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哲学クロニクル 第360号
(2003年3月20日)
アメリカの失敗
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ついに開戦になりました。ため息をつくばかりです。
昨日は、コエーリョの「ありがとう、ブッシュ大統領」を配信する準備をしてい
たのですが、朝日新聞に先取り(笑)されました。痛烈な皮肉が楽しいエッセーで、
お勧めです。
仕方ないのでルモンドの社説から。
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アメリカの失敗
ルモンド紙社説、2003年3月18日
あるいはアメリカが望んでいる最善のシナリオに従って、ことは進むのかもしれ
ない。3月17日のブッシュ大統領の最後通告の圧力で、イラク軍がクーデターを
起こし、アメリカ軍はイラクに「平和に」侵攻できるかもしれない。しかし保証
はまったくない。さらにこのシナリオが実現するかどうかにかかわらず、われわ
れは次の事実から目を背けることはできない。アメリカとイラクが国連の支持な
しに、完全に一方的な形でイラクとの戦争を始めるということは、ブッシュ政権
にとって、恐るべき外交政策の失敗だということである。
ワシントンでは国連の威信が傷ついたと語られているが、それよりも傷ついたの
は、アメリカ合衆国の政治的な威信である。アメリカの道徳的な権威が傷ついた
と言うべきだろうか。アメリカがかけた圧力にもかかわらず(あるいは圧力のた
めに)、安全保障理事会の政治的な(司法的なものではない)過半数の9か国の
賛成票を獲得することはできなかった。
フランスかロシアが拒否権を行使したにせよ、過半数を獲得していれば、これは
大きな意味をもっただろう。たしかにサダム・フセインに対する戦力の行使を認
可する決議案の採決には不十分だっただろうが、それでも安全保障理事会の過半
数の諸国が、アメリカのやり方を支持していることは示すことになっただろう。
しかしそうはならなかった。アメリカ合衆国は説得できなかったのである。ブッ
シュ大統領は13日に、1930年代のナチスと比較する議論をしていたが、これは陳
腐で、根拠のない類比であり、まったく説得力がなかった。サダム体制は、ヨー
ロッパの全体に大きな脅威となっていた第三帝国に類比できるものではないし、
その力も野心もない。このような類比に訴えたりすれば、大量破壊兵器の拡散を
防止するという大義に、疑念が生まれざるをえなくなる。
この件が始まってからというもの、アメリカ合衆国は国際世界にとって絶対に優
先すべき問題に関して、イラクの危険性が現実的であることも、差し迫ったもの
であることも証明していない。そしてフランスとロシアの主張は軽蔑しているよ
うな態度を示していた。そしてフランスとロシアは、金儲けにしか関心がないと
言うのである。しかしフランスやロシアの主張は、大多数の諸国がつねに支持し
ていたのである。イラク政府の責任者が、はっきりとした結果を示してみせると
公式に発言している状態で、軍備解除プロセスを中断してはならないのである。
アメリカ政府は、フランス政府の意図が揺るがないものであることを見誤った。
そしてこの件についてのトルコの姿勢を見誤った。アメリカ国内を含めて、世論
の動向を見誤った。国連の安全保障理事会の「小国」に圧力をかけて、同調させ
ることができると見誤った。アメリカ合衆国は国連が、ずっと前から決定されて
いる戦争に、たんに承認のはんこを押す役割に甘んじるだろうと、見誤った。
そしてアラブの一国との戦争に入る直前になって、突然に、しかも偶然のように、
イスラエル紛争を懸念するかのような姿勢をみせても、その議論が正当化される
わけではない。このような姿勢は逆効果なのだ。イラクとの戦争という不幸な冒
険が、どのような成り行きになるかは別に、こうした姿勢は、この政治的・外交
的に明白な失敗を、言い繕おうとするものにすぎない。
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ポリロゴス事務局
chronicle@nakayama.org
(c)中山 元
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哲学クロニクル
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