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【参考資料】1900〜の中東歴史年表
http://www.asyura.com/0304/war31/msg/1064.html
投稿者 K 日時 2003 年 4 月 14 日 02:29:40:

1900年

07 ドイツ,ロシア両国,バグダッド鉄道の権益に関し密約.

08 ペルシア皇帝,ロシアの支援によりクーデターに成功.ロシア軍はペルシア北部に進駐.

09 アングロ・ペルシアン石油会社設立.

12 トルコとブルガリア,ギリシア,セルビア間にバルカン戦争勃発.

14 第1次世界大戦勃発.トルコはドイツと秘密同盟条約締結.

15 英国,オスマン・トルコからのアラブ独立を約束.これを受け,メッカのシャリーフ・フセインはオスマン・トルコに反旗.

16.5.09 英・仏・露のあいだで,サイクス・ピコ秘密条約締結.オスマン・トルコ崩壊後の中東分割について合意.メソポタミアをイ

ギリスに,シリア沿岸をフランスに,アルメニアをロシアに,パレスチナは国際管理とする.英国は前年のアラブとの約束を翻す.

17.11 英国「バルフォア宣言」,ユダヤの国をパレスチナに建国することに賛成.

17 アラビアのローレンス,アラブ反乱軍をひきいてアカバを占領.

20 アンカラにケマル・パシャの率いる臨時政府樹立.

20 サンレモ会議.イラクは英国の委任統治下におかれる.

21.5.09 英国植民地省のパーシー・コックス卿,イラクのペルシャ湾進出を阻止するため,バスラ地方からクウェートを分離.

21.8 英国,イラク国内の反発を押さえるため,シャリーフ・フセインの子ファイサルを国王にたて,立憲君主体制を樹立 .

21 ペルシアでレザー・カーンのクーデター勃発.

22 イギリス,エジプトの独立を認める.

22 トルコにおけるケマル・アタチェルクの改革.帝制の廃止.封建制と重商主義からの脱却.近代化と資本主義の育成.農地改革は不徹底に終わり,大地主と新興資本家が癒着し,労働者・農民を搾取・収奪する体制に移行.

28 イギリス,エジプトの集会の自由法案の廃棄を要求し最後通牒.

32 イラクで,軍事基地の使用権,埋蔵石油の採掘権などに固執する英国に対し抗議活動が活発化.英国は委任統治の終了に同意し,イラク独立.

33 エルサレムでアラブ人の大デモ.英官憲と衝突.民族主義の高揚

33 イラクのファイサル国王が死去,息子のガジが王位継承.

34 シリア議会,対仏条約反対のために,無期限停会

37 イギリス,パレスチナのアラブとユダヤ国家への分割を勧告

39.9.01 第二次世界大戦が始まる.

39 ガジ国王死去,息子のファイサル2世が王位継承

41.4 ガイラニーら若手将校のクーデターが成功.国王一家は一時国外退去.その後英国の力で復権.

41 イギリス,ソ連,イランへの進駐開始.

45 イランのタブリーズでソ連郡の援助の下にアゼルバイジャン自治共和国樹立.

46 アフラクの「バース党」綱領発表.反共社会主義路線とともに,汎アラブ路線,イスラム教と国家の分離を提起.強権による大衆操作を通じて,国家社会主義をめざす.

47.11.29 パレスチナ分割勧告案,米国の強い圧力の下,国連で可決.賛成33,反対13,棄権10.決議の結果,人口で3分の1,所有地で6%を持つに過ぎなかったユダヤ人が,パレスチナの56.5%の土地を獲得.

48.5.14 イギリスのパレスチナ委任統治終結.イスラエル,テルアビブで建国を宣言.米ソはただちにこれを承認.アラブ諸国はこれを認めず.

48.5 第一次中東戦争が開始される.エジプト,ヨルダン,シリア,レバノン,イラクの連合軍がパレスチナ奪還をめざし宣戦するが敗

北,イスラエルが領土を拡大.アラブ・パレスチナ人90万人以上が追放され,難民化

48 惨敗したアラブ諸国は,近代化の遅れが痛切となり,改革運動に拍車がかかる.シオニズムへの対抗概念として汎アラブ主義が台頭.

49.5 イスラエル,国連加盟.

51 イランのモサデク政権,アングロイラニアン石油(現在のブリティッシュ・ペトロ リアム)の国有化を提唱.国民戦線優位を占める国民議会は法案を可決.旧宗主国のイギリスと,アメリカの力関係の変化に乗じて成功.西側諸国はイラン石油のボイコットを開始.

52 エジプトにおけるナセルら自由将校団のクーデター.国王を退位させ共和制を樹立.大エジプト主義と結びついたナセル主義を,アラブ世界に広める.二次にわたる農地改革で大土地所有の徹底した廃止に成功.しかし土地なし農民は解消せず.

53 イランでCIAに援助されたザヘディ将軍のクーデター.二年にわたる制裁で弱体化したイランのモサデク政権は転覆される.米国はシャー・レザ・パーレビをイランの権力の座に据える.

54 イラン・国際石油合弁会社間に新石油協定.

54 イラク・バース党が結成される.

55 バグダッド条約機構が結成される.米国の支援を受けた反共・反ソ連軍事同盟.

55 トルコ・イラク間に相互防衛条約.イギリス同条約議定書に調印.

56.10.29 イスラエル軍,エジプトに進撃(第2次中東戦争).

56.11 ナセル,スエズ運河の国有化を宣言.イギリス,フランスはスエズ派兵,米・ソを中心とする各国の非難を浴びてエジプトから撤退.

57 アイゼンハワー,中東特別教書を提出.国際共産主義の危険阻止のため,軍隊出動の権限,経済援助を要請(アイゼンハワー・ドクトリン).

57 バース党を中心にイラク統一民族戦線(UNF)結成.民族民主党,イラク共産党が結集.親英反共のヌリ・エス・サイド政権と対立.

1958年

58 アジプト・シリア合併しアラブ連合共和国成立.

7.14 イラクでアブデル・カリム・カセム准将による民衆を巻き込んだクーデターが成功.王政を破棄しイラク人民共和国を宣言.ファイサル二世,ヌリ首相らを殺害.西側資本の国有化など民族主義政策を開始.

7.15 米海兵隊 レバノン上陸.

7.17 英降下部隊 ヨルダン進駐.

7.26 イラク暫定憲法が公布される.@イラクはアラブの一部,Aクルド族はアラブと連合,Bイスラームは新国家の宗教,などがうたわれる.

8.21 国連緊急総会 アラブ10ケ国提案の米英軍撤退決議を採択.

10月 イラクのカセム政権,アブデル・サラム・アレフ副首相ら親ナセル派閣僚を解任.

59.3 ナセル派の将校がモスルで反乱.この後カセムは共産党を重視する人事.アラブ派との緊張が強まる.

59 イラク バグダッド条約機構から脱退.アメリカは,バグダッド条約に代わるものとして,トルコ・イラン・パキスタンとそれぞれ相互防衛条約を結ぶ.同年,中央条約機構(CENTO)に発展.

61 クウェート独立.首長アス・サバーによる近代化路線.国内中間層が存在せず,石油労働者との矛盾が直接政治に反映する政治

構造となる.オーマン,カタール,アラブ首長国連邦,バーレーンでも同様の動き.

61.9 シリアでクーデター.アラブ連合共和国から脱退.アラブ連合共和国は事実上崩壊.

62 北イエーメン民族革命.サウジアラビアの干渉により8年にわたる内戦に移行.南イエーメンはイギリスからの独立運動を通じて,民族解放戦線が指導権をにぎり社会主義をめざす.

62 北イエーメンのサヌアでクーデター.エジプトは共和派を支援して内戦に介入.サウジとの代理戦争となる.

1963年

2.08 イラクでバース党の指導する軍事クーデター.共産党色の強いカセム政権を嫌う米CIAが支援.アブデル・サラム・アレフが国家元首・革命評議会議長に就任.「統一・自由・社会主義」を目標に掲げる.カセム首相を虐殺し,共産党とクルド族への大弾圧を開始.

3 シリアでもバース党による反乱が成功.銀行国有化に始まり,大企業のほとんどを接収.経済のいきづまりに直面して,私的企業を復活.

4.17 エジプト・シリア・イラクの間に三国連邦国家協定が締結される.その後ナセルの独裁傾向に反感が強まり,計画は流産.

11.18 アレフ,自主クーデターにより政権内反対派を粛清.大統領に就任.

63 シリアに逃亡していたサダム・フセイン,帰国し「死者の宮殿」の拷問官兼尋問官に就任.

63 イラン国王パーレビ,「白色革命」6項目を提案. 大地主の力を弱め,王権強化をはかる.農民を都市の中間層と切り離し,国民戦線を弱体化させるのが狙い.水利権に手を着けず,まもなく大地主と妥協,反動化していく.

64.5 PLO結成.

65.9 イラクで親ナセル派のアレフ・アブデル・ラザズ首相による反乱,失敗に終わる.アブデル・サラム・アレフはナセルとの距離を広げる.

1966年

4 イラクのアレフ大統領,ヘリコプター事故により死亡.弟のアレフ将軍が新大統領に就任.文民首相バザズは,法の支配確立,クルド族との和解に努める.

8月 イラク軍部,バザズのクルド政策を拒否し解任.

11 シリアでバース党急進派によるクーデター失敗.軍事政府は反乱軍を虐殺する.

66 フセイン、バース党の書記長に就任.

1967年

7.06 エジプトのイスラエルの海路封鎖をきっかけに第三次中東戦争勃発.この海路はスエズ戦争の停戦時にイスラエルが獲得したもの.イスラエル軍は,電撃作戦により6日間でシナイ半島・ヨルダン川西岸・ガザ・ゴラン高原を占領.エジプト軍を崩壊させる.このことから「6日間戦争」とも呼ばれる.

67 イラク アメリカと国交断絶.

1968年

7.17 イラク,クーデターでバース党左派の政権誕生.アハメド・ハッサン・アル・バクル将軍が軍事評議会議長に就任.

7.30 イラクでバクルによる第二クーデター.親西欧派のエル・ナイフ首相を追放し,自ら首相兼軍参謀総長に就任.バース党員のみで構成される革命指導評議会(RCC)が行政・立法の全権を与えられる.

68 6日間戦争で活躍したパレスチナ・ゲリラ,PLOに結集.アラファトが議長に就任.

1970年

3 イラク政府とクルド族指導者バルザーニが会談.@イラクはアラブとクルドからなる国家である,Aクルド族地域の自治承認,B副大統領の一人をクルド族とする,などで合意.しかし合意は実行されず,イランの支援を受けたクルド族は反抗を繰り返す.

70.7 イラクでバース党,共産党,クルド民主党(KDP)からなる国民戦線が結成される.バクル政権のソ連接近を反映したもの.

70 ヨルダン国内で政府軍とパレスチナ・ゲリラによる内戦.

1971年

9月 サダム・フセイン,イラク国家評議会副議長に就任.政府と党の実権を掌握.

71 バクル大統領,国民憲章を提案.左翼との和解に乗り出す.イラク共産党はこの提案を支持,

71 アラブ首長国連邦独立とイギリス軍撤退.パックス・ブリタニカに代り,イランの軍事大国化とイランを主軸とした白色軍事同盟体制.

1972年

4.09 イラクとソ連,友好条約を締結.パレスチナ解決方式・イラク共産党問題などで食い違いを残す.

72 PFLPなどパレスチナ・ゲリラによるハイジャックあいつぐ.ロッド国際空港襲撃事件.

72 イラク政府,石油国有化を宣言.米国はイラクをテロリスト支援国に指定.この発表の前日,ニクソン大統領はイランのシャーと密約を結ぶ.イラク弱体化のためにイラク領内のクルド人に武器を供給することとなる.

1973年

7月 イラクでバザズ元首相らアレフ時代の政治家に対する弾圧.これに対しナジム・カザル軍治安長官が反乱を起こすが失敗.

10.06 第4次中東戦争開始.失地回復を狙うエジプトが,スエズ運河を渡河,攻撃開始.シリアも参戦.国連はイスラエルに有利な米ソ共同停戦案.

10 OPECの原油の輸出量制限により原油価格が高騰,「オイルショック」発生.

73 レバノン国軍とパレスチナ・ゲリラとのあいだで戦闘開始.

75 アメリカ,レバノン内戦に50万ドルの医療援助を供与.レバノン分割の方向を出す.レバノン内戦激化,イスラエルはパレスチナ難民キャンプを反復攻撃.

75.3 イラクのサダム・フセイン国家評議会副議長とイランのシャー,アルジェのOPEC首脳会議で会談.シャットル・アラブ川の境界を決める.境界はイラクの譲歩で川の東岸から中央線に決まる.両国関係の修復にともない,イランのクルド人に対する援助はすべて打ち切られる.協定成立後イラク軍はただちにクルド族に対する攻撃を開始.バルザーニら幹部はイランへ逃亡.

76 シリアのレバノン進駐開始.シリアはPLO指導者交代を主張.

77 アレキサンドリア,カイロで物価騰貴に抗議する民衆の暴動.サダトは経済危機脱出のためアメリカに屈服.イスラエルを訪問し和解をよびかける.

1978年

3 イラクで共産党に対する大弾圧.軍内に秘密細胞を結成した共産党員21人が処刑され,数十人が投獄される.

9 カーターとサダト,キャンプデービッド合意.イスラエルはレバノン南部に侵入し事実上占領.

11 イラクの提唱でアラブ首脳会議.エジプトに対する制裁の基本原則を定める.

1979年

3 エジプトとイスラエルが平和条約を締結.

7 サダム・フセイン,老齢を理由にバクル大統領を辞任させ,みずから大統領・革命評議会議長に就任.さらにバース党書記長.古参

のバース党員など300人あまりを殺害.

12.17 イラン・イスラム革命が成功.ホメイニ師の指導で,イスラムの教えに一致した社会建設を目指す.

12.27 ソ連,アフガニスタン侵攻.

1980年

1月 シーア派イスラム党とダワ党が,フセイン一派の暗殺を試みるも失敗.フセインは多数を処刑し,シーア派13000人を国外退去.

2月 サダム,パン・アラブ憲章を発表.アラブ世界からの外国勢力の排除,アラブ諸国の連帯を訴える.

6月 カーター大統領,石油資源への米国のアクセス確保には湾岸地域への武力介入の辞さないとするカーター・ドクトリンを発表.

9.22 イラク,イラン国内各地に爆撃を加える.イラン・イラク戦争おこる.「イスラムによる革命輸出」政策をとるイランに対し,米国の

意を受けたサダム・フセインが戦争を仕掛ける.イスラム革命の波及をおそれたアラブ諸国や欧米諸国はイラクを支援.イラクは中東随一の軍事大国化.

10月 米国,緊急展開部隊(RDF)を結成.米国はイラクとイランの両国に援助を提供,戦争を八年にわたり長期化させる.

81.6.07 イスラエル空軍機,核開発を狙うバグダード近郊の原子力センターを爆撃.

82.6 イスラエル軍,レバノンに侵攻.パレスチナ難民キャンプを襲いPLOを一掃.

