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砂かむ米との連携
苦悩のブレア首相
「祖国とそれを守る者に神の祝福あれ」。ブッシュ米大統領は、イラク戦争の開戦を告げるテレビ演説をこう結んだ。だが、もちろん米国だけが戦っているわけではない。米軍同様に英国兵士の死傷者も増えている。「ブッシュの戦争」ともいわれる砂嵐の戦場で、英国が抱えるジレンマとは。
「当初から心配されていたが、ここにきて米英軍の連携の悪さが目立ってきている」と軍事評論家の松井茂氏は話す。
米空母から空爆にバグダッドに向かった攻撃機が、爆弾を抱えたまま、燃料切れの危険にさらされて戻ってくる事態も起きた。「英軍機などが先に目標に攻撃していた」ためだ。開戦当初には、米国の地対空迎撃ミサイル「パトリオット」誤射による英軍攻撃機の墜落もあった。
■事前の連絡不十分だった
英紙によると、ブレア首相が米国から開戦を知らされたのはわずか二時間半前。一方的な通告ですでに帰宅していたという。
国際未来科学研究所代表の浜田和幸氏は「一部の報道ではブレア首相がブッシュ大統領に『アンフレンドリーだ』とクレームをつけたともいわれている」と話し、「米国にすれば、英国は世論に押されて『ひょっとしたらドタキャンするかも』という懸念があった。本当なら、事前に軍事コードなどを合わせて周波数などを綿密に打ち合わせておくべきだが、すりあわせが十分ではなかった節がある」とみる。
松井氏は「そもそも米軍の兵力はケタ違いで、米軍には『(英国軍は)付録でついてくる』という意識がある。米軍の幹部には実際に『英軍は足手まといだ』とまで言う声もある」と指摘する。
「例えば英国は、米軍のような無人偵察機を持たず現場の指揮官が、双眼鏡で監視している。湾岸戦争のときですら、米軍の空爆の主流がステルス戦闘機だったのに対し、英軍は地上二十メートルくらいの超低空飛行で爆弾を落とし、イラク軍の対空機関砲の犠牲になった。この間、軍事力の差は開く一方だ」と説明する。
「こうした違いを知る機会の少ない現場の若い兵士らはともかく、英軍の指揮官らはやるせない思いをしているはずだ」と話した。
しかも英軍の被害は少なくない。英海軍ヘリ同士の空中衝突などに加え、二十五日には、英戦車同士の誤った砲撃で兵士二人が死亡するという事故まで起きた。戦闘でも英軍兵士に死傷者が出ている。
こうした戦場での犠牲の一方で、早くも米国内では戦後復興関連事業をにらんで米企業が動きだし、英国内では「米国の独走を許すのではないか」と批判の声があがる。
■復興ビジネスも米独占
戦後復興事業では、第一号として、米エネルギー大手、ハリバートンの関連会社が受注したが、油田の維持・管理や、道路や学校などのインフラなど、第二次世界大戦後の「マーシャルプラン(欧州経済復興計画)」以来といわれる大規模な復興関連ビジネスは、米企業が独占するとの観測が強い。
英紙によると、英国企業各社は下請けに至るまで米国企業が独占するとの懸念を募らせており、「支持国については、米国から一定の決まった割合の受注が与えられてしかるべき」とブレア政権を突き上げる。
■人道援助も「米単独」で
復興や人道援助についても、英政府は国連決議を経て実施したいとの立場だが、ここに米国の新保守主義派(ネオコン)が「米国単独」を主張して立ちふさがり、思うに任せない状態だ。
国内では百万人の反戦デモや、ブレア首相の盟友、クック下院院内総務(前外相)の辞任に加え、開戦一週間で再び反戦論が高まりつつあるという。
二十五日に実施された英紙デイリー・テレグラフの世論調査は、前回調査(二十三日)に比べ、明らかに参戦への不安の色が濃くなったと伝える。
現在も56%が「正義の戦争」と考えているが、戦況がうまく展開していると答えたのは前回の20%から9%に半減。逆に「悪い戦争」と考える人は13%から26%に倍増した。
■『ブッシュと絶交せよ』メディア冷淡
何より「同士打ち」による自軍死傷者の増加に動揺し、四分の三が「事故を含めた戦死者が予想外に多いと感じる」と回答する。
こうしたムードを反映してか、大衆紙デイリー・ミラー紙は二十六日付で「恥の六日間」と題して社説を掲載した。
イラク南部バスラ攻略戦をテーマに「英軍は40%が子どもである六十万人(のイラク人)に対し軍事的標的と宣言した。水、食料、電力もカットした」とその反人道性に抗議。「英国大衆は戦争の現実で従来の見方を否定されつつある」と論じた。
さらに「ブレアの兵隊は乱暴者ブッシュの居眠りの間に進まされている」「真の問題はブレアの友人ブッシュにある」として、この「自分は最強で誰をも倒す」と強弁する男と絶交するよう厳しい調子で促した。
■「反戦運動」明確に報道
メディアが伝える「イラク攻撃」も米英ではかなり温度差があるようだ。
立教大の門奈直樹教授(比較マスコミ論)は「英BBC放送が今月七日に視聴者に向けて出した戦争報道のガイドラインでは、中立的な立場を強調している。例えば『わが軍』という表現は一切使わず『英国軍』と伝えている。実際、BBCをはじめとした英メディアは米国での報道ぶりに比べて客観的だ」と指摘する。
「昨年末から英国のメディアは、この戦争が米国の石油利権で動いていることを繰り返し伝えている。そのため英政府は『石油のための戦争であってはならない』と強調し、米国と同調しているが追従しているのではないとの姿勢を打ち出している」と説明する。
湾岸戦争当時、ロンドンに滞在していた門奈教授は「当時でも、空爆の映像などに『この報道は検閲されている』というテロップを流していた」と振り返り、「湾岸戦争時と今回のガイドラインで大きく違うのは、明確に国内外の反戦運動も伝えるとしていることだ」とした。
二十六日(現地時間)から、開戦後初めて、ブレア首相はブッシュ大統領と米キャンプデービッドで首脳会談を持ち、EUと米国の亀裂修復などについて話し合う。しかし、拓殖大学海外事情研究所の藤原豊司教授(EU問題)は、ブレア政権自体の今後を懸念する。「自国軍の被害が拡大したり、戦争が長期化すれば、米国以上に厭(えん)戦感は広がる。イラクで失敗したら、ブレア首相は終わり、そういう意味ではがけっぷちにいる」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030327/mng_____tokuho__000.shtml