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裁判員制でヒアリング  公正さと報道自由共存を 東京新聞
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投稿者 小耳 日時 2003 年 5 月 17 日 15:13:41:

裁判員制でヒアリング  公正さと報道自由共存を 

 刑事裁判に国民が参加する裁判員制度は、「開かれた司法」を構築しようとの発想で導入議論が始まったはず。ところが、法曹界では「公正な裁判のためには一定の報道規制は必要」との空気が根強い。メディア側は「自由な報道による豊富な情報提供が制度を充実させる」と反発する。公正な裁判と報道の自由が対立した構図で議論が進むことを危ぐする声も上がっている。

(社会部・鬼木洋一)

■反 発

「この部分は全面削除を求めます」「ここは見直しを…」

 裁判員制度の設計を進めている政府の司法制度改革推進本部の検討会が十六日実施した日本新聞協会、日本雑誌協会、日本民間放送連盟の三団体へのヒアリング。各団体の代表者から厳しい批判が次々と飛んだ。

 批判のやり玉に挙がったのが、推進本部が制度設計の「たたき台」で示した(1)裁判員への接触禁止(2)裁判員の守秘義務違反への罰則(3)偏見報道の禁止(4)個人情報の保護−など「報道規制」を趣旨とする規定だ。

 メディア側は「裁判員を退いた人にまで接触を禁止したり、守秘義務を課すのはおかしい」「秘密漏えいで裁判官に罰則規定がないのに素人の裁判員にだけあるのは不公平」などと見直しや削除を求めた。

 メディア側の猛反発ぶりに、井上正仁座長(東大教授)が終了間際、「報道の自由との関係は制度設計のうえで、十分かつ慎重な検討を要する問題であることは、委員の皆さんが等しく認識していることだ」と発言。発言内容を文書にまとめて示すほどだった。

 なぜ報道規制の規定が盛り込まれたのか。国民から選ばれた素人の裁判員は周囲から影響を受けやすく、公正な裁判を行う環境が保たれないのではないか−との懸念がプロの法曹側の中には根強くある。

 ある現職の裁判官は「評議の秘密が保持されてこそ、本音で意見が表明できる。裁判員同士の信頼関係が崩れて建前論に終始したら、正しい結論が導き出せなくなる」と強調する。こうした見方は委員の大多数を法律家で占める検討会でも主流になっている。

■危 ぐ

「報道の自由」と「公正な裁判」。ヒアリングでは、ともに大原則である二つの理念が、対立した構図になりつつあるが、この形で議論が進むことを危ぐする声がすでに出ていた。

 「裁判員制度と報道規制をセットにしてはならない。あくまで別個の問題として考えるべきだ。このままでは『規制ばかりの制度なんていらない』という極論になってしまう」

 ヒアリングの一週間前。東京・霞が関の弁護士会館で裁判員制度をテーマに開かれた市民セミナーに招かれた四宮啓弁護士は、講演の中でこう懸念を漏らした。四宮弁護士は検討会委員の一人だが、十一人の委員の中では、報道規制の規定を設けることには反対の立場をとる少数派だ。議論の重点が報道規制の側面に偏ることで裁判員制度が個人情報保護法案のように「新たにメディア規制をもたらす制度」とみなされないか−というのが懸念の中身だった。

 一方、田島泰彦・上智大教授(メディア法)は「試験管の中で純粋培養するように裁判員を情報から隔離しようとする法曹界の古い考え方は時代の流れに反する。国民にオープンな仕組みをつくろうとしているなかで不健全だ。理念先行で拙速に論議を進めようとするなら本末転倒」と話す。

 そもそも「報道の自由」と「公正な裁判」は対立し合ったり、譲り合ったりするものなのか。報道の自由があってこそ、国民の監視が行き届き、公正な裁判が保たれるのではないか。どちらも実現できなければ、裁判員制度導入の成功はあり得ない。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030517/mng_____kakushin000.shtml

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