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第I部 総論
2003年5月20日
(社)日本経済団体連合会
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1.はじめに
1978年の改革・開放政策以降、中国は国内構造改革の実施、市場経済への転換ならびに積極的な外国投資の誘致等を行なってきた結果、四半世紀にわたり高成長を続けている。また2001年12月にはWTO加盟を果たし、世界に大きく門戸を開放するとともに、国際ルールの遵守を約束した。わが国経済界は、こうした中国の英断を歓迎している。WTO加盟後1年以上が経過したが、この間、中国政府は膨大な数の法律および制度の整備及び改正を行なう等、加盟約束の完全な遵守に向けて努力を続けている。日本の経済界は、このような中国政府の努力を高く評価するとともに、今後もこうした努力が継続され加速化されることを望んでいる。
わが国企業は、これまで貿易や投資の拡大を通じ日中両国経済交流の拡大に努めてきており、その結果、両国経済間には相互補完的な関係が構築されつつある。日本からの投資の拡大は、日本企業を利するとともに、中国における雇用の創出、技術の移転、中間財貿易の拡大、関連サービスへの波及等を通じて、中国経済の発展にも貢献してきた。さらに近年は、中国をグローバル戦略の重要な拠点として位置づける日本企業が増えており、我々はこうした互恵互利の関係をさらに発展させていきたいと考えている。
そのために、中国には、WTO加盟に伴う国際約束の遵守とルールに沿った国内改革を引き続き、迅速かつ着実に進めることが求められる。一方、わが国は、規制改革を始めとする国内構造改革を推進し、産業構造の一層の高度化を図るとともに、対中国投資を促進しなければならない。これは、両国にとって大きなチャレンジであるが、この課題に果敢に立ち向かっていくことが、両国経済、東アジア経済ならびに世界経済の活性化にもつながる。
この方向を推し進めるためには、事業機会が大きいサービス分野をはじめ、様々な分野において解決すべき課題も多々ある。そこで、日中経済関係の緊密化に向けてわが国経済界としての基本的な考え方を明らかにするとともに、中国政府に対し、ルールの遵守、一層の自由化、国内改革について要望を取りまとめることとした。
2.日中通商・経済関係の評価
過去10年の日中間の貿易・投資は、アジア通貨危機等により一時的に低調となった時期はあったものの、総じて増加傾向にある。中国にとって日本は香港を除いて第1位の貿易相手国、日本にとって中国は米国に次ぐ第2位の貿易相手国である。また、日本から中国への直接投資は1999年から4年間にわたって順調に拡大している。
中国は、2002年11月に開催された第16回共産党大会において、2020年にGDPを2000年の4倍にするとの目標を示した。他方、財政赤字の拡大、国営企業の経営悪化、国有銀行の不良債権、需要に対する供給過剰、地域格差・貧富格差の拡大や産業構造調整による社会不安の増大等のリスク要因がある。中国がこうしたリスクを克服し、目標としている経済成長を達成するうえで、日中経済関係の持続的かつ安定的な発展が不可欠である。この意味からも、わが国経済界は、今般の中国全国人民代表大会で国家主席に選出された胡錦濤氏を中心とする新政権に大きな期待を抱いている。
3.日中通商・経済関係拡大への展望
わが国の製造業は1980年代から活発に中国へ進出してきたが、近年は垂直、水平分業に加えて、設計・開発、素材・原料調達、部品生産・調達、組立・製造といった工程内分業を深化、拡大させる等、日本と中国の間でそれぞれの経営資源を有効に活かした分業を推進している。日本企業は、中国を主として世界に対する生産・輸出基地と位置付けるとともに、中国市場を対象としたビジネスも積極的に展開している。
他方、サービス産業は、それ自体豊かな国民生活をもたらすとともに、製造業のビジネスインフラとしてもきわめて重要である。この分野への進出は、これまで比較的多くの制約があったが、WTO加盟に伴い、これらが開放されることにより、今後、飛躍的な拡大が期待される。製造業のバリュー・チェーンをスムースかつスピード感をもって展開する観点からも、電気通信、エンジニアリング、運輸、物流・流通、マーケティング、資金回収・決済、アフターサービス、ローン等のサービスに対するニーズは高まっている。また、上海市などの沿岸部を中心に生まれている中間所得者層等をターゲットとして、金融、小売、建設サービス等も拡大していく。
このようなビジネス活動を展開するためには、両国間において、ヒト、モノ、カネ、サービス、情報といった経営資源の自由で円滑な移動が確保されなければならない。わが国と中国の産業構造は相互に補完的関係にあり、こうした資源の自由な移動が、効率的な経済活動を可能にすると考える。
