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イラクのサダム・フセイン大統領はブッシュ米大統領の最後通告を拒否し、戦争回避という希望の灯は、もうほとんど消えかけている。いざ開戦となった時、イラクは、圧倒的な軍事的優位を持つ米英軍相手に、どこまで戦えるのか?(アンマン・島田佳幸)
■ダメージ
四方に陣取った米英のハイテク軍団を相手にイラク軍を指揮するのは、厳冬のチグリス川を泳いで渡るのより、はるかに無謀なことだ。
湾岸戦争(一九九一年)、それに続く国連経済制裁、さらには、既に「湾岸戦争の最初の一週間分が終わったぐらい」(軍事専門家)といわれる、飛行禁止空域(イラク南北部)での米英軍の空爆で、受けたダメージは大きい。ミリタリーバランスや米中央軍の資料によると−。
陸軍
湾岸戦争時に百万の現役兵力を擁したが、現在は三十五万人程度。二千両の戦車、三千両程度の装甲車のうち、使用可能なのは四−五割(九八年時点)。
空軍
湾岸戦争前には四十一の飛行中隊に、戦闘機は約七百機を有したが、今は十七中隊に三百機程度(二〇〇一年時点)。
海軍は、ないに等しい。
戦車や戦闘機、ミサイルの類も旧ソ連製が主流で、「骨とう品」と呼ぶ専門家さえいる。
■エリート
米軍は、最初の四十八時間で三千発の精密誘導弾を降らせるなど、緒戦で激しいショックを与える戦略とされるが、それは、士気の低い兵士たちを降伏や敵前逃亡に導くのが狙いだ。
たいていの米英の戦力分析では、規模の上では主力のはずの通常軍は、ほとんど計算外。徴兵制で賃金も装備も訓練もレベルが低く、肝心な士気も低いとされるためだ。多くが政権の抑圧の対象であるイスラム教シーア派という点も大きい。
「サダム・フセイン」(アンドリュー・コックバーン氏の共著)によると湾岸戦争で、イラクは二千百両の戦車を失ったが、破壊されたのは10%だけで残りは逃走した兵士たちが放置していったものだったという。
フセイン大統領が頼りにしているのは、志願者で構成する共和国防衛隊(RG、約五万人)と、共和国防衛隊特殊部隊(SRG、約一万人)。
特にフセイン大統領の二男クサイ氏の率いるSRGは、イラクとしては最新鋭の装備で、大統領の出身地ティクリートの地縁血縁関係者を軸に構成されているだけに、フセイン体制への忠誠心がずばぬけて高いといわれる。SRGが首都バグダッドの防衛を任せられていることでも、その重要性が分かる。
■民 衆
大統領が描くのは、約五百万人が住む首都バグダッドを舞台にした市街戦に米英軍を引きずり込む戦略だ。アラブ紙アルハヤトによると、大統領は軍に「砂漠で砲弾を撃つような無駄をさせず、市街戦に集中せよ」と指示したという。
市街戦になれば、戦闘は長期化、米軍のハイテク面での優位も低下する。SRGなどの精鋭によるゲリラ的な攻撃で、米軍に大量の死傷者を出せば、ブッシュ大統領も戦争継続が難しくなる−と、読んでいるようだ。
逆に、国際世論を沸騰させるため、イラク軍が米兵になりすまして自国民を虐殺、それをアルジャジーラなどのアラブ・メディアによって世界に伝えさせる−といった極端な推測も、米英メディアには散見される。
当局者によると、国民には七百万丁のライフルが配られている。自前で持っている人も多い。イラク指導部は「すべての家が軍事基地になる」と強調する。米英軍か、抑圧者であるフセイン政権か、民衆の銃口がどちらの「敵」に向けられるのか。米英軍の描く早期決着はそれ次第だ。