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イラク戦争で、カタールの衛星テレビ局アルジャジーラが二十三日放映した米兵数人の遺体と戦争捕虜の映像は、自国軍の人的被害を最小限に抑えることを最優先目標としている米軍にとって「受け入れ難い」(アビゼイド中央軍副司令官)もので、大きな衝撃だ。
こうした米兵の被害映像は、過去の紛争でもテレビによって全世界に流され、軍事作戦そのものの遂行に少なからぬ影響を与えてきた。イラク側は今後もこの種の映像を最大限活用する戦術をとることが予想され、悪影響を抑え込もうとする米側との宣伝戦の攻防も激しさを増しそうだ。
他国の追随を許さない強大な軍事力を誇る米国がベトナム戦争に次いで負けたと言われるのが、一九九三年のソマリア紛争だ。“敗戦”のきっかけはCNNテレビによって米国の茶の間に飛び込んできた、首都モガディシオの路上を民兵らに引き回される米兵の遺体の映像。これで、米国内のえん戦気分が一気に広がり、米軍は撤退を余儀なくされた。
逆に米兵の被害が米軍の結束力を高め、士気を鼓舞した例もある。九五年、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦で、米軍は地対空ミサイルに撃墜され行方不明になった米軍機パイロットの救出作戦を敢行。ミサイル攻撃や銃撃の中を危機一髪で救出した模様は、後にハリウッド映画「エネミー・ライン」で描かれたように、まさに映画もどきで、国内世論にも好影響を与えた。
九一年の湾岸戦争では、女性二人を含む二十人以上の米将兵がイラク軍の捕虜になり、今回と同じような映像が流されたが、作戦遂行への影響は軽微だった。
米国にとっては「ソマリアの悪夢」の二の舞いを避けるのが命題。今回はアルジャジーラの映像が放映された直後に、ラムズフェルド国防長官が「捕虜の姿を公開するのは(人道的取り扱いを定めた)ジュネーブ条約違反」と、イラク側に反撃。「捕虜を虐待する者は戦犯として扱われる」とのブッシュ大統領の発言には、フセイン政権の残虐性を示す「証拠」として逆に利用しようという計算が働いているのは確かだ。
米メディアはこれまでのところ、この映像を国内で放映していない。米軍とともに参戦している英政府は映像を生の形で使用しないよう国内メディアに求めるなど、「映像イメージ」がもたらす影響に神経質になっていることを自ら認めた格好だ。(共同=沢井俊光)
(了) 03/24