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【アンマン小倉孝保】圧倒的な軍事力でイラクへの攻撃を本格化させた米英軍に対し、イラク側はクウェートへのスカッドミサイル発射などで抵抗をみせる。だが、フセイン大統領は当初から、首都バグダッド、中部のティクリート、北部の油田都市キルクークの3拠点地域に戦力を集中させて迎え撃つ構えとされ、消息筋は市街戦に持ち込むため米英軍をおびき寄せる作戦を取るとみる。だが、南部では今後、イラク軍兵士の大量投降も伝えられ、政権内部に動揺を与える可能性もある。フセイン大統領は米英軍と対じしつつ、政権に批判的な国民の反乱を警戒せざるをえないという困難な対応を迫られている。
湾岸戦争(91年)以降、米英が北緯33度以南に設定した「飛行禁止空域」では、米英軍が普段から偵察飛行を続け、イラクの軍事施設を空爆してきた。このため、元々、南部にイラク軍の兵力を集結させることは事実上不可能だった。このため、南部での抵抗はそれほど激しいものにならないとの見方が濃厚だ。
また、長引く国連経済制裁で、イラクは兵器や関連部品の輸入は禁止され、制裁前から保有していた旧ソ連製兵器などを補修しながら使用しているとされる。周辺国からの物資補給も難しく、専門家は兵器の5割は使用できない状態とみている。
こうした制限の下、フセイン大統領はバグダッドなど戦略的に重要な3都市の防衛を優先させることにした模様だ。一般の国軍に比べ、はるかに給与面などで厚遇され士気が高いとされる精鋭の共和国防衛隊約2万人ははバグダッドなどの周辺に配置され、主に大統領と家族らの防衛に当たる。バグダッドにはアラブ・イスラム諸国から、アフガニスタン戦争やチェチェン紛争を経験したイスラム聖戦士(ムジャヒディン)数百人が入っているとされ、ゲリラ戦を展開する可能性もある。大統領は接近戦で米英軍に大量の犠牲者を出させ、戦闘の長期化を狙う可能性が高い。
だが一方で、フセイン大統領が直面しかねないのは、湾岸戦争(91年)以来、国内にうっ積する国民の反政府感情だ。イラク軍兵士の大量投降などの情報を外国からの短波ラジオ放送などで逐一入手している国民が、政権崩壊の余兆を感じとれば、元々、反政府感情が強いイスラム教シーア派住民が住む南部やクルド人が住む北部で、国民の蜂起や暴動を誘発する可能性もある。
こうした主要都市で市民が独裁体制からの「解放」に歓喜する情報があれば、バグダッドなどの住民にも米英軍への無駄な抵抗を嫌う感情が芽生えるのは確実だ。そうなれば、戦局を長引かせ、国際世論の反戦気運の盛り上がりや国際社会の停戦努力の高まりに期待する大統領の基本戦略は崩れ、政権を大きく揺さぶりかねない。
[毎日新聞3月21日] ( 2003-03-21-22:34 )