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【ワシントン藤原章生】米英軍による対イラク攻撃は巡航ミサイルによるフセイン・イラク大統領直撃と軍事施設破壊を主目標にしながら展開されているが、一般市民の犠牲は避けようがない。後半、軍事作戦がバグダッドを舞台にした市街戦に持ち込まれれば「最悪で米兵数千人が死亡する」との見方もある。米英両国の軍事関係者に作戦の行方を聞いた。
ペンシルベニア州の米戦争大学で米将校らに戦略論を教える米軍大佐、ジョゼフ・ヌネス教授(47)は「バグダッドの市街戦に向け、実戦経験のある特別部隊が充てられる。だが、彼らにとってもバグダッドでの戦闘は、初めての戦闘時以上の極めて難しいものになる」と、ハイチなどでの実戦経験を振り返り、今回の軍事作戦の難しさを語る。
湾岸戦争とは違い、今回は従軍記者が地上部隊にも多数随行しており、戦闘の模様が即座に米国民に届く。無謀な作戦を強行できないのも、作戦遂行の障害になる可能性が大きい。
「市街戦が長引き、米兵、イラク人らに多数の死者が出るのを何としても避けたい。それが米軍上層部の本音だ。だが場合によっては、我々がもう長く経験していない米兵の多数犠牲という事態は起こりうる」と教授は言う。
米軍情報に詳しい英国籍の軍事アナリスト、デレク・フレミング氏(43)によると、初期の空爆で半数をはるかに上回るイラク兵が投降するという。だが5万とも6万とも言われるフセイン大統領の護衛部隊、「共和国防衛隊」は残り、最終的にバグダッドに集中し、フセイン大統領を捜索する米軍を迎え撃つことになる。「米軍は大きな通りでは戦闘ヘリなど空からの援護が得られる。しかし、路地や縦横に張り巡らされた地下ごうにしらみつぶしに進軍すると、防衛隊との接近戦で米の死者は数千人に達する」と同氏はみる。
市街戦を避ける手は一つしかない。ブッシュ政権が19日夜の開戦宣言前に放ったように、巡航ミサイルや空爆でフセイン大統領を直撃することだ。
米軍は衛星からの探知に加え、電話、無線盗聴を通じ開戦前から大統領の居場所を常に追跡してきた。しかし、それもフレミング氏によれば「20平方キロ以内」の精度でしか把握できていない。さらに、米軍はバグダッドの地下ごうの図面や兵員の動きを完全には掌握しておらず、大統領直撃は容易ではない。
米軍のフランクス中東統合司令官は開戦前の記者会見で、市民の被害はハイテク兵器により極力減らせるが多少の犠牲はやむを得ないと語った。その言葉に従えば、米英軍は開戦初期、標的選択に細心の注意を払う。だが、フセイン大統領の居場所をつかめずじりじりと日数が過ぎればどうなるのか。
湾岸戦争当時1発120万ドルだったトマホークのコストは現在、大量生産により2万7000ドルに落ちたと言われる。「使用兵器を選ぶ際、重要なのは兵器の攻撃効率と経済コストだ」とヌネス教授は言う。「初期の空爆は9から12日間」(米国防総省筋)。湾岸戦争時の38日間に比べれば短期で済むとみられるが、その分、短期間にかなりの巡航ミサイルがバグダッドに撃ち込まれることが予想される。コソボ紛争の際、ベオグラードの中国大使館や民間施設が誤爆されたように、米軍の空爆でバグダッド市民が多数巻き込まれる危険は十分ある。
[毎日新聞3月22日] ( 2003-03-22-10:01 )