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記事の「丸投げ」はあまりしたくないのですが,一般紙にしては今回のイラク戦争の本質を非常によく指摘していると思いますので,引用させてもらいます。
ブッシュ・ドクトリンの次の暴発をいかに防ぐかが,早くも大きな課題として浮上していると考えます。
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http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20030411k0000m030139000c.html
イラク戦争:「世界内戦」が始まった 外信部長 中井良則
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開戦から3週間、500時間の破壊と殺りくの末、米軍はバグダッドを手に入れた。世界最強の軍事力を動員し、米国は自分が選んだ外国政権をいつでも、どこでもつぶせることを実地に証明した。戦闘は実況中継され「首都まであと何キロ」とカウントダウンしながら世界中が同時観戦した。イラク戦争が現代史に持つ意味は、フセイン体制崩壊というイラク一国の次元にとどまらない。地球は、取り戻しのできないゆがんだ状況に入り込んだ。米国が帝国として君臨する地球の「世界内戦」とでも呼ぶべき新時代の新戦争を私たちは体験している。
ブッシュ・ドクトリンの最初の発動だった。先制攻撃と政権変更をキーワードとするこのドクトリンは三つの要素からなる。(1)米国はある国を自国と世界にとっての脅威と認定できる。(2)国連が同意しなくても、攻撃される前に、その国で戦争ができる。(3)政権を武力で倒し、軍事占領し、親米政権を樹立できる。
この考え方は、国境や国家の主権尊重という国際関係の伝統的な枠組みを超越している。刃向かう政権を武力で排除する決意。国際協調に手を縛られたくない単独主義。地球全体が、さも米国の勢力圏であるかのようにふるまう帝国の中の内戦だ。
そこでは米国の利益と安全の確保がすべてに優越する。賛同する国々が「有志連合」を結成して米国を支援する。賛成しないなら、遠くで見ているしかない。戦後統治は血を流した国々がになう。ある国民を圧政から解放するのは当事者の国民ではない。米国流の民主主義と自由を米国が銃で持ち込む。外からの革命、国家改造の実験場がイラクだ、とも読める。
イラクの脅威とは大量破壊兵器のはずだった。だが、イラクは今回の戦争で化学・生物兵器を使わず、米軍が捜してもいまのところ見つからない。代わって「民主化」がいつのまにか戦争目的として強調される。いまの米国は敵も戦争理由も自由に選べる。
戦争の受け止め方も変わった。湾岸戦争で始まった「茶の間で見る戦争」は、今回、同時中継や従軍取材でますます身近になり、リアルタイムの映像が世界に流れた。その意味でも戦場と日常生活の境が低くなった「世界内戦」状態だ。一方で「フセイン大統領のテレビ演説」や、「ある町の制圧」といった本物かどうかわからない情報が流され、全体の構図は逆に見えにくくなった。
「戦争の最初の犠牲者は真実だ」。1918年、米国の上院議員が残したことばは、世界内戦の時代にもそのまま通用する。
正義に欠ける戦争であっても、フセイン体制なき状況を、新しい現実とみなして世界は動く。ワシントンで描いた設計図通りにイラクを改造しようとする米国をだれも阻止できず、米国の戦果を追認する。その一方で、家を焼かれ愛する家族を殺された人々の涙は止まらない。米国が何を狙い、イラクで何があったのかを明らかにする。この戦争を止められなかった私たちが、第二次世界内戦を防ぐための出発点はそこにある。
[毎日新聞4月11日] ( 2003-04-11-00:56 )