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【台北=若山樹一郎】台湾では先月下旬以来、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染が急拡大しているが、台北市内の病院が当初、感染源となった患者を見逃すミスを犯し大規模な院内感染を誘発したり、中央の衛生当局と市が互いに主導権を争って十分に連携しないなど、対応のまずさが被害を拡大させたことが問題化している。
12日現在の台湾の新型肺炎による死者は前日より4人増えて24人。半数以上が台北市立和平病院で感染した。死者を含む感染者数は207人で、同市と近隣の台北県の居住者が8割以上を占める。
同病院では先月20日ごろ、医師や看護師が次々に発症。このため24日には病院を封鎖、関係者は隔離された。病院では当初、4月初旬に外来診察に訪れた女性患者を感染源とみなし、追及した。
しかし、この女性とは別に、同病院の洗濯作業員がより強力な感染源となっていたことが最近分かった。葉金川・前台北市衛生局長の発表によると、この作業員は13日、かぜのような症状を訴えて同病院で受診。高熱が続いたため、3日後に一般病棟に入院した。その後、肺炎の症状が確認されたが、病院は衛生当局に報告せず、18日に集中治療室に収容、「様子を見た」(病院関係者)という。
結局、作業員は29日に死亡したが、最終的にSARSと断定され22日に隔離されるまで、看護師らが無防備のまま接触していたという。作業員への感染経路は今も不明のままだ。
失態はさらに続いた。台湾各紙の報道によると,同病院の医師から「院内感染が起きたらしい」と連絡を受けた衛生署(衛生省)の専門家は先月15日ごろ、同病院の院長と市衛生局に事実関係を調べるよう申し入れたが、病院と市では22日まで何の対策も取らなかった。さらに、衛生署は26日、感染者を24時間以内に別の病院に移送するよう求めたが、市側は「36時間以内」を主張、対応が遅れた。
台湾では、2000年5月の政権交代以来、与党・民進党の影響が強まる中央官庁と、最大野党・国民党の馬英九市長率いる台北市当局とが行政の主導権をめぐり、再三摩擦を繰り返しており、今回もその弊害が表面化した形だ。
世界保健機関(WHO)の感染症対策担当者は今月10日、「台湾では当初、各機関が個別に行動し、感染防止対策で協調性が欠けていた」と台湾当局の対応のまずさを指摘。こうした批判を受け、馬市長は12日、和平病院の院長を解任した。
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台湾の内政部(内政省)は12日、SARS感染の疑いがある自宅隔離者が無断で外出しないよう監視するため、台北市・県内の隔離者の自宅に強制的にテレビ電話を設置する作業を始めた。当面は2000世帯に設置、設置拒否者には最高100万円相当の罰金を科す方針。また、台湾軍の化学部隊も同日、同市・県内で大規模な消毒を作業を始めた。
(2003/5/12/22:05 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20030512i212.htm