍との契約の事実が公になれば国内市場を失うからだ」と説明した。
「家に帰ったら、イラクの傷ついた女性や子供たちの映像を見て、女房、子供が泣いているんだ」。サウジ実業界の有力者はそう言って、国民が深い悲しみの中にあると強調した。言論が厳しく統制されている同国だけに、不満が一気に爆発するのを懸念する声も出ている。
[毎日新聞4月11日] ( 2003-04-11-21:39 )
http://www.mainichi.co.jp/index.html
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20030412k0000m030102000c.html