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From : ビル・トッテン
Subject : 最後通告
Number : OW566
Date : 2003年3月19日
3月18日、ブッシュ大統領はフセイン・イラク大統領に48時間以内の亡命を要求、応じない場合は攻撃に踏み切ると通告した。攻撃を正当化する新たな安保理決議をへずに、開戦をするという状況になったのである。
(ビル・トッテン)
最後通告
対イラク攻撃容認決議案にフランスとロシアが拒否権を行使することを表明してから、米国はアフリカの非常任理事国である、アンゴラ、カメルーン、ギニアに対して支持を求めて激しい外交攻勢を行った。アンゴラは独立以降続いた内戦で米国が経済復興の最大の援助国で、ギニアとカメルーンは2月にフランス・アフリカ首脳会談で攻撃反対の宣言に賛成しているが、最大の援助国はやはり米国である。3国とも多額の海外援助債務を抱えた「重責務最貧国」で援助国からの要請が断りにくいという弱みを持つ。
さらに、イギリスの新聞オブザーバー紙が報道したように、イラク攻撃支持獲得のために、米国は安保理理事国代表団の自宅や職場の電話を盗聴したり、電子メールを傍受するといった不正工作も行った。
米国の御用聞きのような日本政府も中間派の安保理理事国に電話攻勢を行った。小泉首相はチリ、パキスタンの大統領と電話で協議し、川口外相はカメルーン、ギニアの外相、イギリスとドイツの外相に電話をかけたという。ここ数週間の日本政府と日本の主流メディアの報道をみていると、イラクを攻撃することだけが正義といわんばかりの論調であった。いや、日本政府にとっては米国を追随することだけが正道なのだろう。福田官房長官はフランスを批判し、小泉首相はブッシュ米大統領がイラクへの最後通告を表明すると「米国支持」を言明した。たとえ日本国民の圧倒的多数がイラク攻撃に反対しても、「世論に従って政治をすると間違う場合もある」とまで語っているのだから共同通信が2月に行った調査で日本国民の78.7%が反対をしていることを知ったうえでの発言であろう。ドイツでは約80%、フランスでは約76%がイラク攻撃を正当化できないとし、イギリスでも国民の80%はイラクを「脅威」だとみなしてはおらず、イラク攻撃支持はわずか13%しかない。
しかしフセインのような独裁者はイラクだけではないし、国連決議を遵守しない国はイスラエルを始めほかにもある。またイラクは米国を攻撃したこともない。
そんな中で米軍は新型の空中爆発爆弾「モアブ」の爆発実験をフロリダ州で実施した。地上付近で爆発し、高さ約3000メートルのキノコ雲を生じる巨大爆弾で、アフガニスタン攻撃で使われたデイジーカッターと呼ばれる爆弾の改良型で、昨年から開発が始まったものだという。
イラクを世界平和の脅威だとしてその武装解除を要求しながら、米国自身は新兵器の開発にはげんでいる。イラクの武装解除が中東地域の安定につながるといいながら、その地に先制攻撃をかけるという。
1991年の湾岸戦争で米軍は数百トンの劣化ウランを投下し、42日間の「砂漠の嵐」作戦で殺されたイラク市民は15万人を超えた。犠牲者の大部分は子供だった。停戦後も米軍は数千人のイラク兵士を殺害するなど、それは残酷で一方的な戦争だった。その戦争に日本は130億ドルもの資金を提供した。1998年12月には、米英軍は再び「砂漠のキツネ作戦」を行い、湾岸戦争を上回る巡航ミサイル数で攻撃をした。日本政府はこのときも攻撃支持を表明した。ユニセフの推定では、湾岸戦争とその後の経済制裁で100万人以上のイラク人が死亡したとされる。また、劣化ウラン弾の残留放射能によって現在も何万人ものイラクの民間人や子どもたちが白血病やがんに苦しんでいる。
今、その必要性も法的根拠も証拠もないまま、イラクに新たな戦争を開始しようとしている。米英、日本政府は国民に戦争を支持させるために、メディアを使ってフセインが悪の権化であるようなプロパガンダを展開している。私はフセインが独裁者であることを認めるし、イランとの戦争でイラクが化学兵器を使ったことも知っている。しかしイランも使ったし、第一次大戦では米国も化学兵器を使った。中国にはいまだに日本軍の化学兵器が埋まっている。
フセインは独裁者であり、フセインと反する政治思想のイラク人は迫害を受けてきたことも事実だが、湾岸戦争以前、イラクは中東でもっとも中流階級の国民が多い国だった。中東諸国の中でも最高レベルの教育制度や健康保険制度を備えた国だった。それらをすべて破壊したのはフセインではない。湾岸戦争とその後の経済制裁である。
世界の多くの人々(政府ではない)が反対するなかで、いま世界が束になっても追いつかないくらいの核兵器を始めとする大量破壊兵器を山ほど保有する超大国は、自国が攻撃される前にその国に大規模な先制攻撃を加えると通告した。世界は弱肉強食のジャングルになりつつある。
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト
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