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ナルコレプシーの不思議 −朝日新聞 快眠講座
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投稿者 怪傑 日時 2003 年 5 月 08 日 00:47:38:QV2XFHL13RGcs

俳優をめざす若い女性が来院されました。劇団で、舞台の大道具をつくろうとドリルを使っていたところ、突然眠りに落ちてしまったとか。周囲の人に心配されて、医者にかかる気になったのだそうです。

 話を聞くと、以前にも、ダンスのレッスン中に、いつの間にか他の人と違う振りになっていたり、雑談中に微妙に話がずれてしまったりして、気になっていたそうです。

 日中に眠気に襲われる過眠症でも、私が専門とする睡眠時無呼吸症候群ではないな、と直感しました。疑ったのは、ナルコレプシーという病気です。

 日中の居眠りが半ば常態化し、大笑いや感激した時に、ひざや首の筋肉が突然ゆるんで、力が抜けるのが特徴です。

 前回の本欄でふれましたが、ヒトなど哺乳(ほにゅう)類には、眠りは浅いけど、記憶を整理するとされる「レム睡眠」と、深い眠りで脳と体がリラックスし、疲労回復につながる「ノンレム睡眠」があります。2タイプの睡眠が、ノンレム→レムと続くのが眠りの1サイクルで、普通、これが一晩に4、5回繰り返されます。

 ところが、ナルコレプシーの人はこの順番が逆で、寝入りばなからレム睡眠が始まってしまいます。そのとき、筋肉が脳の言うことをきかず、金縛り状態になってしまうことがあります。深い眠りというクッションなしに浅い眠りから入るので、夢と現実との区別ができなくなってしまう場合もあります。

 治療には薬を使います。睡眠薬で浅い眠りを改善させるように努め、中枢神経を刺激する薬で日中の眠気を抑えます。専門医の処方のもと、決められた時間を守り、根気よく飲み続けることが大切です。

 同じ過眠症でも、無呼吸症候群には有効な薬がなく、もっぱら医療用具で症状を和らげますが、ナルコレプシーでは薬の力を借ります。治療にあたる医者としても、不思議なところです。

(斎藤恒博 グッドスリープ・クリニック院長)


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