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From : ビル・トッテン
Subject : 米国と戦争捕虜
Number : OW569
Date : 2003年4月11日
「衝撃と恐怖」と名づけた大規模な空爆を米英軍が行った数日後、イラク国営テレビがイラク領内で捕らえた米軍兵士の姿を放映したことについて、ラムズフェルド米国防長官は戦争捕虜の取り扱いを定めたジュネーブ条約違反であるとしてイラクを強く非難した。
(ビル・トッテン)
米国と戦争捕虜
国際人道法とも呼ばれるジュネーブ条約は世界180カ国以上の政府が署名しており、4つの条約と2つの追加議定書からなる。捕虜に関するものは3つめの条約で「捕虜は常に人道的に待遇しなければならない」として、処遇内容や方法を規定し、処刑、拷問、暴行、脅迫、報復行為などを禁止、侮辱や公衆の好奇心から保護されねばならないとある。条約の制定はテレビが普及する以前であったため、テレビカメラの前で捕虜をさらすことについてはふれていないが、顔写真の公開を禁じている。
圧倒的な軍事力を誇り世界各地に兵士を送り込んでいるアメリカが、捕虜となった自国の兵士の扱いに大きな関心があるのは当然だろう。しかし、ほかの政府に対してジュネーブ条約の規定を尊重するよう求めるならば、アメリカ自身もその条約に従うのが当然である。
ペンタゴンが流した情報をそのまま報道する日本のメディアは、イラク国営テレビが米軍兵士を放映したことについては報道したが、その前日に米ニューヨークタイムズ紙が米軍兵士の足元にひざまずく屈辱的なイラク兵捕虜の写真を掲載したことについても指摘しただろうか。イラクがその翌日に行ったテレビ放映はアメリカに倣ったにすぎず、アメリカの捕虜に対する対応はアメリカ政府がとっているそのほか数多くの二重基準の一つにほかならない。
以前にも書いたが、カブール郊外の米軍基地では米軍が捕らえたアルカイダのメンバーに対してさまざまな拷問が加えられていることが人権団体などから指摘されている。イラクのジュネーブ条約違反を非難したラムズフェルド米国防長官は、アルカイダのメンバーは「戦争捕虜」ではなく「不法な戦闘員」であるためジュネーブ条約に基づく権利はない、だからいかなる屈辱を与えようともかまわないと明言している。
イラクに対して国際法の順守を声高に主張するものの、その記録をみればアメリカが国際法の熱心な擁護者ではないことは一目瞭然であり、米軍兵士が捕虜となってイラクのテレビで屈辱的な尋問をされているのを目にしたときだけ、急に国際法を持ち出すにすぎない。
確かにジュネーブ条約は政府軍や一般国民の抵抗軍を保護するものであってテロリストグループを守るものではない。しかし、捕虜か不法な戦闘員かを決める権利はアメリカにはない。いかなる人であっても公正な裁判を保証されるとジュネーブ条約に明記されている限り、そのプロセスも経ずに拷問や体罰、残虐で品位を汚す扱いをアメリカが一方的に行うこと自体が、国際法に違反する行為だ。
ジュネーブ条約だけではない。国際法を無視するアメリカのごう慢さは著しい。2001年3月、ブッシュ大統領は京都議定書からの離脱を宣言した。京都という名の通り日本が議長国となっているこの議定書は、大気中に排出される温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を制限することが目的である。現在、地球上で排出される二酸化炭素の四割近い排出量を占めている国がアメリカだが、議定書に合意するということはアメリカの産業やその国民生活に変更を余儀なくさせる可能性があるということである。どこよりもエネルギー消費の多いアメリカ抜きでの地球環境対策など意味がない。しかし、京都議定書による他国からのアメリカ産業に対する攻撃は許さないというのがアメリカの理屈である。
ブッシュ大統領はさらに同年12月、弾道弾迎撃ミサイル制限条約から公式に離脱した。核兵器の時代において最も主要な中心的武器の管理協定を破棄したのである。生物兵器協定の施行を可能にする議定書にも反対票を投じている。
2001年4月、アメリカは国連の人権委員会のメンバー改選で落選した。国連分担金の支払いを保留にした上に分担率を25%から22%に引き下げ、また、人権委員会のメンバーとしてアメリカは、エイズの薬をもっと安価で入手できるようにする決議にも、さらには十分な食糧が入手できるということを基本的人権として認める決議にも単独で反対した。
このほかにも、地雷禁止条約止条約への署名拒否、戦争犯罪や人道に対する罪を裁く国際刑事法廷条約にもアメリカは反対している。国連を無視してイラク攻撃を開始したように、アメリカが世界を支配する構図を邪魔する国際法など順守するつもりはまったくない。イラク戦争での捕虜の扱いに対する二重基準は、米国のごう慢さを示す一つの例にすぎないのである。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
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