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【アンマン=西島太郎】ヨルダンの首都・アンマンでは、出稼ぎに来た隣国イラクの人々が、激しい空爆が続く故郷・バグダッドへ帰ろうと、続々とバスに乗り込んでいる。「家族が心配だから」「戦いが待っているのか」――不安を乗せて、バスは東へと向かう。
ローマ時代の遺構・ローマ劇場に近い、アンマンの下町の一角。夕暮れの冷たい風が吹く中に1台の大型バスが止まっていた。ヨルダン国境に近いイラクの街・タラビ行きだ。
「開戦前は、バグダッドまで行っていたのだが、ヨルダン人の運転手が危険を恐れて、国境近くまでの運行になっている」
1日2便のバスを手配している旅行会社のモーゼル・ハバーベさん(35)は話す。
アンマンからバグダッドまでは約800キロ・メートル。直線距離で言えば東京から札幌までとほぼ一緒だ。乗客たちは、約5時間かけてタラビに向かい、そこでイラク政府のバスに乗り換え、さらに7時間揺られてバグダッドへ入る。運賃の5ヨルダン・ディナール(約850円)は、土木作業などに従事している多くの乗客たちにとって、日当以上の金額だという。
声高に話す人、腕組みをしたまま目をつぶる人。バラの造花が飾られたバスは、45人の乗客で満員だった。
前から3番目の座席に座っていたナイム・アブドルハムザさん(41)は、バグダッドに家族10人を残し、1年前にアンマンへとやってきた。
「空爆の中でも、家族の無事は確認できている。1年ぶりの再会になるからうれしいね」と、笑顔を見せたが、「帰ったら何をするか」と尋ねると、「家族を守るために戦うよ」と、表情をこわばらせた。
ナータク・カーシムさん(30)は、「日本には昔、神風が吹いたんだろう? きっと我々にも神が味方してくれる」と、まじめな顔で語った。大きな布団をバスのトランクに詰め込んだジャミル・アッビスさん(45)は、「家族が寒さに震えているみたいだからね。娘にはおみやげにスカートを買ったよ」。
発車間際になると、バスの周りは見送り客でいっぱいになった。扉が閉まりかけるたびに、何度も車内に入り込んで、抱き合う光景が続いた。
兄といとこの3人を見送った男性(23)は、「みんな戦うために戻ったんだ。誇りに思うけれど、つらいよ」と、目を潤ませた。
(2003/4/2/12:52 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030402id06.htm