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(回答先: Re: なんと、ホントに自作自演だったのね 投稿者 自分で考えてね 日時 2003 年 4 月 05 日 17:16:11)
(読売新聞 2002年9月6日)
ニュース特集
対テロ軍事行動
9.11同時テロ 変わる風景
6…広がる「米国陰謀説」
エジプト民衆、不満のはけ口
カイロの観光名所、ハーン・ハリーリ市場に近い本屋街「トルコ横丁」には、「世界の終末」に関する本がずらりと並ぶ。白骨、崩壊した建物などが描かれたおどろおどろしい表紙には「(イスラム教の)預言者ムハンマドは9月11日を予言」など、センセーショナルな題名が躍る。こうした終末論は、米国を中心とした多国籍軍がイラクを攻撃した湾岸戦争(1991年)前後にも流行した。
終末論の重要な構成要素は「米国・イスラエル陰謀説」だ。イスラム教の聖典コーランなどによると、終末の前に出現するのが「偽救世主」で、それが米国やイスラエルに重ね合わせられる。昨年10月に出版され、エジプトでは異例の10万部近い売り上げを記録した「ハルマゲドン」の著者でイスラム研究家のアミン・アルイッディン氏は「同時テロは、第3次世界大戦を起こすために米国とユダヤ人が計画した」と主張する。
荒唐無稽(むけい)なこうした言説が、アラブ社会では街で日常的に語られる。「英ダイアナ元妃の事故死はエジプト人イスラム教徒の恋人との結婚を阻止するために、英情報機関が仕組んだ」などとも信じられている。
「同時テロ犯のアラブ人は、米中央情報局(CIA)に雇われていたのさ」。そう真顔で語る会計士ウサマ・アムルーシさん(50)のような、高学歴の知識人層が陰謀説支持の中心にいるのが現実だ。
概して独裁的色彩の濃いアラブの政権は、陰謀説を自ら宣伝、あるいは黙認してきた過去を持ち、いまだにそうした傾向を引きずる。失政や無策から民衆の目をそらさせるために格好だからだ。
一方の民衆にとっても、「進まぬ民主化、経済の低迷など、内政への不満をやりすごす手段」(政府系週刊誌アルアハラム・アルアラビのマグディ記者)になってきた。
同時テロ直後、アラブ民衆からは、反米感情を背景に、テロは「天罰」と祝福する声もあがった。だが、その後、首謀者にウサマ・ビンラーディンが名指しされ、実行犯に19人のアラブ人が浮かび上がったことでアラブ社会は強い逆風に立たされた。
今のエジプト社会には、権力による陰謀説流布が息を吹き返した気配すら漂う。親米のムバラク政権は、反米的言動を取るイスラム宗教指導者を事実上の国外追放にするなど神経をとがらせているが、雑誌や新聞をにぎわす陰謀説には、沈黙している。
大統領警護隊司令官などを務めた国軍退役少将のムハンマド・ハラフ博士は、同時テロについて、CIA黒幕説を自著で主張。イスラム教スンニ派最高権威アズハル(カイロにあるイスラム最古の最高研究機関)のアリ・アルハサン師も「米国陰謀説は、アズハル共通の考えだ」と言い切る。
「物事のまともな分析能力を失わせている」。作家アブデルワハブ・マシール氏は、陰謀説の広がりにアラブの知的衰退を見てとるが、こうした冷静な声は、今のところ極めて小さい。
陰謀説には、19世紀以降、西洋列強にじゅうりんされてきた歴史、教育制度の不十分さなども影を落としており、根の深い問題だ。
同時テロ後、イスラム過激派の温床であるエジプトやサウジアラビアに対し、米メディアなどからの民主化の必要性が叫ばれた。権力者はこれを「理不尽な指摘」(エルバズ・エジプト大統領顧問)とはねつける。民衆は、民主化が進まないことへの不満のはけ口という面からも、ますます陰謀説や終末論に引き寄せられている。(カイロ 久保健一)
(2002年9月6日)
http://www.yomiuri.co.jp/attack/200209/a20020906_03.htm