82 米国,イラクへの「テロ支援国家」指定を解除.米農務省の商品信用会社がイラクに約3億ドルの信用供与.イラクに米・麦を供給.

83.12.20 ラムズフェルド,レーガン大統領特使としてバグダッド訪問.イランの軍備展開に関する衛星情報をフセイン政権に提供する.さらにイラク原子力委員会が生物兵器を製造するため細菌を輸入するのを許した.

83 米緊急展開部隊(RDF),指揮系統を統一し米軍中央軍(CENTCOM)となる.

1984年

2 イラク軍,イラン軍に対し化学兵器を使用.

4 イラク,ペルシャ湾内のタンカーに対する無差別攻撃を開始.

84 米国,イラクとの外交関係を全面修復.同時に,イラクへの武器売却を開始.レーガン大統領は,イラクへの高レベルの情報提供

を指示する最高機密指令を出す.

85 イラン・コントラの仲介役のオリバー・ノース中佐,イラン高官に対しサダム・フセイン追放に協力すると語る.

87 国連安保理,イラン・イラク戦争の停戦を求める決議598号を採択.

87 ノーマン・シュワルツコフ・ジュニア将軍,CENTCOM司令官に任命される.米国,クウェート・タンカーへの星条旗掲揚,クウェート船舶の護衛,イラン石油基地の爆撃により,イ・イ戦争に介入.

87 劣勢となったイラク軍に対し,クウェート,サウジアラビア,ヨルダン,英国,フランス,西ドイツが援助を強化.顧問団派遣,人材提供,諜報活動,借款,武器売却などで協力.

88.8.20 イランのホメイニ師,国連停戦決議を受諾.イラン・イラク戦争停戦.このあと米国の対イラク政策は急変する.

89.1.20 ジョージ・H・W・ブッシュ(父),第41代米国大統領に就任.

89.9 米CIA長官ウェブスター,米国の湾岸石油への依存度が急増していると証言.

89 米軍,戦争計画1002を,脅威の対象をイラクとする戦争計画1002−90に変更.戦争計画1002は1981年に立案されたもので,ペルシャ湾へのソ連の脅威を想定していた.

1990年 イラクのクエート侵攻

1月 CENTCOM司令部,戦争計画1002−90をテストするため「インターナル・ルック」と名づけられたコンピュータ図上演習を実施.

2 中央軍司令官シュワルツコフ将軍,上院で証言.新軍事戦略を提唱.湾岸石油への米国アクセスを確保するため,湾岸での米軍のプレザンス強化の必要性を訴える.さらに,「イラクはその隣国に自国の要求を強要できるだけの軍事力を有している」と警告.

5月 サダム・フセイン,バグダッドのアラブ緊急首脳会談(非公開)で湾岸諸国はイラクに経済戦争を行っていると非難.

90年7月

7.11 米国の意を受けたクウェート,OPEC合意を破って原油生産増加を決定.

7.17 フセイン大統領「クウェートは米国と共謀してイラク経済の破壊を企てている」と批判.イラク軍戦闘部隊がクウェート国境へ移動.

7.27 米連邦議会,イラク制裁決議を可決.

90年8月 イラク軍,クエートに侵攻

8.01 イラク,クウェート間のジッダ会談決裂.

8.02 イラク軍,クウェートに侵攻.ブッシュ大統領はイラクへの輸出全面禁止とイラク資産の凍結実施.

8.03 国連安保理,イラクのクウェート侵攻を非難する決議660採択.

8.06 国連安保理,イラクへの全面経済制裁と海外資産凍結を柱とする決議661号を採択.食糧の70%を輸入に依存しているイラクは石油も売れなくなり,窮乏化.

8.07 サウジのファハド国王,米軍のサウジアラビア派兵を承認.ファハドはもともと戦争には消極的だったが,米代表団の強硬な要求に屈したといわれる.

8.08 イラク,クウェートの併合を発表.

8.08 ブッシュ大統領は,サウジ防衛を名目に,議会承認を経ずに4万人の兵力のペルシャ湾派遣を発表,「砂漠の盾」作戦が始まる.この時点ではサウジアラビア国境付近にイラク軍はまったく存在していなかった.

8.09 アラブ連盟首脳会議の非公式会議,同盟軍の設置を決定.

8.10 国連安保理,クウェート併合を無効とする決議662採択.

8.12 サダム・フセイン,クウェートからの撤退とイスラエルのシリア撤退をリンケージした和平案を提示.米国は直ちに拒否.イラクはリンクをはずし再提案を行うが,米国は「考慮に値しない」として拒否.

8.13 仏,カナダ,ソ連が米国の海上封鎖を批判.

8.17 イラク,人質作戦を宣言.

8.30 海部首相,米国及び多国籍軍へ10億ドルを支援すると発表.

90年9月

9.01 イラク,人質作戦を放棄.外国人人質670人が出国.

9.02 イラク,食糧配給制を実施.

9.14 日本政府,米国及び多国籍軍へ10億ドルの追加支援を発表.

90年11月

11.08 米軍,湾岸駐留部隊を四十万人に倍増させ,防衛から攻撃に向けた体制を整える.

11.29 国連安保理,1月15日の撤退期限以後の武力行使を認める決議678号採択.@イラク軍が翌年1月15日までにクエートから撤退すること.A撤退しない場合は,多国籍軍に武力行使権限を付与することを決議.

12.22 イラクの乳児死亡率,制裁による医薬品不足により倍増.

12.25 国連総会,中東和平国際会議の開催決議を採択.

1991年 湾岸戦争

91年1月

1.09 米べーカー長官とタリク・アジズ外相,ジュネーブで会談.べーカー長官は,「期限までに撤退しなければイラクは破壊される」と通報する,フセイン大統領宛書簡を手渡す.アジズ外相は書簡の受取を拒否.

1.12 米議会,撤退が行われない場合の武力行使を認める決議採択.上院で賛成52反対47,下院で賛成250反対183.

1.15 イラク軍クウェート撤退期限切れ.

1.17 「砂漠の嵐」作戦突入.「湾岸戦争」はじまる.米軍を中心とする多国籍軍が空爆を開始.この後42日間で1日平均2000回の出撃.米軍はこの間,イラク,クウェート,サウジアラビアに推定300〜800トンの劣化ウランを投下.

1.24 イランのハメネイ師,イラク都市への空爆を「罪なき人々の虐殺」と非難.

1.24 日本政府,多国籍軍へ90億ドル追加支援決定.

1.25 重油まみれの「水鳥報道」,米国はイラクの環境テロと非難.実際は米軍が誘導爆弾によって原油貯蔵施設から流出させた自作自演.この「水鳥報道」と「イラク軍兵士による病院での乳児虐殺事件」は,米国が「湾岸戦争」で行ったデマ宣伝の典型.

91年2月

2.13 米軍,バグダッド市内のアメリヤ防空壕を爆撃.死者は市民1500人.

2.15 ブッシュ大統領,パトリオット・ミサイルのメーカーのレイシオン社で演説.イラク国民にサダム・フセイン追放を呼びかける.

2.21 ソ連,イラクはクウェートからの無条件全面撤退に合意したと発表.ブッシュはソ連を通じたイラクの撤退計画を拒否.2月23日正午までの撤退か,地上戦突入かの最後通牒を通告.

2.23 ブッシュ大統領,イラクからの意思表示のないまま,地上戦の開始を命令.

2.24 米軍,「砂漠の剣」作戦と呼ばれる地上戦を開始.

2.26 イラク,バグダッド・ラジオを通じ撤退の開始を発表.イラク軍はバスラに向け撤退を開始.米軍はこの退却路の両端に爆撃を加える.

2.26 米軍「ターキー・ショット」(囲いの中の七面鳥を射つ遊び)作戦.7マイルにわたる自動車の列に連続襲撃.この作戦で,クウェートからの多数の避難民も含め数千人が殺戮される.

2.27 イラク,安保理決議受諾を伝達,ブッシュ大統領,軍事作戦停止を宣言.

2.28 イラクと米国,停戦に合意.

91年3月

3.02 米軍第二十四機械化歩兵師団,停戦後のイラク兵士数千人を殺害.米軍側の死者はなし.

3.02 国連安保理決議686号採択.

3.03 米軍,イラク軍司令官,停戦協議.

3.03 イラク南部でシーア派,北部でクルド系の反乱が表面化.シーア派の反乱はすぐに鎮圧され,クルド人の反乱も三月末までに沈静化される.

3.06 湾岸協力会議6ヶ国と反イラク8ヶ国が「ダマスカス宣言」で合意.アラブ平和維持軍設置.

3.22 国連安保理,対イラク禁輸措置の大幅緩和を決定.

91年4月

4.03 国連安保理,「湾岸戦争」停戦決議687号を採択.


安保理決議687号の柱
@イラクは、大量破壊兵器,生物・化学兵器と核兵器、射程150キロ以上の弾道ミサイルを今後一切開発せず、保持もしないこと、
A現在所有するこれら兵器は,廃棄(破壊、除去ないし無力化)する.
Bその約束を遵守していることを確認する無条件、無制限の国連による査察、監視を受入れる(C項),ことを求める.
また,90年のクエート侵入時に課せられた経済制裁を再適用.制裁解除の条件を,「関連するすべての決議が履行されるまで」(決議687号21段落)とする.

4.06 イラク,国連停戦決議687号を正式に受諾.

4.25 米国の要請を受け,自衛隊の掃海艇,ペルシャ湾に向け出向.

91年5月

5.19 ラムゼイ・クラーク元米国司法長官,米大統領らを戦争犯罪で告発.

5月 停戦後のイラクの市民の死者,15万人を上回る.犠牲者の大部分は子ども.

5月 イラクはUNSCOMとその職員が特権・免責を持つことを受け入れる.そのなかには「UNSCOM職員の出入国,および設備・機材などの搬出入に関する無制限の自由の権利」が含まれる.

91年6月

6月 イラク国外において,反体制派の集合体「イラク国民会議(INC)設立.

6.09 国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM),最初の化学兵器査察を開始.以後ミサイル査察,生物兵器査察も相次いで開始.

6.15 日本,国連平和維持活動(PKO)協力法成立.

6月 イラク兵士,査察官が車両に近づくのを妨害するため威嚇射撃.

91年7月

7月 UNSCOM,化学兵器とその生産施設の廃棄を開始.

9.06 UNSCOMのヘリ使用をイラクが妨害.

9月 イラク政府職員,査察官の書類を没収.査察団による施設からの書類持ち出しを禁止する.国連安保理が強制措置を取るとの声明を出したあと,イラクは書類の持ち出しを認める.

10月 イラク,決議715号による継続的監視・検証計画は違法であり,この決議に従うつもりはないと述べる.

1992年

2 イラク,施設および関連物資を破壊するとしたUNSCOM・IAEAの決定に従うことを拒否.

4 イラク,UNSCOMによる監視飛行の中止を求める.航空機とパイロットに危険が及ぶ可能性があると主張.国連安保理議長は,UNSCOMが監視飛行の実施権限を有すると述べ,監視機攻撃の脅迫に抗議.イラクは監視機に対するいかなる行動も考えていないと回答.

5月 停戦後のイラクの市民の死者,十五万人を突破.死者の大部分は子供で,原因は爆撃による公共施設の破壊と制裁の継続.

7.06 イラク,農業省への立ち入り調査を拒否.査察団は,「農業省には禁止された活動に関連する文書が保管されているとの信頼できる情報がある」と主張.国連安保理が圧力をかけ,農業省への立ち入りが認められた.

7月 UNSCOM,化学兵器とその生産施設への大規模廃棄を開始.

8.27 米英仏の三国,北緯32度以南のイラクのシーア派居住地区を「シーア派の保護」のために「飛行禁止空域」に指定.これ以前に設定された北緯36度以北のクルド人居住区の飛行禁止空域と同様,国連の休戦条約にも制裁規定にも定められていない一方的な処置.飛行禁止空域は,ともに油田地帯.

12.27 米国,南部飛行禁止空域に進入したイラク軍のミグ25戦闘機を撃墜.

1993年

1.13 米英軍,北部と南部の飛行禁止空域でイラク軍の対空砲陣地を爆撃,イラク軍機を撃墜.クラスター爆弾も投入.国防総省は発表の中で攻撃は「警告なしで繰り返され得る」と述べた.

1.17 米軍艦から45発のトマホーク巡航ミサイルがバグダッドおよびその周辺に向け発射.ミサイルのうち一発はバグダッド市内のアルラシド・ホテルに命中する.

1.20 ウィリアム・J・クリントン,第42代米国大統領に就任.

1.21 クリントンの就任翌日から連続3日間,米軍ミサイルがイラク軍の対空砲陣地を攻撃.

1月 米国CIA要員が,イラク国内でスパイ活動を行っていた疑惑が発覚.イラクは,UNSCOMが自らの航空機でイラク入りすることを拒否.

4.09 米軍F16およびF4G戦闘機,イラク北部を爆撃.発砲を受けたとしてクラスター爆弾を投下.イラクは発砲を否定.

4.18 F4G戦闘機,北部「飛行禁止区域」の南方11マイルにあるレーダー基地のHARM高速対放射線ミサイルを爆破.

6.26 クリントン大統領,ダグダッドの下町に対し23発のトマホーク巡航ミサイルの発射を命令.4月にクウェートを訪問したブッシュ前大統領に対し,イラクが企てた暗殺計画への報復と攻撃を説明.メディアはクリントンの主張の信憑性を疑問視し,攻撃は安直で過敏な反応だと批判.この攻撃で,著名な芸術家ライラ・アッタとその家族など,多くのイラク市民が死亡.

6.29 トマホーク・ミサイル,再度イラク(南部の軍用施)を攻撃.米国はイラクのレーダー・システムが米軍機を追跡したためと説明.

6月 イラク,UNSCOMの査察官がミサイル・エンジン実験台2基に遠隔監視カメラを設置することを拒否.

11.26 イラク,安保理決議715号による継続的な監視・検証計画を受け入れ.

1994年

10.15 国連安保理は決議949号を採択.イラクに対しUNSCOMに「全面的に協力する」こと,およびイラク南部に展開する軍隊を撤退させ,当初の配置に戻すことを求める.イラクは軍隊を撤退させ,UNSCOMとの協力を再開.

94年 フランスとソ連,「イラクが国際的な監視に基づく大量破壊兵器の武装解除に従い,長期的な監視プログラムを受け入れれば,イラクは石油輸出を再開することができる」とする687号決議の第22段落に即し,経済封鎖の解除を求める.米英両国は,21段落に基づく封鎖続行を強く主張し押し切る.

1995年

7.01 イラク,攻撃的生物兵器開発計画の存在を認める.

8.08 イラクのカミル元軍事産業相,ヨルダンに亡命.イラクの所有する大量破壊兵器に関する情報を暴露.以後,UNSCOMの査察が厳しさを増す.

1996年

3.17 米国がUNSCOMの遠距離監視機材に秘密裡に盗聴装置を仕掛けたことが明らかになる.イラク治安部隊,UNSCOMが施設5カ所に立ち入ることを拒否.17時間後に立ち入りを認められる.

3.19 国連安保理,議長声明を発表.「イラクによる関連決議に対する明白な違反」であるとし,イラクの行動に対する懸念を表明.UNSCOMが対象施設すべてに即時,無条件かつ無制限に立ち入ることを認めるよう求める.

