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ブッシュ米大統領がフセイン政権打倒のためにイラク攻撃に踏み切った。「短期終結−米軍完勝」というシナリオを描いているが、イラクも徹底抗戦の構えで、米側の思惑どおりに進む保証はない。戦争が長引いたり、米軍側の被害が大きければ、米国内の反戦世論を増幅させ、政権基盤が大きく揺らぐ。大統領選を来年に控え、その際、フセイン政権が健在であれば、再選戦略に赤信号がともる。ブッシュ大統領は危険な賭けに出た−。
(ワシントン・豊田洋一)
■予防線
「戦争はいくつかの予想よりも長く、困難なものになるかもしれない」
ブッシュ大統領は十九日の開戦宣言で、戦争長期化の可能性にわざわざ言及した。
イラク周辺地域に展開している米英軍は合わせて二十八万人。緒戦は大規模な空爆で防空・通信施設を徹底的に破壊し、続いて地上軍が一気に首都バグダッドを陥落させる戦略とみられる。
イラク軍は装備が旧式化し、士気も低いとされるが、追いつめられれば生物・化学兵器など、大量破壊兵器を使用する可能性もある。使われれば米軍に大きな被害が出るのは間違いない。
一方、大統領は「軍事的に重要な選ばれた目標」を攻撃したと強調し、一般市民の被害を最小限に抑える方針を示したが、米英軍の攻撃が激しくなれば、市民の巻き添えは避けられない。
大統領が戦闘長期化の可能性に言及したのも、「短期終結−米軍圧勝」の楽観論を戒め、今から予防線を張っておく狙いがある。
とはいえ、戦闘が泥沼化し、米兵とイラク市民の犠牲を最小限に抑えることに失敗すれば、大統領の威信が低下し、国内外で批判が高まるのは必至。これまで高止まりしていた大統領支持率が落ち込む事態になれば、大統領再選に暗雲が漂う。
■負担
米国の思惑通りに戦争が短期で終結したとしても、戦後のイラク駐留費用、復興支援費用は総額数千億ドル(数十兆円)に上るとの試算もあり、米国に重い負担がのしかかる。フセイン政権による油田破壊が現実となれば、数十億ドル規模の修復費用も上積みされる。
一九九一年の湾岸戦争では、日本や湾岸諸国を含む幅広い連合が戦費を分担し、米国の負担は総額の一割程度で済んだ。
しかし、同盟国の中でもフランス、ドイツなど富裕国の反対を振り切って開戦に突き進んだ今回は、米国の負担割合は多くならざるを得ない。その結果、財政は圧迫され、失速傾向にある米国経済をさらに悪化させるマイナス要因になる。戦争が長期化すれば、その影響はより深刻だ。
父親のブッシュ元大統領は、湾岸戦争に勝利したにもかかわらず、その後の経済低迷が原因で、一九九二年の大統領選でクリントン前大統領に再選を阻まれた。
ブッシュ大統領が対イラク戦に勝利し、フセイン打倒の悲願を達成しても、戦争の経済に対する打撃が深刻だと、親子で同じ失敗の轍(てつ)を踏むことになる。
■逆風
ブッシュ大統領は今回のイラク攻撃で、大量破壊兵器から米国を守るためには、実際に攻撃を受けていなくても、先制攻撃で脅威を排除するという「国家安全保障戦略(ブッシュ・ドクトリン)」を初適用。武力行使を容認する新しい国連安保理決議抜きで、攻撃に踏み切った。
しかし、こうした米国の行動は、国際社会から「国連憲章違反」との激しい反発にさらされており、米国の新戦略が、冷戦後の新しい安全保障理論として国際的に受け入れられる可能性は低い。
さらに、決議案をめぐる協議を一方的に放棄する形で打ち切ったことは、国連の分断を招き、亀裂は決定的になった。
ブッシュ政権は、冷戦後の国際社会で、かつてないほどの逆風にさらされている。世界各地で反米感情が強まり、米国の孤立が決定的になれば、大国を率いる大統領としての適格性に疑問符がつくことになる。