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東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030526/mng_____kakushin000.shtml
「人権擁護法案」論議が急浮上
与党ゴリ押し 野党も同調?
政府の「人権擁護法案」は、名古屋刑務所事件などが明るみに出た影響で審議が止まっているが、来月十八日の国会会期末を前に突如、与党から「今国会成立を」との声が上がり、野党三党(民主、自由、社民)も統一案づくりをぶち上げた。唐突な動きに、政府案に反対する人権NGO(非政府組織)などは危機感を募らせている。(社会部・市川隆太)
●審議中断
人権確立を目指す国際社会と、部落差別撤廃運動の双方に押されて成案を目指す人権擁護法案。これまで、人権委員会(仮称)を法務省の外局につくり、法務省人権擁護局を衣替えして同委員会事務局にする−などの問題点が浮上、部落解放同盟(組坂繁之委員長)など人権NGOや日本弁護士連合会から批判されていた。
批判の主なポイントは(1)政府からの独立性がなく、パリ原則(別項参照)に反する(2)法務省所管の刑務所で人権侵害が起きている(3)人権委員がたった五人のため、事務局が運営の主導権を握り、被差別部落出身者、障害者、在日外国人、女性など多様な委員構成もできない−などだった。
メディアからも、犯罪者の配偶者や同居親族に対し、取材電話・ファクスをたびたびすると「人権侵害」とされ、政治家や官僚に関する調査報道が不可能になる、との問題も指摘されていた。
そこへ名古屋刑務所などで受刑者の死傷事件が相次ぎ、参院法務委でも同法案は後回しとなり、事実上審議されない状態になっていた。
矯正行政の是正を協議する法相の私的諮問機関「行刑改革会議」(座長・宮沢弘元法相)委員や日弁連から「改革会議の答申が出るまで、法案の審議は中止すべきだ」との強い要望も出ており、今国会成立は困難とみられていた。
●貫徹強調
ところが今月十五日、人権問題に精通する実力者の野中広務・元自民党幹事長らでつくる与党人権懇話会が「今国会で成立を目指す」との方針を打ち出した。
これまで解放同盟、民主・社民両党、日弁連は、人権委を法務省から切り離し、内閣府の下などに設置すべきとしていたが、野中氏は懇話会の後、民主党を「説得する」と述べ、あくまで政府案で貫徹する決意を強調した。
別の与党議員も、解放同盟について「ならば(人権擁護法案は)ほっておくぞ、ということ」と言い放った。このため解放同盟の複数幹部は「与党は“廃案”をちらつかせて、妥協を迫ってきた」と警戒感を募らせた。
●アリバイ
一方、江田五月参院議員(民主)ら野党三党が解放同盟やメディア関係団体へのヒアリングを行ったのは、与党人権懇話会と一日違いの十四日だった。議論が白熱すると、野党議員が「時間がないから」とやんわり制止し、一団体の持ち時間三十分を超すと「はい、次」と部屋から退出を求める場面もあって、NGOの疑心暗鬼を招いた。
野党三党は二十二日、都内の集会で、部落解放同盟幹部などを前に政府案を批判し「人権委の独立性などを担保する三党統一案をつくる」と表明した。
しかし、野党は今国会、個人情報保護法案で、政府・与党に引きずられて対案をつくり、結局、政府案の成立を手助けしているだけに、NGOには「野党はまた抱き込まれるのでは」との不信感がある。
「解放同盟や日弁連の意見を尊重した統一案をつくること自体はいいが、半面、政府・与党に審議入りの口実を与えて結局、政府案が成立するのでは?」「会期末に焦ってヒアリングをしたのは、野党のアリバイづくりではないか?」と不安がる声が上がっている。
ある法務省幹部は「今月末がヤマ場」と、意味深な予言をしている。
(メモ)人権擁護法案
人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病または性的指向による差別を禁止する法案。人権委員会(仮称)は加害者への説示、指導(一般救済)ができ、不当な差別、虐待、過剰取材については調停、仲裁、勧告、公表(特別救済)ができる。過剰取材を差別、虐待と同列視したメディア規制法案で、国籍差別への配慮も欠けている、などと批判されている。
パリ原則 1993年の国連総会で採択された「国内人権機関の地位に関する原則」のこと。政府から独立した人権機関を設け、人権NGO、弁護士、医師、ジャーナリストなどで構成するよう、定めている。