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2003/03/20
「見えない戦争」と言われた湾岸戦争(91年)の反省から、米国防総省は米国を中心に約600人の報道関係者に「エンベッド」(埋め込み)と呼ばれる従軍記者を初めて認めた。現在は比較的自由な報道が許されているが、イラクに対する開戦後、当局とメディアのさまざまな駆け引きも予想される。この戦争取材のあり方について現地から報告する。
■米国内−−規制求める声
米メディアは連日、「エンベッド」取材の記者たちが送る前線ルポを競って報じている。その中で、米ABCテレビが10日に放映したルポを契機に共和党の下院議員らが取材規制を求める書簡をラムズフェルド米国防長官に出す騒ぎに発展している。
下院議員らが問題にしているのは、ABCの看板キャスター、ピーター・ジェニングス氏によるクウェート駐留米兵らに対するインタビューだった。共和党のクリフ・スターンズ下院議員(フロリダ州選出)は「(ジェニングス氏の)質問は、犠牲者が出たり、敵が反撃してきた仮定の状況に焦点をあて、兵士らに最悪の恐怖について考えさせるものだった」と述べた。米兵の恐怖をいたずらにあおり、士気に悪影響を与えかねないというのだ。
同議員は14日、趣旨に賛同する同僚の下院議員11人と連名で「エンベッド」方式の従軍取材への懸念を表明する書簡をラムズフェルド国防長官に送った。
書簡は「エンベッド計画の基本的な考えは理解できるが、質問は不適切だった。戦争に犠牲は付き物だが、若い兵士らが記事のためにそうした可能性を思い出させられる必要などない」として、報道内容が作戦に影響しないかを事前にチェックする安全確認検査(セキュリティーレビュー)や検閲がなぜ行われないのか見解を示すよう求めている。開戦後、エンベッド取材をめぐる米国内の論議は、さらに広がる可能性もある。【ワシントン佐藤千矢子】
■空母−−「異常なほどオープン」だが…
◇開戦後は不透明
ペルシャ湾に展開する米空母キティホークでは米英仏、そして日本など各国の取材記者約30人が従軍取材を続けている。軍事機密を除く情報へのアクセスにはかなりの自由が確保され、開戦前の時点でのメディアの反応はおおむね良好だ。
米海軍取材を20年以上続け「USAトゥデー」など米各紙に記事を送る海軍情報紙「ネイビータイムス」のマーク・ファラム記者(43)は今回のエンベッド取材の情報公開度について「よそ者を受け入れない米海軍の伝統からすればキティホークは異常なほどオープンだと思う」と語る。
実際、作戦行動や立案に直接かかわる幹部士官や、戦闘機のパイロット(広報同伴での取材は可能)を除けば、ほぼ制約なく取材可能である。だが記事や放送の内容は広報担当者が細かくチェックし、士官用食堂でのパイロットとの雑談内容を無断で記事化して注意を受けたメディアもある。戦闘指令室など機密部分についての取材は軍上層部の認可を前提に取材を認めるはずだったが、開戦が近づいたためか、いまだに実現していない。
広報担当のブルック・デウォルト大尉は「今後も情報アクセスを確保するよう努力する」と前向きだが、開戦後の作戦内容や評価、誤爆などの不慮の事態への対応など現段階では評価不可能な部分も多い。空爆作戦の機密と安全確保のため「開戦時には作戦機の帰艦まで衛星通信システムを停止する」との通告も受けており、状況に即した報道が可能かどうかも微妙な情勢だ。【米空母キティホーク艦上(ペルシャ湾北部)井上卓弥】
■前線司令部−−情報は発表中心
「何をしてる。ここは撮影禁止だ」。18日、カタールの首都ドーハの国際空港に隣接する米軍基地「キャンプ・スヌーピー」近くの道路にタクシーを止め車内から米軍輸送機の写真を撮っていたところ、監視の米兵が遠くから叫んだ。慌ててその場を離れたが数時間後、地元警察がタクシーの居場所を割り出し、運転手は事情聴取された。
米軍の前線司令部が置かれるドーハ郊外のアッサイリア基地内のメディアセンターでは開戦後、フランクス米中東軍司令官らが「戦果」を連日発表する予定だ。湾岸の小国が世界に向けた米軍の“情報発信拠点”となる。報道担当のソープ米海軍大佐は「取材の便宜は最大限図る」と話す。
しかしセンター以外の基地取材は制限され、中東で最長の滑走路を持つ近くのアルウデイド空軍基地も非公開のままだ。【ドーハ田中洋之】
■陸上司令部−−当局者取材困難
米軍の地上戦を統括する「合同軍陸上司令部(CFLCC)」(クウェート市郊外)に登録された記者は、18日現在約2100人。うち約500人はワシントンの国防総省で事前登録した従軍記者だ。前線部隊の取材はこの従軍記者だけに限られ、一般の記者はクウェート市北方の検問所で止められることになる。
クウェート市内では市民への取材は自由。しかし、当局者への取材は情報省のプレスセンターに手紙を出し、何日もかかって許可を得る必要がある。市内各所で警備にあたる国防軍の兵士は「テロを防止するため」(情報省)との理由で、撮影が禁止されている。【クウェート市・大木俊治】
転載元
http://www.mainichi.co.jp/news/article/200303/20i/042.html