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小泉純一郎首相の２０日午後の記者会見での発言要旨は次の通り。
１時間ほど前、アメリカ、イギリスはじめ同盟国がイラクへの武力行使を開始したという報告を受けた。日本政府の立場を明らかにして国民の理解と協力を得たい。
今回のイラク問題は、１３年前、イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争に端を発している。この湾岸戦争でイラクは停戦協議を受け入れた。アメリカはじめ多国籍軍がクエートを解放し、イラクが大量破壊兵器を廃棄することを条件に停戦となったが、１２年間にわたってイラクは停戦決議を守ってこなかった。また、十分に協力してこなかった。再度、昨年１１月、国際社会は一致結束して、イラクが大量破壊兵器、化学・生物兵器の即時、無条件、無制限の査察に協力し、誠意を示すべきだという決議を国連で採択した。
日本政府はこれまでもイラクに対しても、アメリカ、イギリス、フランス等に対しても平和的解決が最も望ましいと、そういう努力を最後まで続けるべきだと訴えてきた。しかし、事ここにいたって、残念ながらイラクはこの間、国連の決議を無視、軽視、愚ろうしてきた。十分な誠意ある対応をしてこなかった。私はこの際、そういう思いから、米国の武力行使開始を理解し、支持する。
一昨年９月１１日のニューヨークでのテロ事件などにより、世界の多くの人々が大量破壊兵器に対する脅威を強く認識し出した。戦争に対する観念が変わってきた。
大量破壊兵器に対する脅威をどのように取り除くかということが、今までの国際社会の大きな課題だったと思う。一昨年のニューヨークや米国のペンタゴンなどでのテロ事件は、大量破壊兵器（を使用したもの）ではなかった。民間航空機を武器にするという今まで予想し得ないことが発生した。それによって、何ら関係のない罪もない多くの数千人にわたる市民が犠牲になった。多くの国民が、なぜ自分たちがこのような非道な行為によって命を落としたり、多くの損害を受けなければならないのかと思ったと思う。
危険な兵器を危険な独裁者に渡したら大きな危機に直面するということは、すべての人々が感じている。これをどのように防ぐか、これは全世界の関心事だ。最後まで平和的努力続けなくてはならないと思いつつも、残念ながらそれに至らなかった。武力で圧力をかけないとイラクは協力してこなかった。しかもかけ続けても、十分な協力をしてこなかった。
ブッシュ大統領は「これはイラクの武装解除を求めるものであり、イラク国民に対する攻撃ではない」と言っている。「イラク国民に自由を与え、将来、豊かな生活を築き上げる作戦だ」と言ってる。私もそうだと思う。
日本としてもブッシュ大統領の方針を支持する。日本が戦後発展してきた基本方針で最も重要なことは日米同盟関係と国際協調体制を堅持していくことだと思う。日本は第２次世界大戦の反省から、二度と国際社会から孤立してはならない。国際協調体制を図りながら発展を図る。同時に日本の安全確保するため、日本一国だけでは防衛は不十分だということから米国と安保条約を締結して、同盟関係を堅持することによって日本の安全を確保をしてきた。今後も国民の安全と、日本の繁栄、発展を図るために国際協調堅持していくことに変わりない。
残念ながら武力行使せざるをえない状況に立ち至ったが、この武力行使が速やかに終結し、できる限り犠牲を少なくする努力をしつつ、日本としても対応したい。
日本は米国の立場を支持しているが、一切武力行使しない。戦闘にも参加しない。しかし、今後もイラク国民のため何ができるか、イラク復興のために何が必要か、アラブ諸国との友好増進をどう図り、イスラム諸国の理解、協力をどう深めるか。その点で国際社会と協調しながら、国際社会の一員として責任を果たさないといけないと思う。
日本に対してもいつ脅威が降りかかるか分からない。アメリカは、日本への攻撃はアメリカへの攻撃とみなすと明言しているただ一つの国だ。このこと自体、日本を攻撃しようと思ういかなる国にも大きな抑止力になっていることを忘れてはならない。一時的に全世界の協調体制が取れなかったとしても、必ず多くの国が世界の平和と安定と繁栄のため、国際協調の必要性を痛感すると思う。そのためにも日本は日米同盟と国際協調の両立を図る方針だ。
北朝鮮との関係については昨年９月１７日、北朝鮮を訪問し、日朝平壌宣言を発表し、現在の不正常な関係を終わらせることを確認した。この方針は現在も変わりない。北朝鮮との交渉は停滞しているが、宣言の精神を尊重し、誠実に実行に移し、不正常な関係を友好関係に変える。宣言の発表は成果だと認めている。今後も北朝鮮との交渉を進めて、将来の正常化のために、今後の交渉を進展させたい。
どういう形で復興支援がなされるか、国連等がどのような対応を求めてくるか、今の時点ではっきりしたことは言えないが、人道支援、難民支援、復興支援等、日本としては当然していくべきだと思っている。イラクの状態がどのように変わっていくかも今の時点では想定しにくい面もある。しかし、戦後の復旧・復興支援、地域の人道的支援について、新法を必要としなくても（できることが）ある。新たに法律を作らないと支援ができない状況がくるかどうか、はっきり言うことはできないが、必要なら国会に図らなければいけない。イラクに対する復興支援については責任ある対応していきたい。
日米同盟と国際協調は両立できる。日本の安全を確保するうえで、日米同盟は不可欠だ。同時に日本の発展を考えると国際協調は不可欠だ。イラクの復興についても国際協調体制をとる方がいいと思っている。
圧倒的多数の人が武力行使に反対だという気持ちは分かる。私も戦争か平和かと言えば、平和だと言うに決まっている。戦争は嫌いだ。戦争は避けたい。戦争ほど残酷なものはないと思う。しかし、いろんな国際決議を無視し続けてきたイラクの状況を見ると、また危険な破壊兵器を危険な独裁者が持った場合の脅威に対し、どうするのかと考えると、今回の米国の立場も理解できるし支持するのが国益にかなうと決断した。私は時間がたつにつれて政府の立場を国民も理解していただけるんじゃないかと思う。今後もいろんな機会を通じて、国民に働きかけていきたいと思う。
［毎日新聞３月２０日］ ( 2003-03-20-14:16 )
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。