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「欺き戦術」 指導者の信頼失墜狙う
連載:テロに襲われた世界(3)
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世界に広がるテロ組織に対抗するため外国報道機関にウソも流す――今年2月、米紙にそう報じられて廃止に追い込まれた米国防総省の「戦略影響局(OSI)」は、実際に何を計画していたのか。断片的に明らかになった内幕は、イスラム国の教育への干渉も含め、親米世論づくりをめざす軍の長期的な企てを浮かび上がらせている。(ワシントン=立野純二)
昨年の同時多発テロ後に新設されたOSIの存在は、そもそも公表されていなかった。ニューヨーク・タイムズ紙にリークした国防総省の高官は「彼らの報告を読んでいると、恐ろしくなる」と漏らしたという。その全容は今も機密扱いだが、一端をうかがわせる文書がある。
OSIを管轄に持ったファイス国防次官が今年4月、議会の上院軍事委員長に送った書簡だ。OSIを報道で初めて知った委員長が説明を求めたため、同省の法律顧問が内部文書を調べて報告書を出したものだ。
それにはまず、OSIは、「欺き戦術」を検討したと明記されている。「欺き」とは、第2次大戦時のノルマンディー作戦で連合軍が上陸場所をめぐる偽情報を流したような、軍事作戦上の情報工作を指すという。
ラムズフェルド国防長官は釈明会見でそうした例を説明して批判をかわそうとしたが、実際にはそれ以上の検討がなされていた。
報告書にある別の指摘は、「ある反米国家」リーダーの信頼性を損ねる情報を放送する計画を練った。これはイラクを意味するとみられ、フセイン政権打倒へ向けて同国内の撹乱(かくらん)を狙う情報発信の強化を狙ったようだ。
第3点は、OSIの次官補未満のスタッフが敵の偽情報を流す能力を抑制し、打ち消すことを協議した。ラムズフェルド氏はかつて「敵が汚いウソで反米をあおるのは見過ごせない」と語ったことがあるが、報告書のこの部分がどんな対抗策を意味するのかは不明だ。
戦争をめぐる偽情報活動は過去に数々あった。チャーチル英首相は「戦時下の真実はあまりに重要であるが故に、常にウソで守らねばならない」と語ったことが知られている。
86年のレーガン政権下で起きた「リビア事件」では、偽情報と知らずに語らされた国務省の報道官が抗議の辞任をする騒ぎにもなった。カダフィ大佐をだますために米政府が西欧や中東などの報道機関に偽情報を流すことを想定したとされる。テロ、空爆、政権転覆の要素は現在のイラク問題に通じる面も多い。
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◆OSI
昨年10月30日付で発足。ウォーデン空軍准将を代表に、職員19人。設立目的は「米国の目標への海外支援と、テロ組織との各国の絶縁を広げる情報戦略全域を練る」。国防総省は「(偽情報をめぐる)誤報により機能できなくなった」として2月末に廃止を発表した。
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◆米国の戦争をめぐる過去の「偽情報」
・44年=ノルマンディー作戦
連合軍は仏北部のカレー近辺に上陸するとの偽情報を発信、ドイツ軍を誘導。実際には別地点に上陸。
・64年=ベトナム戦争
「トンキン湾で駆逐艦が北ベトナム魚雷艇に攻撃された」と米軍が報告。米議会は大統領の戦争権限拡大を決議したが、実際は攻撃はなかった。
・86年=リビア対策
米政府がリビア撹乱を狙い、「リビアが大規模な対米テロ攻撃を準備」「反体制派が政権転覆を画策」と偽情報を流した。米主要紙は「米、リビアを爆撃か」と報じた。
・90年=湾岸危機
クウェートから脱出したとする女性が米議会で、「イラク軍は病院の乳児を放り捨て、保育器を略奪している」と証言。議会が武力行使を決議した後に、在米クウェート人による作り話と判明。
・91年=湾岸戦争
多国籍軍はクウェートの海岸からの上陸演習を実施。イラク軍部隊を海岸側に引き寄せたが、実際には西部の陸上から進攻した。
http://www.asahi.com/international/911terror/special04/020906a.html