3.27 国連安保理は決議第1051号を採択.イラクの輸出入を監視する体制を強化.イラクに制限事項の遵守を求める.また査察団に全面的に協力することが求められる.

5.08 イラク経済制裁の部分解除で,国連とイラク政府が合意.

96年6月

6.10 UNSCOMの査察団,禁止条項の「隠蔽の手口」を調べるために,施設に立ち入ろうとするが,イラクはこれを拒否.

6.12 国連安保理は決議第1060号を採択.イラクの行動は国連安保理の決議に対する明らかな違反であると断定.あらゆる施設への「即時かつ無制限の立ち入り」を許可するよう求める.

6.13 イラク,決議第1060号を無視し,新たな査察団の立ち入りを拒否.

9月 イラクのクルド人地区侵攻への制裁で米国がミサイル攻撃.

10月 UNSCOMとともに活動していたCIAの秘密エージェントが,イラク共和国防衛隊によるクーデターを仕掛けたことが明らかになる.

11月 UNSCOM,国外で分析を行うためミサイル・エンジンの残骸を持ち出そうとする.イラクは,これを阻止.

12月 「食料=石油」計画が発足.

1997年

5月 米国上院,化学兵器禁止条約を批准.批准するにあたって,「査察が国家安全保障上の利益に対する脅威となる場合,合衆国内のいかなる施設に対する査察要求も拒否できる」とする修正第307条条項を追加.

6月 UNSCOMのヘリコプターに同乗したイラクの護衛兵は,パイロットが予定された目的地に向かうのを妨害.

6.21 イラク,UNSCOMの施設立ち入りを,再度拒否.

6.21 国連安保理は決議第1115号を採択.イラクの行為を非難し,あらゆる施設の即時,無条件かつ無制限立入りを求める.

97年9月

9.13 ヘリコプターに乗っていた査察官,施設内で不審な動きをしていたイラク車両の写真を撮ろうとして,イラク軍将校から暴行を受ける.

9.17 「機密区域」内の施設に立ち入ろうとした査察官,イラク兵がファイルを持ち出して焼却し,灰の入った缶を近くの川に捨てているところを目撃.その様子をビデオに撮影.

9月 イラク,査察団の大統領関連施設立ち入りを拒絶.

10月 UNSCOM,大量の化学兵器製造関連設備の破壊を完了.

10.29 イラクの副首相,国連査察団の米国メンバー追放をもとめる手紙を,安保理議長あてに提出.国連は査察団の活動を一時停止.

97年11月

11.12 国連安保理は決議第1137号を採択.イラクは義務に違反し続けていると非難.義務違反について責任のあるイラク当局者の移動も制限.

11.13 イラクは,UNSCOMで働く米国民に対して直ちに国外に退去するよう求める.

11.26 イラク,ロシアの調停で大量破壊兵器の長期査察受諾表明,国連制裁解除を要請.

12.22 国連安保理,イラクに対して,査察への全面的協力を求める声明を発表.施設への即時,無条件かつ無制限の立ち入りを認めないのは,安保理決議に対する容認不可能な違反であると強調.

12月 米国務長官マドレーヌ・オルブライト,経済封鎖解除の「687号決議21段落」基準をさらに強化.「イラクが武装解除しても,サダム・フセインが権力を掌握している限り経済制裁は解除しない」と述べる.

97年 UNSCOM代表,ロル・エケウスからリチャード・バトラーに交代.オーストラリア外交官出身のバトラーは,米英の意向に忠実な路線をとる.

1998年

1.11 イラク,国連査察団が米国の意向を偏重しているとして活動停止を通告.

2.20 アナン事務総長,イラクによる国連査察拒否問題の打開のため,バグダッドを訪問.フセイン大統領と会談.査察への全面協力と引き換えに,スパイ疑惑の解消のため,査察に「特別チーム」を同行させると表明.

2.23 アナンとフセイン,大統領宮殿の査察受諾で合意.査察団に外交関係者も随行するという査察手続き規定を策定.イラクは,国連安保理の関連決議をすべて受け入れ,UNSCOMとIAEAに「即時,無条件かつ無制限の立ち入り」を許可することを約束.

一、イラク政府は、安全保障理事会のすべての関連決議の受諾を再確認し,UNSCOMとIAEAに全面協力する。  
二、国際連合は、イラクの主権と領土保全を尊重する。  
三、イラク政府は、UNSCOMとIAEAの即時、無条件、無制限の立ち入りを認める。UNSCOMは、国家の安全保障、主権、尊厳に関するイラクの正当な関心を尊重する。  
四、国際連合とイラク政府は、イラク大統領施設八カ所の立ち入りには、以下の特別の手続きが適用されることで合意する。  
a、事務総長によって「特別グループ」が設置される。このグループは、事務総長が任命する高級外交官およびUNSCOMとIAEAの専門家で構成され,事務総長が任命するコミッショナーが長を務める。  
b、「特別グループ」は、具体的に詳述された手続きのもとで活動する。  
c、「特別グループ」の活動に関する報告は、事務総長を介して安全保障理事会に提出される。

6.30 米軍機,イラク基地にミサイル攻撃.

7.27 IAEA,イラクの「核保有の兆候なし」との現状報告を国連安保理に提出.

8.05 米議会,イラクの反政府勢力に武器供与などを認める「イラク解放法」可決.

8.05 イラク革命評議会とバース党指導部,イラク国会は,国連安保理が原油の輸出禁止措置の解除に同意するまで,UNSCOMやIAEAとの協力を停止すると決定.

98年10月 イラク,査察を全面拒否

10月 アナン事務総長,,「査察プロセスを再生させるための包括的見直し」提案を安保理に提出.武装解除計画に『現実的な時限』を設定し,経済制裁に期限をつけるもの.安保理はイラクの査察全面協力を条件に「包括見直し」を開始することで合意.

10月 イラク側は,第687号決議第22段落,「武装解除作業が終了すれば経済封鎖が解除」されるかどうかの確証をもとめる.

10.30 安保理議長(英国),イラクへの回答の中で,立証責任をイラクに差し戻し,経済封鎖の期限について言及せず.

10.31 イラク,大統領関連施設の査察を拒否.国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)への協力を停止すると発表.国連安保理,イラクへの非難声明.

98年11月 査察再開で合意

11.14 イラクはアナン事務総長への書簡で査察再開に同意.

11.16 コーエン米国防長官,査察の無条件協力を拒めばイラクを無警告で攻撃と言明.

11.18 UNSCOM調査団,バグダッドに戻り作業を再開.

98年12月 砂漠のキツネ作戦

12.09 イラク,与党バース党本部への査察を拒絶.イラク側によれば,4名の査察団による査察は受け入れたが,その後主任査察官が12名の査察官の立ち入りを要求したため拒否したという.

12.15 リチャード・バトラーUNSCOM委員長,イラクが協力しなかったため,査察活動は「まったく進捗しなかった」とする報告書を提出.報告書の本体においては,300回の査察活動ほとんどすべて問題なく進み,問題が発生した5件の査察活動も,ほとんどは些細なものであったという.

12.15 バトラー代表,「報告書」提出後ただちに,安保理に報告しないまま査察団を引き揚げる.バトラーは米国当局筋から,空爆日程が直後に迫っているという強い示唆を受けたという.

12.17 米英軍,「査察プロセスが崩壊した」とし,イラク攻撃「砂漠のキツネ作戦」.安保理への事前通告なし.三日間で,政権関係施設をふくめ97ヶ所に対し「湾岸戦争」時を上回る巡航ミサイル数で攻撃.バーバラ・リー米国下院議員,攻撃反対の声明.日本政府は攻撃支持を表明.

12.19 ユニセフ,「湾岸戦争」とその後の経済制裁で,すでに100万人以上のイラク人が死亡したと発表.

1999年

1.10 UNSCOMのリチャード・バトラー委員長,イラク当局への盗聴活動を認める.

12.17 国連安保理,決議1284号を採択.UNSCOMに代わる新たな査察機関として国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)を設置.

2001年

1.20 ジョージ・W・ブッシュ(子),第43代米国大統領に就任.

2月 米英軍,バグダッド郊外のイラク軍司令施設などを空爆.

9.11 米中枢同時多発テロ.

10.07 米英軍がアフガン空爆を開始.

11.13 北部同盟が首都カブールを制圧.

11.27 ボンでアフガン4派の暫定政権協議が始まる.

12.05 アフガン4派が暫定政権発足で最終合意.

12.06 オマール師,カンダハル撤退に同意.

2002年

1.29 ブッシュ米大統領,議会で一般教書演説.イラク,イラン,北朝鮮がそれぞれ大量破壊兵器開発を目指していることから「こうした国々とテロリストたちは悪の枢軸を形成し,世界の平和を脅かすために武装している」と述べ,3国との対決姿勢を鮮明にする.イランを「悪の枢軸」に含めたことについては,同国のハタミ大統領が曲がりなりにも民主的に選ばれた事実を軽視するものだとの批判.

2.03 国連とイラク,査察問題をめぐる対話再開.

3.17 英オブザーバー紙によれば,イギリス軍の上層部がブレア首相と会見.「対イラク戦争は必ず失敗し,軍に多くの死者が出ても,政治的に獲得するものがほとんどない」と警告したという.

3.23 アラブ首脳会議,「イラク攻撃全面拒否」の最終声明を採択.

5.14 イラクへの経済制裁下「石油と食料の交換プログラム」を180日延長決定.

5.26 ブッシュ大統領,「フセイン政権を変えなければならないというのが米政府の政策だ」としてフセイン政権転覆を公言.

5月 アーミテージ国務次官,久間防衛長官と会談.イラク攻撃への賛成を迫る.久間氏は「米国が国連と違う行動をすれば,後押しするわけにはいかない」と述べたという.

7月 UNSCOM元代表ロルフ・エケウス,スウェーデンのラジオ・インタビューで,「安保理の一部メンバー(英国と米国)が査察団に圧力を加え,問題のある査察を行わせようとした.そしてイラク側からの査察妨害を創り出し,軍事介入の口実に使おうとした」と述べる.

8.15 米国防総省,イラク攻撃を念頭においた国防報告を議会に提出.「最大の防衛は攻撃だ.アメリカの敵にはあらゆる手段を行使する」と述べ,イラクに対する先制攻撃と核の使用を公言する.

8.28 ジャミラ・アリさん,娘とともにイスラム風の服装で歩いていて逮捕される.逮捕時激しく抵抗したことから,公務執行妨害で有罪判決を受ける.アリさんはオハイオ州に在住するアフリカ系アメリカ人でイスラム教徒だった.「ヒューマンライツ・ウォッチ」によれば,9.11以降に身柄を拘束された中東・南アジア系市民は1200人に達する.乗っ取り犯と名前が似ているだけの理由でサウジ人医師が13日間拘留されたケースも.

8.28 ニューズウィークによれば,米軍は逮捕したタリバン兵千名以上をコンテナに詰め込み,その結果全員が窒息死したと報道.

02年9月 米議会の戦争決議

9.03 全米世論調査.言論・集会・出版の自由を保障する憲法修正第一条に対し,「権利保護の行き過ぎ」との声が49%に達する(2年前には22%).

9.05 米英軍の爆撃機約百機が,過去4年間で最大の規模で,バグダッド西100キロの防空施設を爆撃.特殊部隊がイラクに潜入するための準備作戦といわれる.

9.05 ブレジンスキー(カーター政権の安全保障担当大統領補佐官),NYタイムズに寄稿.ブッシュ政権は「アメリカが直面している挑戦」を強調する.しかしそれは,ほとんど事実の裏づけがない「宗教用語」である.非政治的に定義された「対テロ戦争」は,ほかの目的に「ハイジャック」される恐れがあり,その結果は恐ろしいものになる.対テロ戦争の勝利は,国家の公式の降伏などでは得られない.将来またアメリカ人に対するテロが起これば,戦争に勝てなかったことが分かるだろう.


9.05 宮沢元首相がインタビュー.フセイン政権を打倒しても問題は片付かない.民主的な平和政権を建設しなければ目的は達成できないが,それは米国一国ではできないほど時間も金もかかる.

9.10 イタリアの文化・スポーツ人が,対イラク攻撃に反対する共同声明.サッカーのトッティやビエリなどが名を連ねる.「われわれはテロの悪循環をあおることを望まない.戦争,死,犠牲者はもう十分だ」

9.12 国連総会開催.アナン事務総長は,「ある国が世界平和を乱すものに対し,武力の使用を決定する場合,国連による正統な承認は欠かせない」と声明.ブッシュ大統領,国連総会でイラク非難の「根拠」を公開する演説.査察失敗なら単独でも攻撃と表明.

9.12 シュレーダー首相,「私が首相である限りは,ドイツは対イラク戦争には参加しない」と述べる.

9.14 日本・イラク外相会談.川口外相は無条件査察受け容れを強く要望.

9.16 イラク,大量破壊兵器に関する査察の無条件受け容れを表明した書簡を,アナン国連事務総長に提出.

9.17 ブッシュ,「世界最悪の兵器で米国と同盟国を脅す,世界最悪の指導者らを許してはならない」と発言.改めてフセイン政権打倒を強調.

9.19 議会両院合同会議,「地域で国際の平和と安全を回復する」ため,武力行使を容認する決議を採択.下院議員18人が,決議に際し反対を表明.

9.20 米国,「国家安全保障戦略」を発表.「封じ込めと抑止」から「先制攻撃」への戦略転換を基軸とする.

9.23 ASEM(アジア欧州会議)首脳会議,反テロ宣言を採択.「テロリズムとのたたかいは,国連憲章の原則と国際法の基本的な規範に基づかなければならない」「国際社会による政治,経済,外交,軍事などの手段から構成される包括的アプローチが必要」と述べる.

9.24 ブレア首相,イラクの大量破壊兵器開発に関する報告書提出.「決定的な証拠」はなし.

9.24 米サンタクルーズ市,イラク攻撃反対決議を全会一致で採択.

9月26日 米英共同決議案の発表

9.26 パウエル国務長官 上院外交委員会公聴会で証言.「新たな安保理決議案の骨格について英国と合意した」と述べる.

9.26 アメリカ,国連での仏・露・中との協議を開始.新決議に必要な三要素として,@イラクが安保理決議の「重大な不履行」を犯してきたことを確認する.Aイラクに要求する具体的な行動を明示する.Bそれにイラクが従わないときは「厳しい結果」を伴うことを決定する,をあげる.さらに決議が採択されない場合は米国が単独行動を起すと宣言.査察の完全受入と決議履行の期限を約2ケ月とすることを提起.

9.26 米,19回目の臨界前核実験を実施.

9.28 イラク攻撃反対デモ.ロンドンで40万人,ローマで10万人が参加.

9.30 米議会で,対イラク武力行使容認決議案が審議入り.

02年10月 国連安保理のつばぜり合い

10.01 イラク,査察に関する国連との協議で合意.大統領関連8施設を除くすべての施設の即時・無条件・無制限査察を受け容れる.アメリカは査察を戦争に先行させることに反対,新決議の準備に入る.

10.01 米,クウェートと合同演習開始.

