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米中東軍は5日、イラクの首都バグダッド郊外に展開していた米軍の戦車を主体とする地上部隊が同市内に進撃したことを明らかにした。先月20日の開戦後、米軍がフセイン政権の中枢であるバグダッド市内に入ったのは初めて。市南部では、イラクの精鋭部隊「大統領警護隊」や「共和国防衛隊」などとの間で、激しい市街戦が続いている模様だ。米側はイラク兵約1000人が死亡したと明らかにした。一方、サハフ・イラク情報相は同日、米地上部隊がバグダッド中心部に迫っているとの情報を否定。ロイター通信なども市中心部に米兵の姿はないと報じており、米軍とイラク側の全面戦闘に発展したのかどうか、情勢はなお不透明だ。
【アッサイリヤ基地(カタール)田中洋之】米中東軍のソープ報道官は5日、バグダッド近郊の国際空港を制圧したばかりの米軍第3歩兵師団がバグダッド中心部に向けて進撃していると発表した。報道官は単なる偵察活動ではなく、本格的な首都侵攻作戦との認識を示した。
第3歩兵師団に従軍しているロイター通信や英BBCの記者によると、少なくとも20台の戦車と10台の装甲車がバグダッド南方から進撃し、市内を流れるチグリス川沿いにあるバグダッド大学近くに到達、フセイン大統領の主宮殿・共和国宮殿や政府官庁などがある市内中心部まで十数キロに迫っている。また、別の米軍地上部隊はバグダッド南西のサダム国際空港から東進し、市内に入った。南東方面から進撃中の米海兵隊も共和国防衛隊を撃破し、首都に迫っている。
これに対し、首都防衛にあたる共和国防衛隊の「アルニダ師団」などが砲撃などで応戦した。AFP通信は、米軍司令官の話として、バグダッド進撃に伴い、イラク兵士約1000人が戦死したほか、米軍の戦車がイラク軍の攻撃を受けて破壊され1人が死亡、数人が負傷したと伝えた。
ロイター通信は米軍筋の話として、バグダッドに入った部隊は市の南方約50キロ地点で、共和国防衛隊の「メディナ師団」司令部を制圧したと報じた。捜索活動の後、司令部を破壊するという。
これに対し、イラク軍がバグダッド南部に配置していた共和国防衛隊の第8、15旅団に市内中心部に移動するよう指令を出し、首都防衛体制を固めているとの情報を米軍筋は入手した。
また、米軍が制圧した首都南西約20キロにあるサダム国際空港では、イラク側との戦闘で滑走路に五つの穴ができており、米軍が修復工事を急いでいる。米軍は同空港をバグダッド攻略作戦の拠点にする構えだ。
一方、米軍はイラク中部カルバラでも攻略作戦を開始。同市を包囲していた地上軍が市内に突入したほか、共和国防衛隊施設やフセイン政権与党バース党支部に激しい空爆を加えた。英軍が包囲している南部バスラでは、地元のバース党指導部が降伏の用意を示しているとの情報もあり、イラク第2の都市が「無血開城」される可能性が出てきた。
【アンマン春日孝之、カイロ城島徹】イラクのサハフ情報相は5日、バグダッドで記者会見し、米地上部隊が首都中心部に進撃したとする米中東軍の発表について、「首都は完全にイラク政府の統治下にある」と否定した。
情報相は「(信じないなら現場に)実際に行ってみるといい。何もない。我々の検問所があるだけだ」と強調した。
また、米側が首都南西部のサダム国際空港を制圧したと発表したことについても「4日夜からの戦闘で撃退している」と反論。南部バスラでの過去24時間の戦闘で、米軍機1機を撃墜、戦車7台を破壊したと発表した。
一方、ロイター通信によると、現地記者の情報として、米英部隊はバグダッド中心部には到達していないと報じた。また、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、5日正午(日本時間午後5時)過ぎ、バグダッド市内中心部はふだんと変わらない様子で、記者は現地から「米軍進攻の形跡は一切ない」と放送した。背後に映された中心部の映像では道路を乗用車が頻繁に走り、交通規制など非常事態を受けた緊急措置の様子はうかがえなかった。
[毎日新聞4月5日] ( 2003-04-05-21:43 )
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20030406k0000m030081000c.html