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2003年3月18日
フランス、イラク武力行使めぐり米英と激しい外交交渉
シラク大統領の反戦路線
国連安保理の常任理事五カ国の一国であるフランスの行動は、今やイラク問題で大きな影響力を与えている。対イラク武力行使に移るため米英が提出した新決議案に、シラク仏大統領が拒否権を発動する考えを示唆したことは、大きな衝撃を与えた。戦後、最強とも言える政治基盤を国内に持つシラク大統領の反戦路線には、欧州統合の深化・拡大、冷戦後の世界情勢の根本的変化への読みもあると言える。
(パリ・安倍雅信)
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欧州統合の深化・拡大が自信に
対米関係悪化に懸念の声も
先週発売された仏週刊誌「ル・ポワン」は、表紙にフランスの対イラク反戦政策について「やり過ぎ?」という見出しを付けた。今や武力行使に踏み切りたい米英に対抗する急先ぽうとなっているフランスの姿勢は、米国をいら立たせ、米国内に反フランス感情を生み、米仏関係は急激に冷え込んでいる。
米ワシントン・タイムズ紙やニューヨーク・タイムズ紙は、仏企業が最近、イラクに武器の部品や、化学燃料をひそかに輸出していたと報道、「平和」の二文字を前面に掲げる仏外交の偽善性を暴くことに必死だ。この問題では仏外務省は公式に、事実無根であるという声名を出したが、米英の行く手を遮るフランスの行動へのいら立ちは、拡大する一方だ。
十五日、パリやマルセイユなどの主要都市では、対イラク反戦デモが行われ、数万人が参加した。「平和のためのピクニック」と名付けられた抗議デモを主催したのは左派政党、労組、平和団体などだが、保守のシラク大統領が反戦のヒーローに祭り上げられる不思議な現象が起こっている。フランスでは国民の八割が戦争に反対しているといわれている。
昨年春に再選されたシラク大統領は、足下に大統領を支持する中道右派ラファラン政権を従え、戦後、ドゴール将軍に次ぐ、最強の政治基盤を持つ大統領とみられている。大統領任期が七年から五年になり、二期を限度としているため、任期は〇六年までだが、左派勢力は弱体化しており、議会内の支持基盤も盤石と言える。
一方、〇四年に二十五カ国体制を目指す欧州連合(EU)は、単一通貨ユーロの流通を成功させ、政治統合への道を模索、自信を深めている。EUに大統領制度を導入したいフランスでは、シラク大統領が初代EU大統領就任の野心を持っているといわれる。また、中・東欧への拡大で中心的位置に立つドイツは、戦後の“ドイツ封じ込め”時代を卒業しようとしている。
戦争不参加路線を前面に出すドイツのシュレーダー政権の背景には、欧州統合の深化、拡大で、米国に対抗する独自路線を打ち出す「強い欧州」への自信がうかがえる。二十世紀の数多くの戦争の背景となったイデオロギーの対立、反ユダヤ主義、民族主義に完全に終止符を打ち、一国主義を超えたEUの創造の担い手となる仏独は、国際的発言力を強めている。
そのため対米姿勢も変化し、米国同時多発テロで米国への一体感を表明、アフガン攻撃では派兵を決行した仏独は、今やテロ問題とイラク攻撃を重ね合わせることには疑問を呈している。仏独の米国離れには、地球温暖化阻止を目指す京都議定書の批准の拒否、国際刑事裁判所で米兵を訴追対象から外すことを強要するなどの米国の態度への反感もある。
一方、国内にアラブ移民を多く抱える仏独は、対イスラエル政策でイスラエルを全面支援する米国に疑問を持つ。中東問題の解決を「世界の警察官」を自任するアメリカに任せることに無理を感じている。米国のようなアラブ世界に対する露骨な憎悪は、欧州では一般的に許されず、大きな政治問題に発展するからだ。
フランスは、米国が国連を上回る存在である時代は終わったとみている。二十一世紀の新しい国際秩序の枠組みは、米国主導でつくるものではなく、国連が主導すべきであると主張する。イラク問題では最初から、国連主導にこだわったのがフランスだった。安保理常任理事国のフランスは拒否権発動をちらつかせながら、米国の単独行動をけん制し続けている。
しかし、仏国内にもフランスの外交政策に疑問を呈する声もある。保守系議員の中には米国との関係悪化を懸念する声も上がっている。シラク大統領がごう慢になり過ぎているという批判もある。国際アナリストのミカエル・ワード氏は「自信を見せているが、ボスニアやコソボ紛争を見ても、米国の手を借りないで解決できた問題は一つもない」との指摘もある。
フランスは最近、イラク寄りという批判をかわすため、英国のブレア首相に電話し、フランスが国連査察の継続期間として主張していた四カ月を短縮し、査察団が提示する作業プログラムに基づいて「武装解除の基準」を検討してもいい旨を伝えたという。武力行使をめぐり、フランスは米英との激しい外交交渉を続けている。
転載元
http://www.worldtimes.co.jp/w/eu/eu2/kr030318.html