10..02 米英両国,安保理常任理事国に対しイラク決議案の第一次案を提示.

10.02 サウジ外相,米への基地提供を拒否する姿勢を明確に表明.

10.03 国連査察委員会(UNMOVIC),英米の新決議案に対する安保理作業完了まで再査察延期を報告.

10.03 国務省リーカー副報道官,イラク査察再開合意で対象除外されている大統領関連施設のうち,バグダッド中心部西の「ラドワニヤ」と,バグダッド北約90キロメートルのティクリート(フセインの故郷)の施設の査察を要求.ラドワニャは広さ17平方キロメートルで,ホワイトハウス敷地の約40倍.要人用大邸宅や宮殿など150以上の建物が点在する.ティクリートも約4平方キロメートルで30以上の大邸宅等が存在する.

10.04 パウエル米国務長官,ブリクスUNMOVIC委員長と会談,査察延期で合意.

10.04 米,12月末までにイラク射程内の洋上に空母4隻配備の計画を発表.

10.06 イエメン沖の仏タンカー「ランブール」が爆発,17人負傷.

10月07日 米市民の2/3が軍事行動支持

10.07 ブッシュ大統領,米国民向演説.「イラクの脅威は比類がない」と強調し,戦争への支持を訴える.直後のNYタイムズの世論調査では,フセイン大統領追放の軍事行動を支持するものが67%に達する.しかし,「国連による査察を待つべき」とする者が63%にのぼり,「すぐ軍事行動すべき」の30%を大幅に上回る.

10.07 イラクは,大量破壊兵器の保持,アルカイダとの接触いずれも虚構,と反発.

10.07 英国法務長官,政府に対し,「フセイン政権排除目的の軍事行動は,国際法に侵犯するおそれがある」と警告.

10.08 バークレー市議会,バーバラ・リー議員らの「対イラク戦争に反対する修正案」を支持する決議を全会一致で可決.

10.09 米英軍がイラク北部「飛行禁止空域」を爆撃,市民4人が死亡,10人が負傷.

10月10日 戦争宣言が上院を通過

10.10 米議会上院,「イラクに対する軍事力行使権限をブッシュ大統領に与える決議」を採択.賛成77,反対23.「イラクの脅威から米国を守り,全ての安保理決議を履行させるため,大統領が必要かつ適切と判断するなら,軍事力を行使する権限を大統領に付与する.事前または軍事力行使後48時間以内に議会通告を要する.また60日に1回以上,議会に報告しなければならない」

10.10 サンフランシスコ市議会,対イラク戦争反対決議を可決.

10.10 イエメン,米仏の調査チーム,タンカー「ランブール」爆発をテロと断定.

10.10 パキスタン下院選挙で,米軍協力反対派が躍進,大統領支持派過半数割る.

10月11日 戦争宣言が下院を通過

10.11 米下院,武力行使容認決議案を298対133で可決.バーバラ・リー議員の提出した修正案は,賛成72反対355で否決される.

10.11 イラク,武器査察メンバーに米国人の参加受け容れ発表も,米国拒絶.

10.11 ロシア,武力行使を容認する米国の安保理新決議案拒否の立場を表明.

10月12日 バリ島のディスコ爆破事件

10.12 バリ島のディスコ「サリ・クラブ」と米国名誉領事館で爆発事件,171人死亡.

10.12 米国防総省,陸軍,海兵隊に対し,司令部に湾岸出動命令.

10.12 イラク,アル・サディ大統領顧問,大統領宮殿の自由な査察も受け容れを表明.

10.12 カーター元大統領にノーベル平和賞.ノーベル賞委員会,ブッシュ政権を批判.

10.12 フランス30都市でイラク攻撃反対デモ,合計数万人参加.

10月13日 緒方共産党議員,バグダードでイラク議会議長と会見

10.13 緒方議員を団長とする共産党訪問団,イラクを訪問しハマディ国民議会議長と会談.ハマディ議長は大統領宮殿の査察受け入れを言明.

10.13 オーストラリア,メルボルンでイラク攻撃反対集会,3万人参加.

10.14 ブッシュ大統領,バリ島爆発事件をアルカイダのテロと主張.

10.15 フセイン・イラク大統領の信任を問う国民投票,続投決まる.

10月16日

10.16 米英軍爆撃機,バグダット南東の防空施設を爆撃.

10.16 ブッシュ大統領,イスラエルによるイラクへの反撃を容認.

10.16 イラク問題をめぐる国連安保理の緊急公開協議開始.

10.18 ベイルートでフランス語圏諸国サミット開催.シラク大統領,すべての紛争は国際法を守った方法で解決されるべきと警告.

10.21 米国,国連安保理常任理事国に対し,新決議案を正式に提案.決議採択から7日以内の受諾を迫り,30日以内の申告をイラクに要求し,応じない場合は単独の武力行使を示唆する「深刻な結果」を警告.フランス,ロシアはこの案に強く反発.

10.21 ノーベル平和賞受賞者がローマで会合,イラクとの戦争に明確な反対を表明.

10.22 米英軍爆撃機,イラク北部の防空施設を爆撃.

10月23日 米英,安保理決議案を提出

10.23 対イラク攻撃に関する決議案,米英共同で安保理に提案,協議にはいる.

10.23 ブッシュ大統領,3554億ドル(約44兆円)の03年度国防予算案に署名.

10.24 フランス,独自の安保理決議草案を,常任理事国一部と全非常任理事国に提示.米英が独自判断で武力行使する根拠を弱め,実行可能な査察を重視する内容.

10.25 米中首脳会談で,江沢民主席,国連の枠組みでの政治的解決を要求.

10月26日 最初の世界統一反戦行動

10.26 世界統一反戦デモ,「ベトナム反戦以来の規模」となる.ワシントンで20万人,サンフランシスコで5万人,ベルリンで3万人参加.

10.26 ブッシュ大統領,安保理協議決裂の場合,単独武力行使強行をあらためて表明.

10.28 ブリクスUNMOVIC委員長,米英案賛同するも安保理の意向尊重を要望.

10.29 安保理,理事国15か国の非公開協議開始.

10.29 イラク,米国の新決議案を「宣戦布告に等しい」と厳しく非難.

10月30日 アメリカ,「フセインを戦犯法廷へ」と主張

10.30 安保理,イラクへの経済制裁を軽減する6000項目の人道的物資供給を承認.

10.30 米国,イラク現政権転覆後,フセイン大統領と側近を戦犯法廷で裁く意向を発表.

10.30 シリア外相とロシア特使会談,米国の戦争の脅迫への拒否を改めて表明.

10.30 小泉首相,対イラク戦争に関し「米国が国際法を破るはずがない」と国会答弁.

02年11月 攻撃開始の延期と査察の開始

11.02 ロシア下院,安保理承認なしに武力行使しないよう米議会に求めるアピール採択.

11.02 米空母リンカーン搭載機,イラク「飛行禁止空域」で爆撃訓練実施.米空母コンステレーション,サンディエゴを出港,12月には空母4隻体制に.

11.04 フセイン大統領,新決議受け容れの条件表明.国連憲章や国際法を尊重すること,イラクの主権,独立を尊重すること,「米国の悪意を覆い隠すものでない」ことを要求.

11.05 米中間選挙,共和党上下両院で過半数獲得,ブッシュ大統領勝利宣言.

11.05 イスラエルのシャロン首相,イラクの次にはイランを攻撃すべきと発言.

11.06 米国,国連安保理の非公式協議に対イラク修正決議案提出.

11.07 米英軍爆撃機,バグダット南東150キロのイラク防空施設を爆撃

11月08日 安保理決議1441号の成立

11.08 国連安保理,対イラク新決議1441号を全会一致で採択.イラクに7日以内の受諾をもとめる.仏中ロ三国は決議を受け,「自動的武力行使の可能性を排除した」と共同声明.

11.08 イラクのアルドウリ国連大使,安保理決議に抗議.軍事攻撃が開始された場合は原油輸出を停止することを示唆.

11.09 フィレンツェでヨーロッパ社会フォーラムが開催される.イラク攻撃などに反対する反戦デモが展開され,参加者は50万人を超える.

11.09 イワノフ露外相,「決議履行はイラクの利益に合致」と述べ,イラクに決議受諾を呼びかける.

11.10 ブッシュ大統領,25万の兵力を動員する対イラク戦争計画承認と米紙報道.

11.10 米英軍爆撃機,イラク南部の防空ミサイル基地2カ所を精密誘導弾で爆撃

11.10 アラブ連盟外相会議,新決議を攻撃正当化の口実としないよう米国に要求

11.11 フセイン大統領,イラク国会緊急会議召集,安保理新決議への対応を審議

11.11 ブッシュ大統領演説,対決は脅威が訪れる前に,と最短年内の先制攻撃を示唆

11月12日 戦争が始まれば犠牲者は推定46万人

11.12 イラク国会,対イラク新決議の受諾拒否を政府に勧告,ただし大統領に決定を一任するとし閉会.

11.12 フーン英国防省,米国のミサイル防衛構想に参加する姿勢を初めて表明.

11.12 英国医療従事者団体メダクト,開戦時の死者推定46万人とする報告書を発表.報告書によれば,乳幼児や難民の犠牲が大で,戦争より査察や禁輸の強化を優先すべきと勧告する.

11月13日 イラク,安保理決議を受諾

11.13 イラクのサブリ外相,アナン事務総長に書簡提出,安保理決議1441の無条件受諾を表明.

11.13 全米カトリック司教会議,「対イラク戦争は道徳的に許容できない」 とする声明を発表.詳細は別掲.

11.15 ブリグス委員長,査察を27日から再開と発表,事前通告なしの700箇所含む.

11.15 米英軍機,バグダッド南東を精密誘導弾で爆撃,民間施設が被害,7人死亡

11.15 英国世論調査,回答者の3分の1が,「米大統領の方が世界平和への脅威」と答える.

11.16 フセイン大統領,国会に説明.「米国に攻撃の口実与えぬため決議受諾した」と述べる.

11.16 イラクのアジズ副首相,査察団を歓迎し全面的に協力すると表明.

11.17 米英軍爆撃機,イラク北部「飛行禁止空域」の防空施設を精密誘導弾で爆撃.

11.17 ラムズフェルド米国防長官,対テロ戦争用に小型核爆弾を開発中と発表.

11月18日 査察団の調査開始

11.18 UNMOVICの先遣隊,バグダッドのサダム国際空港に到着.

11.19 イラク当局,国連査察団との事前協議で,通告なし査察も含め全面的協力を表明.大量破壊兵器開発に関して12月8日までに報告することを約束.

11.19 アナン事務総長,飛行禁止空域での対空砲火を決議違反とする米国主張に疑問表明.

11.19 米上院,テロ対策を統括する国土安全保障省設置法案を可決(下院はすでに可決).

11.20 米国,友好約50カ国に対イラク軍事行動の協力を要請,各国政府に回答を要求.

11.20 米英軍爆撃機,バグダッド南東150キロの防空施設3か所を爆撃

11.21 プラハでNATO首脳会議.テロ即応部隊の創設や軍備の近代化などを盛り込んだプラハ宣言を採択.

11.21 米上院,大量破壊兵器情報を提供したイラク科学者の米国亡命を認める法案を可決.

11.22 アラブ外相会議,査察遂行のため,米国にイラクへの恫喝の停止を求める声明採択

11.22 米英軍機,イラク南部「飛行禁止空域」の通信施設を爆撃

11.23 米英軍,昨日に引き続きイラク南部アマラ付近の通信施設を爆撃,イラクは民間施設への攻撃と非難

11.23 イラク政府,安保理決議1441号は「イラクへの侵略の口実になる」とする見解を発表.

11.23 イラク政府,米英軍の空爆に対する抗議書簡をアナン事務総長に送付.査察受諾に変更なし.

11.24 バチカン市国国務長官,対イラク戦争と先制攻撃に反対を表明.

11月25日 査察団の中間総括

11.25 国連査察,いったん休止し中間総括.ブリグス委員長,「大量破壊兵器はすでに廃棄済み」とするイラクの主張を安保理に報告.エルバラダイIAEA事務局長,現状を評価する発言.「査察を通じた平和的な解決が可能」と述べる.

11.25 安保理,イラクへの人道物資輸入計画を延長する案を審議.米国の反対で,期間を半年から9日間に短縮.

11.25 FBI,「米国内イスラム教徒への憎悪犯罪が前年比17倍の481件に増加した」と報告.

11.27 国連査察再開.IAEAのボット査察官,UNMOVICのペリコス査察官が記者会見. 「イラクはこちらが見たいという物をすべて見せた」とイラクの協力を評価.

11.28 米英軍機,イラク北部ニネベの民間と軍の施設を攻撃,民間人1人が死亡.

11.28 中国外務省,査察団に中国も参加する意向を発表,米国の武力行使を牽制するねらい.

11.30 オーストラリア各都市でイラク攻撃に反対するデモ,シドニーでは1万人が参加.

2002年12月

12月01日 日本で最初の大規模な反戦集会

12.01 米英機,バスラの石油会社の事務所を精密誘導弾で爆撃,4人死亡,27人が負傷.

12.01 代々木公園で有事法制,イラク攻撃などに反対する集会.2万5千人が参加

12.01 エルバラダイ事務局長,「査察の結論には1年必要」と国際社会の忍耐を訴える.

12.01 オーストラリアのハワード首相,バリ島テロ事件に関し,「テロ攻撃が懸念される時には先制攻撃する」との方針を表明.

12月02日 B52爆撃機による攻撃

12.02 米英軍機,イラク北部の複数の防空施設を爆撃.

12.02 国連査察団,バグダッドの大統領宮殿を抜き打ち査察,イラク側も協力

12.02 中ロ首脳会談,イラク問題の政治的解決のために協力することで合意

12.02 トルコのイスタンブールでイラク戦争に反対するデモ,5千人が参加.

12.02 米軍のB52爆撃機,アフガニスタンのシンダード付近に爆弾投下,B52の空爆は5ヶ月ぶり.

12月04日 イージス艦派遣が決定

12.04 米英軍機,イラク北部の複数の防空施設を精密誘導弾で爆撃.

12.04 国連安保理,イラクへの人道物資輸入計画をさらに180日間延長すると決定.

12.04 小泉首相,インド洋の対テロ作戦後方支援に海上自衛隊イージス艦派遣を正式決定

12.04 トルコ政府当局,「米軍の領空通過や基地使用に対し,いかなる約束もしていない」と強調

12月05日

12.05 フセイン大統領国民に向け演説,「査察は米国の主張を覆えす好機」と述べる.

12.05 日本政府,イラク対応に後方支援活動強化や武器携行条件緩和を含む新法骨子発表

12月06日

12.06 米ニミッツ級原子力空母トルーマン,ペルシャ湾に向けノーフォークを出航

12.06 ペルシャ湾北部で,米駆逐艦ポール・ハミルトンが民間船舶と衝突

12.06 イスラエル,ガザ地区を戦車と武装ヘリで攻撃,国連職員も犠牲に

12月07日

12.07 イラク,大量破壊兵器開発に関する申告書をバグダッドの国連査察本部に提出.計1万1807ページにCD―ROM12枚が添付された膨大なもの.この報告の中で大量破壊兵器所持を否定.

