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米政権「財政拡大」鮮明に、「双子の赤字」再燃懸念も
ブッシュ米政権がイラクとの開戦後、戦争を引き金とした景気失速の回避に向け、財政拡大路線を鮮明にしている。戦争で高まった挙国一致のムードを追い風に、大型減税を柱とする新総合経済対策の議会審議を加速させ、戦費調達のための補正予算編成にも乗り出した。だが、減税と戦費のダブルパンチで、財政赤字が一気に拡大する懸念は依然根強い。(ワシントン・天野 真志)
「戦争を遂行する一方で、成長の加速や雇用創出といった国内課題に取り組むことも重要だ」
大統領は21日朝、声明を発表し、戦争中も経済のかじ取りを怠らない姿勢を強調した。新経済対策を盛り込んだ予算決議案が、下院で同日未明に可決されたのを歓迎して出した声明だった。
今年1月に大統領が提案した新経済対策の議会審議は、財政赤字の拡大を心配する与野党議員の反発を受け、これまで遅れていた。
しかし、開戦翌日の20日、大統領はチェイニー副大統領、ジョン・スノー財務長官らに反対派の切り崩し工作を命じ、反対議員を直接説得するローラー作戦を展開した。その効果もあってか、下院は21日未明、予算決議案を3票の小差で可決した。
大統領が力を入れているのは新経済対策だけではない。大統領は開戦後、補正予算の編成方針を表明し、戦争で経営悪化が深刻化している航空会社への支援でも積極姿勢に転じた。
背景には、「開戦後、政権の主張に公然と異を唱えるのが難しい雰囲気になった」(民主党幹部)ことを絶好の機会ととらえ従来は財政悪化懸念から推進しにくかった政策を前進させる思惑がうかがえる。
ただ、同時に大統領の作戦はしたたかで慎重だ。
例えば、戦費調達が目的の補正予算案の提出は週明け以降に延ばし、補正に戦費をいくら計上するかは口を閉ざしている。
戦費規模に大統領が言及すれば、「巨額の戦費負担を強いられる米財政に大規模な減税まで認める余裕はない」(民主党のジョン・ブロー上院議員)とする反対議員を勢いづかせる事態を警戒している模様だ。
また、航空支援については、開戦前日にノーマン・ミネタ運輸長官が「必要が生じれば直ちに対応する用意がある」と発言して、直ちに支援策の検討に入った。航空業界は一昨年の同時テロ後、総額150億ドル規模の政府支援を受けており、特定の業界への再度の支援には反発が強かったが、開戦後なら救済しやすくなると読んでいたようだ。
だが、一連の財政支出拡大が、戦争の悪影響をやわらげて、戦後の安定成長に結びつくかは不透明だ。
新経済対策の審議も、下院では大統領案通り可決されたが、上院では財政規律重視派が巻き返し、21日午後には大統領案の減税規模を1000億ドルも減額して、その減額分を戦費にあてて財政赤字を抑制する修正案が可決された。
「赤字の野放図な拡大を許せば、将来にわたって禍根が残る」(民主党のトム・ダシュル上院院内総務)との不安が強いためだ。
米財政は2002年度に5年ぶりの赤字に転落し、政府予測では2003年度には3042億ドルと史上最高を記録する。予測にはイラク戦争の戦費は盛り込まれておらず、実際の赤字が予測を上回る公算は大きい。
しかも、すでに経常赤字は2002年に5034億ドルと史上最高を記録している。「双子の赤字」が長期金利上昇やドル安を招き、景気の足を引っ張り続けた80年代の悪夢の再来を恐れる声は高まる一方だ。
これに対して、政権側は「新経済対策がもたらす景気の本格回復に伴う税収増で、財政赤字は自然と解消する」(スノー財務長官)などと反論している。しかし、減税と戦争が生む赤字には事実上目をつぶり、戦勝をバネに再選を果たそうとする作戦が功を奏するかどうか、予断は許されない。
◆戦費1か月で500億ドル試算も◆
イラク戦争の費用については様々な試算がある。
米議会予算局(CBO)は、米軍を湾岸地域に配置する費用に140億ドル、戦費に最初の1か月で100億ドル、その後は1か月ごとに80億ドルずつかかると予測。さらに戦後も、米軍の撤収に90億ドル、イラク統治のための米軍の駐留費が毎月10―40億ドルかかる。
エール大のウィリアム・ノードハウス教授は、戦争が1か月で終わる場合でも戦費は500億ドル、戦後の駐留費に750億ドル、復興支援に250億ドルかかると試算する。戦争が8か月以上の長期の場合、戦費は1400億ドル、駐留費は5000億ドル、復興支援に1000億ドルかかるとしている。
多国籍軍が編成された湾岸戦争では、日本などが費用分担に応じ、米国の実際の負担は費用総額の2割ほどで済んだと言われる。イラク戦争では大規模な費用分担は外国に期待できず、戦費が米財政により重くのしかかるのは必至だ。