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アラブ諸国はどうなる*2003年03月23日*中東コンフィデンシャル *アブ・ハバル
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投稿者 終電です。 日時 2003 年 3 月 25 日 03:58:30:



アラブ諸国はどうなる
アブ・ハバル
2003年03月23日

 アメリカ軍によるイラクに対する攻撃が始まる前、エジプトのムバーラク大統領はイラクとアメリカとの間に戦争が起こらないよう、エジプトは出来る全ての努力をしたと語った。そして戦争が始まるとムバーラク大統領は自国を守ることが最優先すると語っている。

 現段階でエジプトに対する直接的な脅威は何処の国からも考えられないにもかかわらず、ムバーラク大統領が自国防衛を口にしたということは、イラク戦争後にアメリカが起こすであろう第二第三のアラブ諸国への攻撃を意識してのものであろう。既にアメリカは直接間接、アラブの中の非民主的な国家に対する攻撃を含む内政干渉を口にし始めている。

 既に報告したように、元CIA長官であったウルジー氏はサウジアラビアとエジプトの民主化を強硬に進めることをアメリカ政府は考えている、と明かしている。述べるまでも無く、シリアやリビアも例外ではないし、イランもその候補となっていよう。

 そうしたアメリカのアラブ諸国に対する行動を阻止するには、国内の民主化の推進では間に合わないし、民主化の推進は困難を伴うことを知っている各国は、形式的な民主化を進める動きを示しながら、即効的効果を求め、アメリカに対する関係改善に動いている。

 エジプトの新聞がアメリカの攻撃を肯定し、「サッダームフセイン大統領がクウエイトに侵攻したことが今日の情況を作り出すきっかけになった、」とサッダームフセイン大統領を非難している。つまり、アメリカがアラブの多くの国に基地を持ち、軍事力を持て威圧することが出来るようになったのは、サッダームフセイン大統領がクウエイトに軍事侵攻し、湾岸の全ての国々がイラクに対する脅威を実感し、アメリカの保護を求めることになったのだというのだ。

 しかし、一方ではアラブの大衆はおしなべてアメリカのイラク攻撃に激しい怒りを露にしている。彼らはアメリカのイラクに対する攻撃は、十字軍戦争以外の何ものでもないと主張している。それはブッシュ大統領の十字軍戦争発言で明確になったとしている。もちろんアメリカの十字軍的発想によるアラブ敵視は、ブッシュ大統領が発言する前からアメリカ国内には存在している。

 アラブ大衆は自国政府のふがいなさと、アラブ連盟の結束の不確かさに対する不満を、アメリカ非難で解消しようというのだろうか。デモのような抗議行動とマスコミを通じた非難は殊更問題ではなかろう。しかし、これが今後に一定の範囲を超えて動き出した時、アラブ諸国政府はその対応に苦慮しようし、アメリカと同盟諸国も渦中に追い込まれることになろう。

 アラブの専門家は今回のアメリカのイラクに対する軍事攻撃の開始について、「アメリカがサッダームフセイン大統領の暗殺に失敗した結果だ」と主張している。これまでアメリカが長い期間イラクに対する軍事攻撃を起こさなかったのは、何とか戦争にいたることなくサッダームフセイン大統領の暗殺で事を終わらせようとしていたからだと言うのだ。

 確かに開戦の火蓋は、サッダームフセイン大統領がイラク政府幹部との会議を行っていた場所に対するものだった。そのタイミングも唐突なものであったことは間違いない。アメリカから伝えられている情報では、サッダームフセイン大統領の居所がCIAによってブッシュ大統領に伝えられ、ブッシュ大統領は30分で判断し、開戦と攻撃を決断したということだ。

 アラブの側からすれば、ブッシュ大統領による開戦決断は、多分に彼の気まぐれによるという印象を与えたようだ。こうしたアラブによるアメリカに対する認識は、今後アメリカがアラブに対して示すあらゆる立場に不満と疑念を抱かせることになろう。

 アメリカがパレスチナ問題の解決に対して示し始めた構想は、アラブ側からはニンジンを馬の口元につるすようなものだということになり、これはアメリカによるアラブへのアメと鞭の政策以外の何物でもないということになる。

 結局のところ、アラブ諸国政府はアメリカに何も言えず、アラブ間の連帯を強化してアメリカに対応することも出来ないことから、残る手段は宗教的エネルギーの活用と言うことになる。

 エジプトのアズハル大学のシェイク(学長)が、先に「イラクに対する攻撃が行なわれた場合、ジハードが成立する」と発表したが、この発言のあと間もなく戦争が始まった結果、シェイクルアズハルはジハード宣言を撤回している。それは多分にエジプト政府の意向を汲んでのものと思われる。

 アズハル大学は世界最古のイスラム学を専門とする大学であり、世界中のイスラム学権威者のほとんどがこの大学の卒業生であることから、アズハル大学のジハード宣言は大きな反響を世界中にもたらす危険性があるのだ。

 しかし、シェイクルアズハルのタンターウイ博士が後日、ジハード宣言を撤回したことは、先にも述べたようにエジプト政府による強い圧力の結果であると誰もが受け止めよう。そのことは既に放たれた矢と同じように、撤回されても何の効果も持たないものとなったということではないか。かつてイランのアヤトラホメイニ師が発した悪魔の詩の著者サルマンルシュデイを殺せと言うファトワは今日でも生きているのだ。同様にシェイクルアズハルによって発せられたファトワのジハード宣言は、今後も効力を発揮していこう。

 シェイクルアズハルが発したジハード宣言をめぐり、アズハル大学のイスラムリサーチセンターは十字軍戦争でないと修正したが、アズハル学者戦線組織のメンバーたち(アジャミ・ダマンホーリ代表)は、今なおアメリカによるイラク侵攻は十字軍戦争と主張し続けており、意見が対立したままだ。(シェイクルアズハルのタンターウイ師は3月18日にアルハヤート紙とのインタビューでジハードだと発言したが、その宣言を4日後に撤回している。)

 宗教的権威が政府の完全なコントロール下にあることが明確になった今、アラブのイスラム教徒たちは、組織的な抗議活動が政府の圧力によって困難を極めることを知り、個別にアメリカに対する抵抗をはじめていくものと思われる。結果的に、アラブ各国政府は一様に不安定さと危険さを抱え込んでいくことになろう。

 アラブ大衆による抵抗、敵対行動はアメリカを支持し支援する国々にも向かうということだ。日本の場合、戦後復興に協力するという立場を明確にしているが、その前にイラク攻撃をいち早く支持していることから、日本に対する敵対行動がアラブ諸国やイスラム諸国で起こることを想定し、対応を考えておくべきであろう。



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