12.07 フセイン大統領クウェートに書簡,90年の侵攻を謝罪.クウェート政府は回答を保留.

12.07 オーストラリア,カタールで実施された米軍軍事演習にオブザーバーとして参加表明.

12.08 イラク提出の申告書が国連到着,査察委が直ちに内容精査着手

12月09日 アーミテージ国務次官の対日圧力

12.09 米英軍,カタールで軍事演習開始.司令部の800人は演習後も駐留.

12.09 常任理事国がイラクの提出した「申告書」を先んじて入手したことが明らかになる.安保理議長は「米国の圧力があった」と証言.

12.09 英反核団体CND,「国連決議なしで米国が参戦することは国際法違反」と英政府を起訴

12.09 カーター氏,ノーベル平和賞授賞式挨拶で米国に国連を通じた解決を要望

12.09 日本政府高官,アーミテージ米国務副長官と非公式に会談.武力行使にふみきった際の支持を表明,さらに攻撃に際し国際社会の支援を広げる環境整備を提言.

12月10日 全米で初の大規模抗議行動

12.10 全米の数百の都市で戦争反対の抗議行動.140人以上の人々が逮捕される.シカゴの連邦政府ビルは一時封鎖され,ニューヨークでは国連本部前での座り込み抗議に参加したダニエル・エルスバーグも逮捕される.

12.10 ハリウッドで,百人以上の著名俳優が名を連ねたイラク攻撃反対請願の発表.人気ドラマ「ザ・ホワイトハウス」で大統領を演じる俳優マーティン・シーンをはじめ,キム・ベイシンガー,ミア・ファロー,ヘレン・ハントらが出席.

12.10 米,核先制攻撃を国家戦略とする報告「大量破壊兵器に対する国家戦略」を発表.付属文書で北朝鮮,イラン,シリア,リビアをテロ国家として名指しする.

12.10 米英軍機,バグダッド南東アルアマラの防空施設を爆撃

12.10 イラクのドウリ国連大使,アナン事務総長と会談.米国の申告書コピー入手を批判.

12月11日

12.11 ラムズフェルド国防長官,カタールと基地使用協定に調印

12.11 ハリウッド俳優ら100人以上が米大統領にイラク攻撃反対の書簡提出

12.11 ブリクス委員長,米英が「イラクが大量破壊兵器保有している証拠を提出した」とする情報を全面的に否定.

12月12日

12.12 国連賠償委員会,米仏伊蘭サウジ5カ国の湾岸戦争被害者に,約1.8億ドルの補償を追加承認,補償金額は累計437億ドル.

12.12 イラク国家監視局のアミン局長,科学者への聴取に前向きな姿勢を表明

12.12 イラク石油省,露石油会社ルクオイルとの西クルナ油田開発契約を,債務不履行を理由に破棄.

12月13日

12.13 EU首脳会議,イラクに対して安保理決議の遵守を呼びかける宣言を採択

12.13 イラク高官,化学・生物兵器の製造にあたって原料・技術の提供を受けた米企業名が,申告書に記載されていることを示唆.

12.13 イラク攻撃反対の12・13集会東京で二千人参加,小田実氏らが呼びかけ.

12月14日 韓国で女子学生轢殺の抗議集会

12.14 米軍,イラク軍機が「飛行禁止空域」で飛行したとし,バグダッド南東の防空施設を爆撃.サブリ外相,英米の空爆を「不布告

の戦争」として,停止を国連に強く要請.

12.14 秋葉広島市長,米国の「大量破壊兵器に対する国家戦略」に対しブッシュ大統領に抗議書簡送付.また北朝鮮の核施設の稼働再開に対し金正日総書記に抗議書簡送付.

12.14 米国,対イラク攻撃に備え予備役と州兵2万7000人に待機指示.

12.14 クウェート国民議会,90年の侵攻に対するフセイン大統領の謝罪(12.07)に対し拒否声明.

12.14 米軍の女子中学生轢殺に抗議する韓国の国民平和大行進,ソウルで10万人参加.

12.15 米軍機,イラク南部の「飛行禁止空域」でレーダー施設を爆撃.

12.15 エルバラダイIAEA事務局長,現時点でイラクの核兵器製造証拠はないと証言.

12月16日 日米の安全保障共同声明

12.16 海上自衛隊のイージス艦「きりしま」,横須賀基地をインド洋向出港.

12.16 日米両政府が安全保障共同声明発表.イラク問題での日米の行動緊密化を確認.また日本がミサイル防衛計画の共同研究にいっそう主体的に参加することを確認.

12.16 米英軍機,バグダッド南東のアルクトにあるイラク防空施設を爆撃.

12.16 ブレア首相,シリアを訪れアサド大統領と会談.国連安保理決議の遵守で一致.

12月17日

12.17 イラク反体制派の会議がロンドンで開かれる.「民主的連邦国家」樹立を宣言.

12月18日

12.18 米英軍機,バグダッド南東アルクトの対空レーダー施設を爆撃.

12.18 安保理,クウェート侵攻時の捕虜,行方不明者や資産の返還をイラクに要求.

12.18 安保理非常任理事国のシリア,「申告書」問題での常任理事国との差別に抗議.「申告書」(改訂版)を査察団に返却.

12月19日

12.19 安保理非公式協議開始,ブリクス委員長がイラク申告書の最初の評価報告を行う.「新たな事実は少ない」と申告書の不備を

指摘,米英の情報開示にも不満表明.

12.19 パウエル長官が「申告書」に対する米国独自の評価を発表.「重大な決議違反」がふくまれていると断定.

12.20 ブッシュ大統領,申告書不備を理由に,湾岸兵力を11万人に倍増する方針を決定.

12.20 米英軍機,バスラとアンナシリア近郊の対空防衛通信施設2カ所を爆撃.

12.21 国連,米軍攻撃で流出するイラク難民を約60万人と推定.これはアフガン攻撃時の3倍にあたる.

12月22日

12.22 湾岸協力会議,イラクに対し戦争回避のために安保理決議の遵守を呼びかけ.

12.22 アフガニスタンと周辺6カ国外相会議,相互不可侵で合意.

12.22 米国,欧米在住のイラク反体制派志願者数千人に,軍事訓練を実施する方針を発表.

12月24日 イラク,米無人偵察機を撃墜

12.23 米国,イラクが「飛行禁止空域」に侵入した米無人偵察機プレデターを撃墜したと発表.

12月24日

12.24 フセイン大統領,「国連の破壊兵器査察で米国のうそが露呈する」と国民向け演説

12.24 国連査察団,過去に核開発に携わったイラク人科学者1人から非公式に事情聴取.

12.24 IAEA,国外聴取の対象となるイラク専門家と家族の安全確保を関係各国に要請.

12.25 イスラエル,「イラクがシリアに生物・化学兵器を移送中」と発表.シリアはこの疑いを全面的に否定.

12月26日 イラク政府,日本を非難

12.26 米英軍機,イラク南部民間及び公共施設を爆撃,市民3人死亡,16人以上負傷.

12.26 イラクのラマダン副大統領,「日本は米英に次いでイラクに敵対的な態度をとっている」と強く批判.

12.26 ロバートソンNATO事務局長,イラクが安保理決議を履行しない場合は,米国の軍事行動を支援すると表明.

12月27日 国連,犠牲者予測は50万人と発表

12.27 米国防総省,イラク戦争の可能性に備え主力部隊にペルシャ湾行きを命令.

12.27 米無人偵察機プレデター,対戦車ミサイルでイラクの通信用車両を破壊.

12.27 ルベルス国連難民高等弁務官,イラク攻撃は人道的に悲惨な結果招くと警告.報告によれば戦争が起こった場合,イラク国民50万人が犠牲となると想定される.

12.27 イラクの冶金学者ジャミール氏,核兵器開発計画との関与を否定.

12.28 イラク,大量破壊兵器開発の疑惑を解くため,500人以上の科学者リストを国連に提出.

12月29日 米軍機,パキスタン領内爆撃

12.29 中独首脳会談,イラク問題に関し国連安保理の場で緊密に連携をとることで一致.

12.29 米軍機,パキスタン領内の「アルカイーダ基地」を爆撃.

12.30 国連安保理,対イラク「石油と食料の交換プログラム」の輸入制限品目を追加.

12.30 米英軍機,イラク南部の「飛行禁止空域」で防空・通信施設を爆撃.イラク側は地対空ミサイルで応戦.

12.31 ブッシュ大統領が国民向けの演説,対テロ戦争での勝利を訴える.

12月末 米財務省代表団,トルコを訪問.最大約280億ドルの経済支援策を約束.これと引き換えに,トルコは実質的に攻撃を容認.出撃拠点として同国のインジルリク空軍基地の使用も認める.

2003年

1.01 国連安保理,非常任理事国のうち5カ国が交替,新理事国の任期は2年. (新任)ドイツ,スペイン,パキスタン,チリ,アンゴラ.(継続)ブルガリア,カメルーン,ギニア,メキシコ,シリア.

1.01 米英軍機が南部バスラの防空施設を爆撃.イラク人1人死亡,2人負傷.イラクのアジズ副首相,「米国は査察の結果に関係なく攻撃している」と非難.

1.02 米英軍機,バグダッド南東クト近郊の防空施設を爆撃.

1月03日

1.03 ブッシュ大統領,陸軍基地で演説.「イラク攻撃はフセインの脅威を取り除くためのもの」と述べる.

1.03  パキスタン各地で12月の米軍機爆撃に抗議し,イラク攻撃に反対するデモ.あわせて数万人が参加.

1.03 バーレーンの首都アル・マナーマで,数百人がイラク攻撃に反対するデモ.バーレーンは米第五艦隊司令部の所在地で,イラク戦争が始まれば米軍の中枢基地となるところ.

1.03 中国と英国の外相が電話会談.イラク問題で恒常的協議を続ける必要性で一致.

1月04日 トルコ首相の中東歴訪

1.04 米英軍機,「飛行禁止空域」のナーシリーヤ付近の通信施設を精密誘導弾で空爆.

1.04 イラク軍機関紙,イラク攻撃に対抗する「人間の盾」に十万人が志願したと発表.

1.04 国連査察団,バグダッドの北375キロのモスルに常設事務所設置.

1月04日 トルコのギュル首相,アラブ諸国(シリア,エジプト,ヨルダン)を歴訪.開戦時はNATOの一員として対米協力に踏み切らざるを得ない自国の事情を説明.「最後まで戦争を回避する努力を続けていく責任がある」と述べ,イラク攻撃反対で一致したことを強調.予定したサウジアラビア訪問は直前で中止される.

1月05日

1.05 イスラエル,地中海沖で世界最高精度の迎撃ミサイル「アロー」の発射実験に成功.

1.05 国連査察団,「国家監視局」への査察を実施.「国家監視局」は査察団との連絡調整機関であると同時に,イラクの組織した調査妨害機関であるとの悪評.

1.05 ボストン・グローブ紙,「米特殊部隊とCIAがすでにイラク国内に潜入し,数ヶ月に渡りイラクで活動中である」と報道.

1月06日 米軍,予備役1万を出動準備態勢に

1.06 フセイン大統領,国軍創立記念日で演説.「国連査察はほぼ純然たる諜報活動となっている」と批判.

1.06 エルバラダイIAEA事務局長,これまでのところ査察で疑問点は見つからなかったと報告.

1.06 米英軍機,イラク南部メイサン地方を爆撃,民間人2人が死亡,13人が負傷.

1.06 米陸軍,1万人以上の予備役に出動準備を指令.その大半はペルシャ湾岸派遣を予定される.

1月07日

1.07 南ア,非同盟諸国会議の議長国として,査察報告書を国連全加盟国に公開するよう要請.

1.07 ラムズフェルド米国防長官,対テロ特殊作戦軍(SOCOM)の経費を増額するとの方針を表明.

1.07 国連とWHO,戦争が始まった場合のイラク国内の被害予測を公開.攻撃初期で50万人のイラク国民が犠牲になるとし,「湾岸戦争」以上の深刻な被害となるだろうと警告.この報告はもともと人道支援計画を策定するために作成されたもの.

1月08日

1.08 同時多発テロのアメリカ人遺族などを含む「ピースフル・トゥモロウズ」がバグダッドを訪問. 「世界は軍事行動の被害者すべてに等しく関心を持つべきである.対イラク戦争を防ぐため全力をあげる」と声明.

1.08 仏ロ外相が会談.安保理決議を厳守することで一致.安保理での両国の協力姿勢を強調.

1.08 イラクとクウェート,湾岸戦争時に行方不明となったクウェート人捕虜問題で協議再開.

1月09日 ブレアの忍耐発言

1.09 ブレア首相,閣議で「国連の査察には時間と場所を与えるべきだ.忍耐が必要」と発言.査察期限延長を支持.


忍耐発言の背景
新たな国連決議なしの英国参戦に反対する,100人前後の労働党下院議員と多くの地方組織党員の存在.英王立国際問題研究所のウィリアム・ホプキンソン主任研究員は「国内外で意見の分裂を避けたいのが現時点での首相の方針だ。慎重姿勢は時期をめぐる戦術的判断で、武力攻撃支持を含む対米協調は不変。イラクへの対応が軟化したわけではない」と指摘.

1.09 ブリグス委員長,安保理に査察の中間報告,大量破壊兵器の決定的証拠はないが,申告書は世界の疑念に答えるものではないとし,なお時間が必要との見解を表明.

1月上旬 米ギャラップ社が実施した世論調査で,武力攻撃への支持は53%と大きく下落.

1月11日

1月11日 英空母アークロイヤルが湾岸方面に向け出港.地中海で15隻の艦船と合流して艦隊を形成する予定.英海軍としてはフォークランド紛争以来,20年ぶりの大規模艦隊.

1.11 ロサンゼルスでイラク戦争反対の市民集会,2万人以上が参加.

1.11 シカゴで,公務員労組,アメリカ教員連盟,港湾労組,サービス従業員組合,チームスター,ホテル・レストラン労組,全米自動車労組などが参加しイラク戦争反対の会議開催.USLAW(イラク戦争に反対する組合組織全国会議)の結成で合意.これらの労働組合の加盟組合員数は合計200万人を超える.

1月12日 イギリスの戦争反対世論,8割に達する

1.12 イギリスのデイリー・メール紙,労働党地方支部長の約9割が反対,参戦強行なら党員数千人が大量離党すると報道.

1月12日 BBC放送の電話アンケート.回答者の約8割が「決議なき参戦」に反対.

1.12 イランのハタミ大統領,クウェートのサバハ外相と会談.ともにイラクの旧敵国でありつつも,イラク攻撃回避で合意.

1.12 モロッコの首都ラバトでイラク戦争反対デモ,2万5千人参加.

1月13日 ローマ法王,ブッシュ非難の演説

1.13 IAEA,報道官談話を発表.「査察には1年はかかる」と言明した上で,「安保理は,査察団に必要な時間を与えると信じている」と述べる.

1.13 南部の飛行禁止空域,バスラの民間施設を米英軍機が爆撃.イラク人6人が負傷.

1.13 ローマ法王,米国のイラク攻撃の計画を非難する演説.対イラク戦争反対の姿勢を明確にする.