また、わが国企業による中国とのビジネスは、二国間関係に留まらず、東南アジア諸国等を含めた東アジア全域を視野に入れて展開されつつある。そこで我々は、日本と中国が、ともに力を合わせて、例えば2015年を目標にASEAN+3(日本・中国・韓国)の枠組みをベースとする東アジア自由経済圏の構築を目指していくべきである。こうした東アジア自由経済圏の構築は、域内の取引コストの削減による効率的な生産体制とともに、巨大な市場を生み出すことによって、域内のすべての国はもちろんのこと、世界経済にも大きな利益をもたらす。
4.ビジネスの促進に向けた優先的な課題
わが国経済界は、さらなるビジネスの促進に向けて、中国政府が、次のような課題の克服に優先的に取り組むことを強く望む。こうした課題の解決は、外資系企業だけでなく中国の企業にとってもビジネスの拡大につながり、中国の経済成長に大きく貢献する。
その際、(1)WTO加盟約束の遵守、(2)WTO新ラウンド交渉におけるさらなる自由化、(3)国有企業改革、金融システム改革、政府機構改革を含む国内構造改革を同時並行的に推進していくことが望ましい。(なお、詳細は「第二部各論〜日本の経済界が是正を求めるビジネス上の障壁〜」を参照されたい。)
WTO加盟約束の迅速かつ着実な実行
中国は加盟約束をスケジュール通り、また可能であれば、一部を前倒しして、着実に実行していくことを求めたい。特に、貿易権、流通権については、ビジネス実態に即した自由化を強く望む。原則として、加盟から3年以内にはすべての外資系企業に付与されたい。
一層の市場開放
WTO新ラウンド交渉あるいは自主的な自由化を通じて、関税・非関税障壁の削減・撤廃、主要サービス分野(金融、物流・流通、電気通信、建設、運送等)における外資出資規制の削減・撤廃、市場アクセスの改善といった、さらなる市場開放に取り組むべきである。
法・規制の透明性の確保
基本的な法・規制を整備するとともに、新たな法・規制の制定手続においては、パブリック・コメントの実施や一般への公表などによって、高い透明性を確保すべきである。
中央・地方政府による統一行政
中央政府が定める法・規制について、いずれの地方政府においても、解釈や運用面を含めて統一的に適用されるよう徹底することを望む。
知的所有権の実効的な保護
知的所有権の保護が、執行段階まで徹底されるよう、司法、行政各省、検察当局、税関等の協力により、制度・運用面を整備するよう求める。特に、司法上の迅速かつ確実な救済、行政及び税関の取締りの強化が重要である。
国際基準との整合性の確保
現在、中国政府が定める強制規格の一部には、国際規格と大きく異なるものがあり、基準や強制規格の制定に際しては、国際的な基準に整合的なものとするよう望む。
人民元の変動為替相場制への移行
人民元の為替レートは、事実上米ドルにペッグしており、急拡大する経済に見合わず過小評価されているとの指摘もある。当面は、貿易の自由化にあわせて資本取引を漸進的に自由化するとともに、いずれは変動為替相場制度へ移行することを望む。
外資優遇措置の存続
外資系企業を優遇する制度については、中央政府、地方政府が実施しているかを問わず、WTO上禁止されてはいないため、存続を望む。他方中国政府が、こうした制度を撤廃する場合には、十分な経過期間を置くとともに遡及的な適用をしないことを強く求めたい。
迅速な増値税の還付
増値税に関して、還付手続の簡素化、還付の迅速化、徹底化を望む。
5.おわりに
経済のグローバル化、中国における急速な市場経済化、両国による経済の緊密化を考えれば、中国のWTO加盟を契機に、わが国と中国との経済・通商関係を改めて見直し、様々な施策を講じていく必要がある。
今後、日本と中国とは、WTO新ラウンド交渉の推進、東アジア自由経済圏の構築、日中経済パートナーシップ協議の一層の活用、日中投資協定の改定を含めた日中経済連携の強化といった、マルチラテラル、リージョナル、バイラテラルの枠組みを重層的に推進していくべきである。また、二国間経済交流にあたっては、これまでの官民様々なレベルにおけるコミュニケーション・チャネルを再検討、再構築して、21世紀の日中関係にふさわしい戦略的なアプローチにしていくことが必要不可欠である。こうした観点から、日本経団連として、持続的かつ安定的な中国との関係強化に積極的に取り組みたい。
以上
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WTO加盟後の中国との
通商・経済関係の拡大に向けて
第II部 各 論
〜 日本の経済界が是正を求めるビジネス上の障害 〜
2003年5月20日
(社)日本経済団体連合会
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中国は、WTO加盟を契機に、種々の貿易、投資上の障壁の除去を行なってきた。わが国経済界は、これらによるビジネス環境の大幅な改善、整備を高く評価している。
