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「イラク市民との戦い」
発信者／www.iraqwar.ru
www.iraqwar.ru は、ジャーナリストと軍事専門家のグループによってモスクワに新設された研究センターが運営するウェブサイトである。対イラク戦争に関する最新情報を提供することを目的としている。
以下の記事はロシア軍情報局の報告書にもとづく。情報局は英米連合軍の無線回線や電話回線を傍受しており、人工衛星から送られる映像や諜報活動から得られる情報と合わせて、戦況の推移を追いながら連合軍の作戦を分析している。
＊ 記事要約＊
１ ２５日午前の時点において、すべての前線は膠着している。米英連合軍は作戦計画の変更を強いられた。
２ 連合軍によるバグダッド空爆は、軍が期待した効果をあげていない。イラク軍の戦力は衰えず、命令系統も保たれている。
３ 米軍はイラク軍の通信ネットワークを探知できていない。イラク軍のネットワークは防御が堅く、高度な技術で維持されている。
４ 米軍は巡航ミサイルなどの高精度誘導兵器を急激に消耗してしまった。今の勢いで消費しつづけると、三週間後には巡航ミサイルを使い切ることになる。ほかの高精度誘導兵器についても、ほぼ同じことが言える。
５ 今後、米軍はこうしたハイテク兵器の使用を控え、通常の兵器（破壊力が大きく、被害が広範囲におよぶ爆弾）をより多く使い始める。
６ 米軍はヨーロッパの基地から部隊を送り込み、兵力を大幅に増強する。
７ アメリカ政府は焦土戦を決意し絨毯爆撃を敢行する。結果として、イラクの民間人への被害は甚大なものとなる。
＊記事本文＊
イラク市民との戦い
０３年３月２５日、午後１２時３０分（モスクワ時間）。モスクワ発。
２５日、朝の時点において、イラク前線は静かだ。［米英連合軍とイラク軍の］双方はともに、つぎの戦闘に備え活発に作業を進めている。戦闘で消耗した米第３自動車化歩兵師団は、クェートの基地から新しい部隊（おそらく、連合軍司令部が予備の軍隊として待機させていた第１機甲師団に属する海兵旅団と戦車旅団）が到着して強化されつつある。ウムカスル（Umm Qasr）にいた英第７戦車旅団の部隊も参入する。各部隊は、態勢を立て直し、偵察を重ねた後で、２日以内にナシリヤ市（An-Nasiriya）を占領するという厳しい任務を科せられている。
（中略）
バグダッドへの空爆がつづけられているが、今のところ、期待された結果が出ていない。開戦前に選ばれていた攻撃目標は、みな３回から７回ずつ爆撃された。しかし、イラク軍はほとんど影響を受けていない。イラク陸軍の戦闘能力は衰えず、防空体制や命令系統も維持されている。
イラクは、戦争の準備期間に、頑強に防御された通信ラインと指令センターをいくつも作ることができたようだ。米軍は、電子機器を駆使して偵察をおこない、イラク軍の通信ネットワークを探知し、ネットワークの内部に侵入しようとしている。だが、米軍がまだ成功していないことを示す情報は数多い。これはイラク軍の通信ネットワークが高度な技術に支えられていることを意味する。
米軍の司令部がとくに憂慮しているのは、精密誘導兵器と巡航ミサイルを極端に使いすぎてしまったことだ。すでにトマホークなどの大型巡航ミサイルは配備していた数の３分の１を消費した。現在の使用量を維持すると、三週間後には［イラク侵略のために用意していたミサイルの］すべてを使い切ることになる。米軍が世界戦略として常に保持している巡航ミサイルが残されているが、これに手を出すわけにはいかない。ほかの精密誘導兵器についても、同じような状況となっている。昨日の朝、ペンタゴンの会議で、「［ハイテク武器の］使用頻度に応じた結果が得られていない。われわれは、まさに文字どおり、ドブに金を捨てている」と、リチャード・マイヤー将軍【１】が言った。
【１】米国防総省（ペンタゴン）統合参謀本部議長。制服組のトップ。
すでにアメリカの軍事専門家たちは、この戦争が危機に直面していると認めた。同じ会議で、スタンリー・マックリスタル将軍は、「敵軍がわずかに抵抗を試み、［戦術において］創造性を少しばかり見せただけで、わが軍が誇る技術上の優越性など、すぐに意味を失ってしまった。［ハイテク武器の使用は、］得られた結果に比して、経費が不当に大きい。武器生産者たちのほんの思いつきで生まれた技術に、われわれは何十億ドルも支出している。これに対して、敵軍が使う武器は断然に安価だ」と述べた。
今日は早朝から、連合軍最高司令部と米統合参謀本部とのあいだでオンライン会議が開かれている。ロナルド・ラムズフェルド米国防長官も出席している。この会議は昨夜ホワイトハウスであった会議につづくものだ。ブッシュ大統領を中心としたこの会議では、イラクでの膠着状態を打開するための緊急策が提示された。現在の作戦を続けても「効果がなく、危機を招きかねない」と考えられた。イラクでの戦争が１ヶ月以上つづくと、国際政治に思いがけない結果を招くかもしれない、とコリン・パウエル国務長官が警告した。
ホワイトハウスの会議で、打開策と作戦の修正案を提示したのはリチャード・マイヤー将軍だった。ブッシュは、連合軍が一週間以内に目覚ましい成功を収めるよう強く求めた。・・・
早朝からのオンライン会議では、連合軍司令本部のフランクス将軍【２】が批判された。各部隊への命令が適切でないこと、主要任務［バグダッドへの侵攻］に兵力を集中させることができていないことが指摘された。
【２】トミー・フランクス米軍中央司令官。連合軍がイラクの侵略に成功した後、占領軍の総司令としてイラクの統治に当たると見られている。
［ロシア軍］情報局によると、ペンタゴンは連合軍を大幅に増強する決定を下した。これからの二週間で、最大５万人の兵士と５００両の戦車が、ドイツとアルバニアの米軍基地から、イラクの戦場へ配備される。４月の末までには、さらに１２万人の兵士が加えられ、最大１２００両の戦車が送り込まれるだろう。
この戦争での航空戦術を転換する決定も下された。精密誘導兵器類の使用は、確認された標的を攻撃する場合だけに限定する。通常の爆弾をより多く使う。［１トン級以上の］大型爆弾や、燃料気化爆弾、焼夷弾などである【３】。米空軍司令本部は、２週間分の使用量として、これら空爆用爆弾を送る命令を出した。これは、ワシントンが焦土戦を決意し、絨毯爆撃を敢行することを意味している。
【３】いずれも通常兵器とされているが、原子爆弾に匹敵するほどの破壊力があると言われている。
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記事原文／www.iraqwar.ru研究センター
http://www.iraqwar.ru
英語訳／Venik氏
“Fighting the Iraqi People.”
http://www.aeronautics.ru/news/news002/news078.htm
日本語訳／安濃一樹
ヤパーナ社会フォーラム
http://www.kcn.ne.jp/~gauss/jsf/index.html
本文は英文からの抄訳。
【 】は訳者による注。
［ ］は訳者による補助語句。
（ ）は地名、あるいは原文の挿入語句。
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