1.13 米共和党内の戦争反対者,ウォール・ストリート・ジャーナルに攻撃反対の全面意見広告を掲載.

1月14日 シュレーダーとシラク,安保理重視で合意

1.14 仏国内の最新世論調査.開戦反対が76%で昨年とほぼ変わらず.仏軍の参加に賛成する人が昨年9月の34%から19%へ急落.

1.14 シュレーダーとシラクが会談.イラク攻撃が必要となれば,その決定は安保理が行うこと,決定にあたっては新たな決議の採択が不可欠との認識で一致.

1.14 査察団,「イラクが禁輸物資となっているミサイル用エンジンなどを輸入した事実が発見された」と報告.

1.14 日本政府,米第七艦隊の新鋭原子力空母「ジョージ・ブッシュ」号が,横須賀を母港とすることを了承.

1月11日

1.15 米国,NATOに対し,イラク攻撃が始まった場合の基地提供,輸送への協力など後方支援を正式に要請.

1.15 米行政管理予算局のダニエルズ局長,対イラク戦争が始まれば,同盟国に戦費負担を要請するとの考えを明らかにする.

1.15 ラムゼー・クラーク元司法長官,ブッシュ大統領らに10項目からなる弾劾書を提出.

1.16 UNMOVIC,イラク国内のウハイダー弾薬庫で,空弾頭11発を発見.化学兵器爆弾として利用可能なものと発表.

1.16 国連査察団,バグダッド市内でイラク人科学者2人の自宅を訪問.大量破壊兵器に関する聴取を実施.

1.17 米英軍機,バグダッド南東の2カ所の防空施設を爆撃.

1.17 シラク大統領,安保理に対し査察延長を要請.同時に,国連に対する圧力を強めるブッシュ大統領の姿勢を批判.

1.17 フセイン大統領,「湾岸戦争」開戦12年を記念しTV演説,最後の最後まで抵抗を続けるよう訴える.

1月18日 ワシントンの50万人集会

1.18 ワシントンでA.N.S.W.E.Rの主催する抗議行動.50万人の参加者が,議事堂前からワシントン海軍工廠に向けデモ.アメリカの大量破壊兵器の即刻の撤去を要求.この他,東京の7千人を始め,世界30カ国を超える地域で100万人が参加して,イラク攻撃反対の連帯集会.

1.18 IAEA,「イラクの物理学者ハッサン氏の自宅で,ウラン濃縮技術に関連した大量の文書を発見した」と発表.

1月19日 ブリクス・エルバラダイの査察交渉

1.19 ブリクス委員長,エルバラダイ事務局長がバグダッドを訪問,サアディ大統領顧問と会談.さらに積極的な協力を強く要請するとともに,ミサイル弾頭などに関し,補足情報を要求.

1.19 米英軍機,バグダッド南東の通信施設など8か所を空爆.

1.19 パウエル長官,「決定的証拠」や新決議がなくても,イラク攻撃は可能と強調.

1.19 米国とイスラエル,イスラエル南部でイラクのミサイル攻撃を想定した訓練開始.

1.19 15カ国8宗派の宗教指導者,イラク攻撃阻止へ積極的な行動を信者らに呼びかけ.

1月20日 最初の安保理外相級会合

1.20 査察団とイラク政府,査察方法の改善に向けて,10項目で合意.

1.20 安保理外相級会合が開かれる.パウエル長官は対イラク武力行使をめぐり,単独行動も辞さないとする強硬発言.これに対し,仏ロ中が一斉に反発.

1.20 英フーン国防相,兵士2万6千人と戦車120台をイラク周辺に増派すると発表.地上戦に備えたもの.

1.20 ドビルパン仏外相,対イラク武力行使を容認する新決議が提案されれば,拒否権を発動する可能性があると示唆.

1.20 キプロスのカスリデス外相,国連のキプロスでのイラク人科学者聴取実施を了承.

1月21日

1.21 ラムズフェルド長官,空母2隻にたいし新たに増派命令.イラク周辺海域は米空母6隻体制に入る.

1.21 シュレーダー独首相,米英両国が準備しているイラク攻撃容認の新決議には反対する方針を表明.

1月22日 日本,開戦時の資金援助を表明

1.22 ニューヨーク・タイムズ社説,「ブッシュ大統領は,査察の継続ではなく戦争の方向に傾いているが,これは間違いを起こすことになる」と指摘.

1.22 日本政府,「イラク攻撃が始まれば,難民支援策として資金提供する」との意向を米国に表明.

1.22 イラク対空防衛部隊,領空に侵入した米無人偵察機プレデターを撃墜.

1月23日 ブラジルの世界社会フォーラム,「2.15統一行動」を呼びかけ

1.23 NATO,大使級会合を開催.米国のイラク戦争に対する軍事支援要請を審議.独仏の抵抗により継続審議になる.

1.23 中東6か国外相会議,イラクの査察完全履行と攻撃反対を求める共同宣言を採択.

1.23 アジズ副首相,フセイン大統領が戦争回避のために辞任・亡命する可能性はないと否定.

1.23 クウェート議会のホラフィ議長,「対イラク戦争が始まったとしても,イラク侵攻作戦に参加する意思はない」と意向を表明.

1.23 ブラジルのポルトアレグレで第3回世界社会フォーラム開幕.ブッシュ政権の戦争政策や大企業の世界支配に反対するデモに7万人が参加.集会は,来る2月15日を期して世界の反戦勢力が一斉に立ち上がるよう呼びかける.

1.23 日本外務省,バグダッドに滞在する邦人約30人に対し,「自主退避」を勧告.

1月24日 民主党議員122人が,査察継続を求める

1.24 米民主党所属の下院議員百二十二人が,査察団の活動継続を求める手紙を大統領に送る.「米国は,安保理決議1441のプロセスにしたがい,同盟国の完全な支持を得て,外交的手段を通じてイラクの武装解除を達成するべきである」と述べる.共和党内でも懸念の声が広がる.

1.24 ニューヨーク・タイムズ紙とCBSニュースの世論調査.「査察団に時間を与えるべきだ」と考えている人が77%に達する.大統領の支持率は52%と,一昨年九月の同時多発テロ以降最低.

1.24 英国の大衆紙デーリー・ミラー,読者にたいしイラク戦争反対署名を呼びかけ,二日間で七万人がこれに応じる.

1月25日 「人間の盾」がロンドンを出発

1.25 イランとインド,覇権主義と一国主義に反対し平和的解決を求める共同宣言発表.

1月25日 米英人ら約50人,二階建てバスに乗りロンドンを出発.「人間の盾」となって攻撃を阻止しようとバグダッドへ向かう.イラクでは,標的となる発電所や橋などの周辺に陣取り,体を張って攻撃を阻止する予定.呼びかけ人の元米海兵隊員ケン・オキーフさん(33)は,「戦争を止めるには,自分たちで行動しなければならない」と訴える.2月15日には,第2陣約600人が,バス6台でロンドンを出発する.

1月25日 ワシントン・ポスト,国防総省当局者らの話として,「イラク攻撃に踏み切る準備が完了するのは3月にずれ込む見通し」と報じる.

必要とされる準備期間
陸軍の主力5師団のうち、現在、湾岸地域への派遣命令を受けているのは第3、第4歩兵師団だけ。命令を受けていない師団の中で、攻撃用ヘリ「アパッチ」などを擁し、侵攻作戦に必須とされる第101空てい師団の場合、装備の海上輸送などには1か月かかる。さらに、同師団の指揮官らは湾岸地域に到着後、兵士らを砂漠の気候に順応させ、基礎的な訓練を施す期間として、最低でも1、2週間は必要と述べる.米国が国連査察の数週間延長を容認するのは,この準備の遅れによるものと説明される.
また海軍は,現在ペルシャ湾と地中海に1隻ずつ空母を展開しているが、新たに派遣命令が出された空母2隻がそろうのは、2月中旬以降になる見込みとされる.

1.25 ベルギーの世論調査.「いかなる場合にも」戦争を拒否すると答えた者は68%,「国連安保理が容認する場合に限って」戦争を

容認すると答えた者は29%.両者をあわせると,一方的な対イラク戦争には97%が反対.

1月26日 七ケ国の首都市長が共同アピール

1.26 カード首席補佐官,テレビ・インタビューで,「米国はあらゆる手段を使う」と述べ,イラクへの核兵器使用の可能性も排除せず.

1.26 米英軍機,バクダッド南東のケーブル中継所など5カ所を爆撃.

1.26 欧州七カ国の首都の市長,「イラクにおける紛争は回避されうるし,回避されなければならない」との共同アピールを発表.ローマのベルトローニ市長,パリのドラノエ市長,ロンドンのリビングストン市長,ベルリンのウォーウェライト市長,ウィーンのホイプル市長,ブリュッセルのティレマンス市長,モスクワのルシコフ市長の七人が呼びかけ人として署名.

1.26 イスタンブールで,米国への基地提供に反対する5千人のデモ.この他ギリシャで1万人,イエメンで数万人,スーダンで1万人の抗議行動.

1.26 米政府,対外広報戦略を統括する「世界広報宣伝局」を新設.

1月27日 ブリクス,イラクが非協力的と報告

1月27日 UNMOVICのブリクス委員長,国連安全保障理事会で約30分にわたり査察報告.「シロでもないがクロでもない」と述べた1月9日の中間報告に比べて,ぐっと「クロ」に近づいた印象を与える内容となる.一方,IAEAのエルバラダイ事務局長は,「あと数か月の査察継続でイラクの核保有疑惑を完全に否定できるだろう」と楽観的な見通しをを述べる.


ブリクス報告の内容
イラクの非協力性だけでなく、兵器を隠し続けようとしている意図を具体的に列挙.化学兵器用弾頭の発見は「氷山の一角」であり、「兵器を移動させ隠ぺいしている疑いがある」と述べる.化学兵器であるVXガスなどの製造に関しては、「矛盾した情報があるだけではなく,兵器化された形跡すらある」と指摘。また炭疽菌についても、情報データに意図的な改ざんと見られる遺漏があった事実を明らかにする.関係者によれば,この「遺漏」は安保理決議1441が定めた「重大な違反」に「確実に該当するだろう」と言われる.

1月27日 パウエル米国務長官,イラクは国連安保理決議に反して査察に協力せず,武力行使に道を開く「重大な違反」を継続していると強く非難.化学・生物兵器や炭疽菌,VXガスなどの所在が不明であることなどを報告書に沿う形で次々と指摘.「イラクが平和的な武装解除を選択するための時間は急速になくなりつつある」と警告.

1.27 アジス副首相,査察団の報告を受け,「延長後は必要があれば更に積極的に査察に協力する」と言明.

1月27日 CBS放送,イラク攻撃計画「衝撃と畏怖」の概要を報道.

1月27日 ブッシュ大統領,非常任理事国であるスペインのアスナール首相と電話会談.さらに週内に英国のブレア首相,イタリアのベルルスコーニ首相とワシントンで会談する予定を発表.

1月27日 民主党のトーマス・ダシュル上院院内総務,「現実に核の脅威を我々に突きつけているのはむしろ北朝鮮の方ではないか」と述べ,イラク攻撃に突き進むブッシュ政権の外交姿勢をけん制.

1月27日 EU議長国ギリシャのシミティス首相は,「全加盟国が歩調を合わせ,戦争回避に向けてあらゆる手段をとる」と表明.ハビエル・ソラナEU共通外交安全保障上級代表も「違反の証拠なしに開戦は難しい」と繰り返す.

1.27 加藤良三駐米大使,「日米関係がイラク問題への対応を考える基盤になる.仮に武力攻撃が発生した場合は,日本はまず基本的立場を表明すべき」と述べる.

1月28日 ブッシュの一般教書演説

1.28 ブッシュ米大統領,議会で一般教書演説.「米国の旗は力や利益以上のものを象徴している」ゆえに,「この国のとる道は他人の決断に左右されない」と断言.「邪悪な者のもくろみを砕く信念」を強調するとともに,超大国としての力を背景に新たな国際秩序の構築に向かう決意を表明.イラクに武装解除を迫るだけではなく,「脅威が突如として顕在化した後では,行動も言葉も非難もすべて手遅れ」として,国際社会が行動を躊躇することにも警告を発する.またブッシュは「イラクがアル・カーイダを含むテロ組織に大量破壊兵器を与えている」と強調したが,具体的証拠は示さず.


「悪の枢軸」への見解
「異なった脅威には異なった対応が必要だ」と述べ、イラク、イラン、北朝鮮に対しそれぞれ異なったアプローチを表明.「悪の枢軸」発言を事実上撤回.イラクについては,早期開戦への懐疑論が内外から出るなか、武力攻撃を辞さない構えを改めて鮮明にする.一方で、イランについては,「大量破壊兵器を追求しテロを支援している」としつつも,「自由に生きたいというイラン国民の願いを米国は支援する」と語り,民主化運動を促す.北朝鮮については、すでに核兵器を持っている可能性がある以上、武力行使は周辺への影響を考えると、現実的でないとする.

1.28 ジョーンズ国務次官補(欧州・ユーラシア担当),イラクへの核使用を否定.しかし核攻撃計画が検討されている事実は否定せず.

1月28日 プーチン大統領,「国際査察団は,現時点でイラクでの活動に問題や困難があるとは言っていない.しかしイラクが査察を妨害するようなことがあれば,ロシアはイラク擁護の姿勢を転換させ,より強硬な対イラク安保理決議の策定・採択へ動くだろう」とのべる.

1.28 米国人のノーベル賞受賞者41名,対イラク攻撃に反対する共同声明を発表.ブッシュの強硬策を「米国の安全と地位を損なうもの」と非難.

1月29日 安保理で米英と独仏の対立が尖鋭化

1.29 国連安全保障理事会,査察報告を受けて非公式会合を開催.理事国15カ国中11カ国が査察の続行を主張し,査察継続を確認.米英両国は,イラクが査察に非協力的で「武装解除」していないと主張し,長期継続に反対.ブルガリアとスペインがこれを支持.

1.29 UNMOVIC,イラクで発見した砲弾の弾頭に,化学薬品は含まれていないと結論.

1.29 ブレア英首相,攻撃を可能にする新たな国連決議を求める発言.労働党議員の約3分の1を占める左派系議員はイラク攻撃に強く反対.党員の4分の1が党籍を離脱するという情報も流れる.米英が国連の承認なしに攻撃に踏み切った場合,ブレア首相の政治生命は危機に陥るという見方が広がる.

1.29 米国防省,予備役兵1万5千人を追加招集,これまで召集された予備役兵は計9万5千となり,「湾岸戦争」以後最大となる.

1.29 全米14都市で,ブッシュ大統領の一般教書演説に対する抗議行動が行われる.

1.29 CBSによる米国内の世論調査.ブッシュの「年頭一般教書」を受け,「賛成」が演説前の47%から演説後には67%にハネ上がる.

1.29 フランス・サウジ会談,武力行使に代わるあらゆる解決策を検討することで一致.

1.29 韓国の与野党国会議員17名,米国の対イラク戦争に反対する声明を発表.

1月30日 欧州議会,一方的軍事行動反対の決議

1.30 欧州議会,「イラク情勢に関する決議」を採択.賛成二八七,反対二〇九,棄権二六.


