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【アンマン小倉孝保】米軍当局はイラクの首都バグダッドの爆撃で、劣化ウラン弾を使用したことを認めている。どの程度の劣化ウラン弾が今回のイラク戦争で使用されているのか、実態は不明だ。しかし、湾岸戦争後のがん多発などの後遺症に悩むイラク市民や医師たちは、大きな衝撃を受けている。
イラク南部のバスラ・サダム教育病院に入院していた女子中学生、デラルさん(16)は昨年7月、脚の痛みに気づいた。次第に脚を引きずるようになり、骨がんと診断された。医師団は湾岸戦争の際に使用された劣化ウラン弾の後遺症とみている。
大きく腫れ上がった左足のひざを医師に見せながらデラルさんは「将来は学校の先生になりたいけど、これでは無理かな……」と不安な表情。付き添っていた母(46)は「娘をこんな病気にしておいて。また、戦争を繰り返そうとしている」と憤った。
イラク南部バスラの小児婦人科病院でジャセム医師(32)は「戦争の被害は一時のことではない。その後、将来にわたって罪のない人たちを苦しめる」と語り、同僚の医師たちも口々に「米軍には劣化ウラン弾は使ってほしくない」と話す。
イラク南部のバスラでのがん発生率は10万人当たり88年は11人だったが、98年75人、01年116人と急増。また、死者数は88年の34人から98年428人、01年603人と17倍となった。同じ家族内でがん患者が複数以上同時に発生したケースが約50件あり、医師の経験則からすれば「極めて異常な状況」という。
一方、米軍当局は26日の記者会見で、英米軍が劣化ウラン弾を使用していることを認めながらも「劣化ウランの使用は極めて少数」と説明した。さらに、「人体への影響は攻撃対象の極めて近くにいる場合だけ」と、一般住民への影響の可能性を否定し「科学的に(劣化ウラン弾とがんの発生などとの)因果関係が証明されていない」との立場を取っている。
世界保健機関(WHO)は01年1月から、イラク保健省と協力して劣化ウラン弾の影響についての本格的な調査に入った。しかし、調査は進まず、イラク側は「米国の圧力でWHOが調査に消極的になった」(ムバラク・イラク保健相)と批判していた。
サダム教育病院のがん治療センター長、ジャワッド・アリ医師(58)は「因果関係がはっきりしないとしても、その可能性が捨てきれないなら、これ以上劣化ウラン弾を使用する愚は犯すべきでない」と訴えている。
◇「民間人の被害拡大」と批判の声
劣化ウラン弾の使用は「第二の対人地雷」と言われるクラスター弾の使用とともに、「民間人の被害が拡大する」と国内からも非難の声が強まっている。
劣化ウランは、ウラン235を原子炉や核兵器に使うために濃縮する過程で生じる「核のごみ」で、他の金属に比べて比重が高い。貫通力に優れ着弾時に発火するなど破壊効果が高い。91年の湾岸戦争で米軍が使用した。99年のコソボ紛争でもNATO(北大西洋条約機構)軍が使用したが、使用後数年たって兵士や付近住民にがんや白血病などのさまざまな健康被害が報告され、劣化ウラン弾との因果関係が指摘される。
今回のイラン戦争では今後想定される戦車同士の戦闘などに多用される可能性がある。
コソボ紛争などでの被害を現地調査したNGO(非政府組織)「ピースボート」の中原大弐共同代表は「戦闘で使われれば、劣化ウランは砂ぼこりに交じって空中に舞い、兵士だけでなく民間人の体にも入る。米軍は民間人は攻撃しないと言っているが、戦争が終わって数年後に民間人に影響が出てくる。使用に強い怒りを覚える」と話す。
広島県原水協と同県被団協は27日、ブッシュ米大統領あての抗議文を米国大使館に送付。この中で「劣化ウラン弾は人体に与える影響が極めて大きい。このまま進めば、イラクの化学兵器使用、米国の小型核兵器使用という最悪の事態を招きかねない」と訴えている。 【宮澤勲】
[毎日新聞3月31日] ( 2003-03-31-19:34 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20030401k0000m030064000c.html