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哲学クロニクル 第359号
(2003年3月18日)
一発勝負にでたブッシュ(2)
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さて、ブッシュが失敗したらどうなるか、ウォーラーステインの予測は具体的で
いろいろと考えさせてくれます。
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一発勝負にでたブッシュ(2)
(イマヌエル・ウォーラーステイン http://fbc.binghamton.edu/109en.htm)
しかし短期間で軍事的な勝利が収められなかったと想定してみよう。その場合に
は、作戦の全体がアメリカにとって、地政学的な災厄になってしまう。大混乱が
発生し、アメリカは将来の成り行きをほとんど左右できなくなる。まずイラクで
一体何か起きるか、考えてみてほしい。イラクが抵抗したことで、サダム・フセ
インは英雄に祭り上げられる。フセインは、こうした大衆の感情をどう利用すれ
ばよいか、よく知っているはずだ。
イランとトルコは、北部のクルド族の地域に派兵するだろう。そしていずれは両
国の間で戦闘が開始されるのではないか。クルド族は当面は、イラン側につくだ
ろう。その場合には、イラク南部のシーア派グループが、アメリカの軍事活動か
ら距離をおくに違いない。サウジアラビアが歓迎されざる仲介者となろうとして、
双方から拒絶されるに違いない。
この地域のどこかで、シーア派の民兵組織のヒズボラが、イスラエルを攻撃する
だろう。イスラエルは反撃し、レベノン南部を占領するだろう。その場合、シリ
アは参戦して、ヒズボラを、あるいはレバノンでのヒズボラの役割を救おうとす
るだろうか。十分に考えられることだ。しかしその場合には、イスラエルはダマ
スカスを爆撃することになるだろう(あるいは核兵器を使うかもしれない)。そ
うなってもエジプトは黙っているだろうか。ああ、そういえば、まだあいつがい
た。オサマ・ビンラティンは、いつもやりたがっていることを、やるに違いない。
それではヨーロッパはどうなるか。イギリスの労働党は大反乱を起こすだろう。
そして結局は労働党は分裂するかもしれない。ブレアは残党を引き連れて、保守
党と「国家緊急事態同盟」とでもいうものを結ぶかもしれない。まだ首相の地位
は保っているだろうが、次の選挙の圧力が高まり、おそらくブレアは敗れるだろ
う、しかも手ひどく。
イギリスが国連の明示的な支持なしにイラクと戦端を開いた場合には、ブレアは
国際刑事裁判所で裁かれる可能性があることを、法律顧問から警告されているは
ずだ。スペインでは、アスナールの率いる国民党のうちにも、首相の姿勢に反対
する意見がでている状態では、アスナール再選の見込みも疑わしいものとなろう。
ベルルスコーニと東欧/中欧諸国は、おじけづくに違いない。
一方で中南米では、アメリカの自由貿易エリア(FTAA)は崩壊するだろう。その代
わりにブラジルのルラ大統領は、貿易・通貨構造として、ブラジル、パラグアイ、
アルゼンチン、ウルグアイ四か国で設立した南米南部共同市場メルコスールを再
び活性化させようと、圧力をかけるだろう。うまくゆけば、チリも正式に加盟さ
せられるかもしれない。メキシコではフォックス大統領が窮地に追い込まれるだ
ろう。
東南アジアでは、二大イスラーム国のインドネシアとマレーシアが、ヨーロッパ
の真似をして、自立的な行動ゾーンを設立しようとするかもしれない(両国の政
府は現在は基本的にアメリカに友好的だ)。フィリピン政府には、アメリカ陸軍
を国から追い出すことを求める巨大な圧力がかかるだろう。そして中国は日本に、
アジアで経済的に生き残ろうと思うなら、アメリカとの政治的な提携を緩めたほ
うがいいと暗に警告するだろう。
2004年初めには、こうした情勢のもとでブッシュ政権はどうなっているだろうか。
アメリカ国内では反戦運動が急速に激化し、民主党はブッシュの世界政策に反対
した真の野党の位置に立つようになるかもしれない。容易なことではないが、不
可能ではない。その場合には、民主党は次の選挙でおそらく勝利するだろう。
これがどれも実現したら、ブッシュは体制の転覆をもたらすことになる−−イギ
リスて、スペインで、アメリカ合衆国で。そしてアメリカ合衆国はもはや無敵な
軍事超大国とはみなされなくなるだろう。要約するとこういうことになる。ブッ
シュが勝てば、地政学的には現状維持になり、ブッシュが望んでいたものは実現
されない。ブッシュが負ければ、完敗することになる。わたしは、ブッシュが勝
つ見込みはあまり高くないと思う。いずれ歴史家は、9月11日の出来事のあとで、
アメリカがこのような不可能な場所に、みずからを追い込む必要はまったくなか
ったのだと、記録することになるだろう。
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ポリロゴス事務局
chronicle@nakayama.org
(c)中山 元
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哲学クロニクル
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