決議の骨子
@今のところ確認されている安保理決議1441への違反は,軍事行動を正当化するものではない.
Aいっさいの新たな行動は,情勢の全面的な評価ののち,国連安保理によってとられなければならない.
B欧州議会はあらゆる一方的軍事行動に反対する.先制攻撃は国際法や国連憲章に合致するものではなく、地域の事態の混乱を増長するものであると確信する.

1.30 ブッシュとブレアの会談の前日,AFL・CIOのジョン・スウィーニー会長と英国TUCのジョン・モンクス書記長は連名で,イラクに対する査察の継続を求める書簡を両国政府に送る.

1月30日 参謀本部戦略研究センターのワルフォロメイ・コロブシン大将,「米軍がイラクの地下の化学・生物兵器貯蔵庫を破壊する目的で,地層突入型核爆弾B61―11といった兵器を使用する可能性がある」と述べる.


地層突入型核爆弾 B61―11
航空機から投下され、地下7―40メートルまで突入して爆発し、地震波で地下目標を破壊する。爆発エネルギーの大きさを、0・3―80キロ・トンの範囲で選択できる.核兵器としては低威力だが、放射能が地表に噴き出し、深刻な汚染をもたらす可能性がある.アフガンでも使用が検討されたが,結局使われなかった.

1月30日 英国,イタリア,スペイン,デンマーク,ポルトガル,ポーランド,ハンガリー,チェコの8か国首脳,イラクの脅威に団結して対抗する決意を示す.この「論文」はイギリスの「タイムズ」紙,アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」など英米有力紙に掲載される.フライシャー報道官は,欧州8か国の指導者が,イラク攻撃支持の書簡を寄越していると指摘.


8カ国首脳共同寄稿
外交的・政治的位置づけが,なんともあいまいなこの文章は,アメリカの発意,スペインのアスナール首相の起草によるといわれる.
文章は,27日の査察団報告で、「イラクの欺まんと否定、不服従が継続していることが確認された」とし,イラクの対応を非難.「イラクの政権とその大量破壊兵器は世界の安全保障の明確な脅威である.我々の政府は、この脅威に立ち向かう共通の責任を有している」と宣言している.
フランスとドイツや欧州連合(EU)議長国のギリシャは,この共同声明に加わらず.

1.30 南アのマンデラ前大統領,ブッシュ大統領を傲慢で近視眼的であると発言,「先見の明なく,適切に考えることのできない大統領をもつ一つの大国が,今世界をホロコーストに落としこもうとしている」と非難.

1月31日

1.31 ブッシュ=ブレア会談.イラクは武装解除していないとし,米英単独でも攻撃可能と宣言.戦争遂行の意思を改めて確認.ブレアは新たな国連安保理決議案の提起を主張.

1.31 米英機,イラク北部を精密誘導兵器で爆撃,民間人1人が負傷.

1.31 UNMOVICの植木安弘報道官,「イラクはさい疑心に満ちた対応を続けている」と,非協力を批判.

2003年2月

2月1日 スペースシャトルの爆発・墜落

2.01 スペースシャトル「コロンビア」号,着陸直前に爆発.7人の乗務員全員が死亡.

2.01 欧州8首脳の共同寄稿,「ウォールストリート・ジャーナル」紙と,英国・スペイン首脳のメディア操作によるものと判明.

2.01 イラク,パウエル国務長官が安保理に提出予定の決議違反の「証拠」を,国連査察団が検証するよう要求.

2.01 カーター元米大統領,「ブッシュ政権は先制攻撃の正当性を証明していない」との見解を表明.

2月02日 「衝撃と畏怖作戦」の全貌

2.02 ニューヨーク・タイムズ紙は,米国防総省によるイラク攻撃の詳細なシナリオ「衝撃と畏怖(Shock and Awe),またはAデー」作戦を報じた.作戦実施に必要な兵力の展開は2月中旬にも整う見通しだとする.300機が配備済み.約6700発の衛星誘導爆弾と3000発以上のレーザー誘導爆弾も持ち込まれている.


Aは空爆(airstrikes)の頭文字.サダムの兵士たちを戦闘不能にする,あるいは戦意喪失させるに十分な壊滅的打撃を与える空爆作戦.
3月のある日,空軍と海軍がイラク国内の標的めがけて300〜400発の巡航ミサイルを打ち込む.これは,第一次湾岸戦争の全期間40日に投入された数を上回る.そして二日目,またもや300〜400発の巡行ミサイルを打ち込むことになっている.
さらに2日間で500機の爆撃機により3000発の精密誘導爆弾も打ち込まれる.これによりイラクの持つ中距離弾道ミサイル(推計数十発)など空軍力を掃討.
この戦闘計画のコンセプトは,高精度誘導兵器を多用するのが特徴だ.第一次湾岸戦争では,兵器のうちピンポイントの精度で誘導されるものは10%だった.今度の戦争ではそれが80%になるという.
立案者の一人,ハーラン・ウルマンは,「彼らが恐怖のあまり戦闘をやめてしまうことを我々はねらっている」と言う.「バグダッドにいる将軍の指揮下の30師団が突然消されてしまうのだ.都市も破壊される.バグダッドに安全な場所はなくなる.2日か3日か4,5日で,彼らは,物理的にも情緒的にも心理的にも力尽きてしまう」

2.02 インドのフェルナンデス国防相,「対イラク戦争が始まっても,これに参加するつもりはない」と表明.

2月03日

2.03 国防総省,対テロ戦の勝利,米軍の変革,部隊と兵員の質の維持の3つを柱とする国防予算案を発表.総額3799億ドル,対前年度比4・2%増にのぼる.これは世界の2位から11位までの10か国の合計にほぼ等しい.

2.04 米軍とイスラエル軍,イラク報復攻撃を想定し,迎撃ミサイル「パトリオット」の実射訓練を実施.

2.03 ギャラップ社,仏,英,独,ロ,スペインの欧州五カ国と米国で対イラク戦争に関する世論調査を実施.「いかなる攻撃にも反対」とした人はスペインで74%,ドイツ,フランスではそれぞれ60,50%,ロシアで59%に上る.これに比し,英国では41%,米国で21%にとどまる.米国の一方的な攻撃に賛成した人は,英国10%,ドイツ9%,フランス,ロシア7%,スペイン4%にとどまる.

2月04日 スコット・リッター元査察官の訪日

2.04 アフリカ連合(OAU)首脳会議,南アの強い態度を受け,対イラク攻撃反対などを盛り込んだ声明を発表.

2.04 スコット・リッター元主任査察官,東京都内で記者会見.イラクの大量破壊兵器は大半が廃棄済で脅威にあたらないとし,ブッシュ政権を批判.

2月05日 パウエル,安保理で演説.

2.05 パウエル米国務長官,国連安保理外相級会合で,衛星写真,録音テープ等の決議違反「証拠」となる情報を開示.


パウエル発言の要旨
@フセインは「査察チームを監視する委員会」を設置し,査察の妨害を組織的に行っている.
Aロケット発射装置と生物兵器を搭載した弾頭が,イラク西部各地に配備されている.UNMOVICはイラクは380個のロケットエンジンを不法所持していると報告している.
Bイラクは少なくとも7つの移動式製造装置を持っており,乾燥タイプの炭疽菌やボツリヌス菌を1か月で製造できる.
C控え目の推定で、イラクは今でも100トンから500トンの化学兵器を貯蔵している.
Dフセインは、すべてのイラク科学者を脅迫し,緘口令を敷いている.
Eアル・カーイダの上級幹部アブ・ムサブ・ザルカウィがイラク北部のクルド人自治区に拠点を置いている.イラク政府は彼らの活動を保障している.


ザルカウィ問題
ザルカウィはアルカーイダ幹部で毒物テロの専門家といわれる.
ヨルダン生まれのパレスチナ人。アフガニスタンでアル・カーイダの毒物テロ訓練キャンプをまかされていたが、タリバン崩壊後、イラク北部に逃げ込み、イスラム過激派「アンサール・イスラム」のもとで、毒物爆発物訓練センターの設立・運営を助けるなどしたという。
昨年10月のアンマンの米外交官殺害事件を指揮したといわれ,現在までに仏、英、スペイン、イタリアでザルカウィの関係者,計116人が逮捕されている.

2月5日 東欧10か国外相,パウエル米国務長官の機密情報提示を受けて,イラクの大量破壊兵器隠蔽が明確になったとの認識を示す.宣言に署名したのは,ルーマニア,ブルガリア,スロバキア,スロベニア,エストニア,ラトビア,リトアニア,クロアチア,マケドニア,アルバニアの各国.東欧各国の世論調査では,イラク戦争への反対は,チェコで67%,ハンガリーでは82%.


2.05 ドビルパン外相,「武力行使の可能性を排除しない」と発言.「フランスも妥協するのでは」との観測が内外メディアに広がる.

2月5日 ブッシュのイデオローグ,トーマス・フリードマンが,ニューヨークタイムスに寄稿.「イラクは米軍とその同盟国による鉄拳(iron

fist)によって支配され,その鉄拳を背景に,イラク文民政権が段階的に前に出ていくことになるだろう…」

2.05 ロシアとパキスタンが首脳会談.イラク攻撃反対で一致.パキスタンは北朝鮮への核技術供与を否定.

2.05 豪上院,米国のイラク攻撃に追随するハワード首相に対する不信任動議を可決.

2.05 毎日新聞,外務省幹部の小泉首相に対する“進言”を報道.幹部は「米国がイラク攻撃を始めたら,『支持する』と言ってください.それで日本の仕事の8割は終わりです」と伝えたとされる.

2.05 川口外相,雑誌に寄稿.多国籍軍への自衛隊参加や包括的テロ対策法の制定などを提言.

2.05 海上自衛隊の戦車揚陸艦「しもきた」が,ペルシア湾内のカタールに向け出航.

2月06日 101空挺師団に出動命令

2.06 ブッシュ大統領,イラク攻撃を容認する新たな国連決議を要求,イラクに「最後通告」を発する.

2月6日 UNMOVICのブリクス委員長,イラク指導部に強い調子で警告.


ブリクスの発言要旨
査察団の正式報告やパウエル発言などにより政治的環境がかなり変わった.安保理内では、「いつまで査察を続けるのか」などの疑念が強まり、忍耐が限界に近づいてきた.
「重大な違反」の一歩手前の違反が「数多い」ことから、査察へのイラクの協力姿勢に不信を抱かざるを得ない.
武力行使の開始時期は限りなく近づいており、イラク指導部は事態の深刻さを認識すべきだ.

2月6日 第101空てい師団約1万6000人に出動命令.同師団は,攻撃用アパッチヘリ約70機を持ち,バグダッド侵攻をにらむ.ニューヨーク・タイムズ,湾岸一帯の米軍は約10万人で,2月中に約17万5000人に達すると報道.英軍約3万1000人,豪州軍約2000人も加わる.イラク総兵力は約42万人.


地上戦計画の概要
空爆を数日で終え、南部のクウェートと北部のトルコから挟み撃ちの形で地上戦に突入する。最短で5日で決まる可能性もあるといわれる.
イラク軍が市街戦で徹底抗戦すれば,米軍にも100人から5000人の死者が出る可能性がある.このため,市街戦は極力避け,バグダッドなどの都市部を包囲したうえで,衛星や無人偵察機の情報に基づき空からの攻撃を繰り返すとされる.
地下壕に対しては,厚さ6メートルのコンクリートも貫通可能なGBU28爆弾「バンカーバスター」を使用.
建物や人に被害を与えずに電子機器を不能とする新兵器、高出力マイクロ波(HPM)爆弾も試験的に使うという。

2.06 英国,イラク攻撃に備えて約100機の軍用機をペルシャ湾岸に派遣する計画を発表.

2.06 川口外相,衆院予算委員会で答弁.「安保理決議六七八号が(ふたたび)使われるということは,論理的にはあり得る」と述べる.678号決議は,90年の湾岸戦争を認めた安保理決議.

2月6日 報道によれば,日本外務省幹部は「米国の武力行使の方針は変わらない.結論は米国の武力行使『支持』以外にあり得ない」と述べたとされる.

2月07日 シラク大統領の決意表明

2.07 シラク大統領,パリの有力メディアの記者5人を官邸に招き,みずからオフレコ・ブリーフィング.5日のドビルバン外相発言を修正し,査察の強化と継続という主張を強く再確認する.

2.07 江沢民国家主席とシラク大統領,電話でイラク問題を協議,戦争回避で協力することで一致.

2.07 イラクの兵器隠匿を指摘した英政府報告書,12年前の米大学生論文等の盗用と判明.

2月7日 横須賀を母港とする空母「キティホーク」にペルシャ湾岸地域への出動命令.イラク周辺に展開する総兵員は7日現在で11万に.

2月08日

2.08 アナン事務総長,「国連の枠組みから逸脱した武力行使はあってはならない」と強調.米英両国に警告を発する.

2.08 マレーシアのヒシャムディン・スポーツ相,戦争反対署名が50万人を突破したと発表.

2月9日 ベルギー,NATOのトルコ派遣を拒否

2.09 ベルギーのミシェル外相,NATOのトルコ防衛計画に拒否権発動の意向を表明.

2.09 ドイツとフランスが,「国連平和維持軍が査察団の活動を支援する」という提案を準備していることが明らかになる.


独仏共同提案の骨子
@査察要員を3倍に増やす,
Aイラク全土を飛行禁止空域とし、国連部隊が数年間にわたって管理する,
Bフランスのミラージュ戦闘機が上空から査察団を護衛し、独も連邦軍を派遣する,
Cイラクの石油密輸を防ぐため周辺国と協定を締結する

2月09日 ブリクス委員長とエルバラダイ事務局長,イラク側との協議を終了.イラク側は核科学者の追加リストや,炭疽菌,VX,ミサイル分野の追加文書を提出.U2機の上空査察を容認する意向を示すなど新たな動き.ブリクス委員長は「イラクは実質面で真剣な態度を取り始めた.現状打開には至らないが,こうした態度が続けば問題の平和的解決につながる」と一定の評価を与える.エルバラダイ氏も「イラク側の心境に変化の兆しが見られる」と述べる.

2.09 米英軍機,バスラ近郊を爆撃.民間人2人が死亡,9人が負傷.

2.09  ジャカルタでイラク戦争反対デモ,過去最高の数万人が参加.

2.09 ワシントンで日米「戦略対話」が開かれる.報道によれば,席上アーミテージ米国務副長官から,新決議に消極的な非常任理事国への働きかけを要請された.

2月10日 仏独露共同声明の発表

2.10 パリを訪問中のロシアのプーチン大統領とフランスのシラク大統領が会談.会談後の記者会見で仏独露共同声明を発表.


共同宣言の骨子
国連による査察の継続と実質的な強化を改めて主張し、米国が急ぐ対イラク攻撃に反対する.
現在の査察の根拠となっている安保理決議1441の枠内で,まだすべての手段が尽くされているとはいえない.
3カ国は,査察の継続と人的・技術的な強化を支持し、平和裏のイラク武装解除に向け、あらゆる手立てを講じる.

2.10 イラク政府,無条件で米偵察機U2をふくめすべての上空査察を受け入れる意向を,国連側に伝える.ドゥーリ国連大使は,「米英は否定的に見るだろうが,イラク政府は決議の履行にベストを尽くしている」と強調.

2.10 NATO緊急理事会,トルコ自身による防衛力配備の要請をうけ開催.フランス,ドイツ,ベルギーは「NATO条約の精神に基づき,同盟国としての防衛の責任は果たす.しかし国連の査察が続いているいま,武力攻撃を前提とする支援の決定は時期尚早」との姿勢を変えず.

2月10日 トルコ,米軍3万8千人の国内基地への展開を容認.

2月10日 ベルギー,NATO支援不支持を通告.

2.10 英主要五労組(通信労組,公務員労組,鉄道運転士組合,鉄道海員組合,高等教育教員組合)が記者会見.ブッシュとブレアが戦争に突き進むならば,大規模なストが起きると警告.「英労働組合会議(TUC)は戦争の危険があるときは大会を開催すると規約にある」と述べ,軍事攻撃をストップさせるための臨時大会開催を呼びかける.

2月10日 川口外相,国連新決議あれば米国の攻撃支持すると明言.

2月11日 英国民は,サダムよりブッシュを危険視

2.11 CIAとFBIの責任者が議会で証言.「ここ数日間に,ワシントンとニューヨークに対し,アルカイーダ(Al Qaeda)が何らかの大量破壊兵器を用いた攻撃を行う可能性がある」と証言.

2.11 中国の江沢民国家主席,「国連の枠組み内で問題を解決するのは国際社会の普遍的願い.われわれは,今後もこの方向に沿って努力するよう関係国を促すべきだ」とし,共同宣言への支持を表明.

2.11 バチカンのエチェガレイ枢機卿,ローマ法王の特使としてバグダッドを訪問.

2.11 英民間テレビ放送チャンネル4の世論調査.イラクを世界の平和への脅威と考えている国民は,十一月の調査の40%から27%と大幅に減少.逆に米国が最も危険な国だとこたえた者は27%から32%に増加.

2.11 タイムズ紙の世論調査.57%が「米英政府は対イラク攻撃に説得力のある根拠を示していない」とし,86%が「国連査察団にもっと時間を与えよ」と回答.「ブレア首相はブッシュ大統領のプードル犬だと思う」人は過半数の51%に.女性の間では55%に上る.

2.11 米人気歌手マドンナ,最新ビデオで,対イラク戦争反対を訴える.関係者らは「反戦,反ブッシュのかなり衝撃的な内容」と指摘.

2月12日 スペインのアスナール,アメリカ支援に固執

2.12 プーチン大統領,米英準備中のイラク攻撃容認の新決議案が提出されれば,拒否権を発動する可能性を示唆.

2.12 EUのプローディ委員長,戦争回避を目指す仏独,ベルギーの努力を支持すると表明.

2.12 ドイツのシュレーダー首相,スペイン・カナリア諸島でアスナール首相と会談.シュレーダーが平和的武装解除案を説明するが,アスナールは「欧州は米国が必要だし,米国も欧州を必要としている」と米国との協調を主張.シュレーダー首相は,イラク問題で「両国間に相違がある」と述べ,平和的武装解除を目指す独仏へのスペイン側の理解が得られなかったことを明らかにする.

2.12 インドネシアのイスラム教指導者,自爆攻撃煽る「ビンラディン声明」に拒否表明.

2.12 小泉首相・川口順子外相・福田康夫官房長官ら,「イラクに誤ったメッセージを与える」と,独仏露共同声明を非難する談話.

2月13日 イラクのミサイル射程,制限を超過

2.13  国連査察団が依頼した専門チーム,イラク所有のミサイル「アルサムード2」の射程が,国連決議の定めた150キロを超過していると指摘.英紙タイムズは,射程違反の事実は大量破壊兵器所有の決定的証拠に等しいと報じる.

2.13 ブッシュ米大統領,フロリダ州ジャクソンビルのメイポート海軍基地で,兵士たちを前に軍用ジャンパー姿で演説.


メイポート演説の要旨
イラク問題の解決に向けて米軍は準備を整えた.米軍はイラクの人々とではなく、抑圧者と戦う。征服のためではなく、解放のために戦うのだ.
軍事力行使は最後の選択であるが,大多数のNATO加盟国は、厳しい選択が必要かもしれないと理解している.
国連安全保障理事会が,たんなるおしゃべりクラブになることは許されない.これまでの決議を実行するつもりがあるのか、いまこそ決断しなければならない.

2.13 パウエル国務長官が下院予算委員会の公聴会で証言.フセイン政権打倒後の政権構想について述べる.


パウエル証言の要旨
@米軍が一定期間にわたって駐留し、駐留軍司令官が統治をおこなう。
Aその後、できるだけ早く非イラク人を指導者とする文民の暫定統治機構に権力を移行させる.
B最終的にはイラク人の手による新政権を発足させる.
ここまでおよそ2年の期間を予想する.
また、イラクの石油資源は「イラクの人々に属する」と述べ、戦後復興に石油資源をあてる考えを改めて強調。イラクを攻撃する場合は石油施設の破壊を避ける方針を示す.

2.13 ラムズフェルド国防長官,上院軍事委員会の公聴会で証言.E.ケネディ議員の質問に答え,「核兵器の使用を排除しないのが,これまでの米国の政策だ」と語る.イラクが生物・化学兵器を使用した場合に核兵器で対抗する含みを残した発言とみられる.

2.13 ドイツのシュレーダー首相,連邦議会で演説.「戦争せずにイラクの武装を解除することは可能だ.この機会を生かさなければならない.ドイツは対イラク攻撃に直接にも間接的にも加わらない」と述べる.トルコに対しては,必要な段階になればオランダ経由で対空ミサイルの供与をするとし,「同盟国との連帯」を強調.

2.13 イタリア,カナダ,スペインなどからの「人間の盾」第1陣15人が,バグダッドに到着.水道施設に陣取るロベルタ・タマン(カナダ)は,「攻撃で死ぬつもりは全然ない.戦争が起きずに家族の元に戻れると信じている」と話す.

2.13 対イラク戦争の中止を求める米軍兵士と家族ら,ブッシュ大統領を相手取り,連邦裁判所に提訴.

2.13 タイ国軍,「アメリカが安保理決議なしに単独でイラク攻撃を行えば,米軍との協力関係を見直す可能性がある」と警告.

2.13 公明党,「米英が安保理決議なしにイラク攻撃に踏み切っても,これに対する日本の支援を容認する」との方針を決定.

2月14日 査察団,調査が進んでいると追加報告

2.14 安保理外相級会合,UNMOVIC,IAEAの追加報告を受ける.ブリグス委員長は査察の成果を強調し,活動継続を強く主張.


ブリクス報告の要旨
@計300カ所以上で抜き打ち査察を実施.大量破壊兵器は発見していない.イラクは査察には基本的に協力.
Aミサイル「アルサムード2」は150キロの射程限度を超え、安保理決議に違反.1000トンの化学物質の行方が説明されていない.炭疽(たんそ)菌、VXガスは廃棄と主張したが、さらなる証拠が必要.
B多くの科学者が当局者同席や録音が許されない限り聴取を拒否.
イラク側の協力姿勢は「まだ十分ではない」が、「積極的で無条件の協力を得られるなら、査察期間は短期で終了できる.

2.14 国連安保理の外相級会合,ブリクス委員長によるイラク査察報告について協議.フランス,ロシア,中国,ドイツなどは,報告が一定の前進を示す内容になったことを受け,査察継続・強化を主張.パウエル国務長官は「基本的な問題を解決せず,査察を永遠に続けることが決議の目的ではない.武力行使の決断の時が来た」と主張,真っ向から対立.シリアのシャラ外相は,「アラブの人々全員が反対する,中東地域で初めての戦争だ」と強調,戦争回避を訴える.


ドビルバン外相演説
戦乱に明け暮れた「古いヨーロッパ」を知るフランスは,(第二次大戦における)米国の自由の戦士への感謝を忘れない.
国連というこの殿堂において、我々はその責任と名誉にかけて理想と良心の守護者でありたい。国際社会の全員とともに,よりよい世界を作るために,決然と行動することを望み、そうできると信じている.
(議場後方の各国外交官らは異例の総立ちで拍手)

2.14 パウエル米国務長官,安保理会合後のインタビューで,「三月一日に安保理が査察団報告を受ける」と語る.月内の査察継続を事実上認めるもの.

2.14 米政府,地球規模でのテロとの戦いを進める方針を示す「テロリズムと戦う国家戦略」を発表.


対テロ新戦略の概要
昨年9月に発表した国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)を補強するもの.米国への脅威を除去するために必要なら先制攻撃や単独行動もためらわないことを改めて強調.
「テロと戦う意思を持つが、力のない国々には軍事、経済面などで支援を惜しまない.しかしその意思がない場合は、我々が断固たる行動を起こし、テロ支援をやめさせる」と明記.

2.14 ブッシュ米大統領,ワシントンのFBI本部で演説.「イラクを武装解除するために兵士を送る場合,イラク国民の生命を守るために全力を尽くす」と述べる.

2.14 ブッシュ大統領,ワシントンでトルコ外相らと会談.イラク北部に展開するため,トルコ国内の複数の基地に米軍部隊数万人規模の駐留を認めるよう求める.地元報道によると,既に約2万人のトルコ兵がイラク北部のクルド人自治区内に進出.約7000人のクルド人民兵が案内役として徴用されている.


2.14 ニューヨーク・タイムズ紙による世論調査.「時間をおかず武力行使すべきだ」は37%.一方「査察継続を」との声は59%にのぼる.

2.14 イラク攻撃反対決議を可決した全米90都市の代表団,ブッシュ大統領あてに決議を提出.

2.14 フセイン大統領,大量破壊兵器の製造と輸入を禁じる大統領令を発布.

2.14 仏国際関係研究所米国センター所長のギヨーム・パルマンチエ,「フランスはいつ米国に同調するか,と問う必要はもうない」と語る.

2.14 ムベキ南ア大統領,イラク攻撃を回避するため兵器解体の専門チーム派遣を発表.

2.14 国際連帯行動のトップを切ってメルボルンで反戦集会.警察発表で15万人が参加.

2.14 川口外相,米国の新決議提出を支持し,非常任理事国への説得工作に着手すると発表.非常任理事国のチリのラゴス大統領と13日会食した際,協力を要請したことを明らかにする.

2.14 茂木敏充外務副大臣,非常任理事国カメルーン,ギニアの駐日大使と会い,協力を要請.

2.14 朝日新聞,元防衛庁長官の久間章生・自民党政調会長代理とインタビュー.久間氏は「外務省は,『米国の外務省』みたいなものだ.日本は米国の何番目かの州みたいなものだから,米国を離れて,日本は何もできないわけだ」などと語る.

2月15日 世界で1千万人が反戦行動

2月15日 世界約60カ国の約600都市で反戦デモ.参加者は計1000万人超と史上空前の規模.デモ開催地は欧州と北米が計約300都市と最も多く,アジアと南米で計約50都市,アフリカで10都市,オセアニアは約20都市.


英国の反戦デモ
市民団体、労組などの連合体「ストップ・ザ・ウォー」や英国イスラム協会などが主催して、各地でイラクへの武力行使に反対するデモが行われた.
ロンドンではデモ隊は市内2か所に集合、15日正午、主会場のハイドパークに向かって行進を始めた.参加者を乗せた貸し切りバスが続々と到着.警察発表でも50万人に達し,主催者の最終発表では200万人を越える.
スコットランドのグラスゴーでは、約4万人がデモ行進.当地で開催中の労働党総会の会場へ詰めかける.
ブレア首相は強硬姿勢を改めて強調.
イタリアの反戦デモ
ローマ市中心部の反戦デモに300万人以上が参加.最新世論調査では、「国連の支持なしでのイラク攻撃に反対」と答えた人は85%に達する.
スペインの反戦デモ
マドリードの反戦デモに200万人,バルセロナでは150万人が参加(いずれも主催者発表).
ドイツの反戦デモ
ベルリンで約50万人(警察発表)が参加する反戦デモ.シュレーダー首相の参加自粛要請にもかかわらず,トリッティン環境相ら3閣僚のほか、ティールゼ連邦議会議長がデモに参加.
最新の世論調査では、ドイツ国民のが「ブッシュ米大統領の方がサダムより危険」と考える人が38%に達し,「サダムの方が危険」とする意見を1ポイント上回る.
アメリカの反戦デモ
全米約150の都市でデモや集会が行われた。ニューヨーク・マンハッタンでは15日、零下10度の寒さをついて約38万人(主催者発表)が結集.
オーストラリアの反戦デモ
メルボルンでの十六万人デモに続き,首都キャンベラで一万六千人、パースで一万人、ニューカッスルで一万五千人、タスマニア州ホバートで一万人以上がデモ行進.16日にはシドニーで20万人集会.

2.15 ブレア英首相,労働党総会で演説.「戦争を懸念する人々の気持ちはわかるが,戦争をしない代償として,サダムはイラクを支配し,人々を苦しめ続ける」と発言.武力による独裁政権の打倒は倫理的に容認される,とする意見を示す.

2.15 オーストラリアのハワード首相,メガワティ大統領とジャカルタで会談.メガワティ大統領は,ブッシュ大統領に電話で直接に反対を表明.ハワード首相は「我が国の立場は決して反イスラムではない」と強調.

2.15 ロイター通信,「ブッシュ米政権がトルコ政府に,協力の見返りとして,総額260億ドルの金融支援を打診している」と報道.

2.15 ニューヨーク・タイムズ,イラクへの武力行使の開始が,3月中旬か下旬にずれこむ可能性があると報道.

2.15 自民党の山崎拓幹事長,「新しい国連決議を取り付けようという米英の努力について,日本も外交努力を展開すべきだ」とし,武力攻撃容認の新決議採択に同調する立場を示す.

2.15 政府関係者,「これからは国内的な説明をどうクリアするかが大変だ」と指摘.今後は国内世論対策も重要になるとの見方を示す.

2.15 橋本元首相,小泉首相の親書を託され,メキシコ訪問.新安保理決議案への説得を行う.

2月16日

2.16 バグダッド市内にあるアメリヤ・シェルターでは,各国からイラク入りした「人間の盾」の参加者たちが「ダイ・イン」で反戦を訴える.

2.16 公明党の冬柴書記長,「戦争に反対するのは利敵行為」とし,独仏の査察継続案を非難,アメリカの武力攻撃決議案に対する支持を公言.

2.16 NATO防衛計画委員会,トルコへの軍事支援をフランスを除外して合意.ロバートソン事務総長は「決定は戦争への一歩ではない」と強調.これを受け入れベルギーは反対を取り下げる.

2.24 フセイン大統領,米CBSテレビとインタビュー.アッサムード2が,安保理決議で禁止された射程150キロを超えないと改めて主張.「適切なミサイルを保有する権利は認められている.廃棄の理由はない」と拒否.

2.25 イラク政府,「生物・化学兵器の廃棄に関する資料などが新たに発見された」と通告.見つかったのは「R400」と呼ばれる爆弾2個で,うち1個に「生物兵器とみられる液体」が入っていた.ブリクス委員長は,「前向きな動き」と一応の評価を示す.


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