他方、依然として、わが国企業は、中国においてビジネスを展開する上で多くの障害に直面している。そこで、中国政府が以下に掲げる障害の是正、除去に努めることを強く望む。
これらの要望の実現は、日中の通商・経済関係を一層活発にする。中国の投資環境の整備は、また国内外からの投資の拡大を通じて、中国の経済成長にも大きく貢献すると思われる。
(なお、以下の障害リストは、2003年1月から3月にかけて対中国通商問題ワーキング・グループにおいて行なった委員企業約20社からのヒアリング、ならびに同年2月に日本経団連全会員企業を対象に行なったアンケート調査の結果を基に作成した。)
1.モノの貿易
モノの貿易については、法・規制及びその手続の透明性、無差別性の確保に加えて、貿易権・流通権の開放、関税の引下げ、知的所有権の実効的な保護を特に強く求める。
(1) 総則
法・規制及びその手続の透明性及び内国民待遇違反の回避
新たな法・規制(実施細則、施行規則などを含む)の制定過程及び最終的に適用される法・規制については、一般に入手可能な形で公開すべきである。また法・規制の制定にあたっては、全ての外資系企業を含む利害関係者に対して、パブリック・コメントの機会を与えるとともに、こうしたコメントを十分に考慮することを求める。また、法・規制を内国民待遇に違反しないよう適用することを求める。
法・規制の円滑かつ十分な移行期間を置いた運用
法・規制の公告と施行には十分な移行期間を置くとともに、遡及的な適用をしないよう求める。あわせて行政官による恣意性を排除した執行を行なうべきである。
中央・地方による統一的行政の確保
中央政府により施行された法・規制を、全国一律で統一的に適用されるようにすべきである。一部の地方には、法・規制が十分に浸透していないケースがある。また、中央政府内においても、省庁ごとに解釈や運用が異なる例が多いので、解釈、運用面まで含めて統一的な見解を維持することを求める。
独立かつ実質的な権限を有する司法制度の整備
行政機関から独立した司法を確立するとともに、司法判断(判決)に対する執行が当局によって担保されることを求める。
貿易権・流通権(卸売、小売、フランチャイズ・サービスを通じた国内販売の権利)の全ての外資系企業に対する約束通りかつビジネス実態に即した開放
貿易権はWTO加盟から3年以内に独資を含むすべての外資系企業に、流通権は流通サービスの自由化を通じてWTO加盟から3年以内に一部の分野を除いてほとんどの分野において外資系企業に付与されることになっており、実施細則まで含めて明確な形でスケジュール通りの開放を望む。加盟後1年以内に貿易権、流通権(卸売業)を外資マイノリティ企業に対して付与することとなっていたが、関連の規定が未だ整備されておらず、早急な法令の改正を望む。また、こうした権利の付与に関しては、一定額以上の貿易実績、高額の最低資本金等といった条件を撤廃し、ビジネス実態に即して行なうことを求める。
貿易権について、傘型企業には、傘下企業製品の輸出権が認められているが、法令上の経営範囲で認められている輸入権が実際の申請に際しては不許可となるといった事例がある。
流通権については、傘型企業への付与について具体的な実施細則、運用が不明確となっており、是正を望む。
単一省庁による許認可・手続の実現
許認可にあたっては、あるいは当局による必要最小限の監督を行なう場合などに、一つの企業であっても、ビジネス業態によって、異なる省庁にまたがることが多いので、可能な限り、一つの省庁、例えば、今般新たに改組された商務部に権限を集中することを求める。
(2) 関税
わが国経済界は、中国政府が今後数年かけて関税を大幅に削減、撤廃していく約束をしたことを歓迎する。他方、一部の品目については加盟約束が遵守されておらずこの是正を求めるとともに、WTO新ラウンド交渉などを通じてさらなる自由化に取り組むことを強く求める。
WTO加盟約束の遵守
一部の製品の関税引下げについて遅延等があるため、スケジュール通りの引下げ、撤廃を望む。特に、写真感光材料に対する従量税かつ高率の関税を賦課といった、明らかなWTO加盟約束違反の事態については、直ちに是正すべきである。
関税の一層の引き下げ
WTO約束の移行期間が終わった後も、一部の素材、部品、製品など(例えば、オーディオビジュアル機器、フラット・パネル・ディスプレイ式カラーテレビ、カラーテレビ用プラズマ及び液晶パネル、プロジェクション・スクリーン、プロジェクタ、複写機・デジタル複写機、カメラ(一眼レフカメラ、銀塩カメラ)、レンズ、鍵盤、電球、蓄電池、微電子組立機、発振子、ディーゼル・エンジン、トラクター、フォークリフト、熱陰極蛍光放電管、人造繊維短繊維織物、エアコン用部品など)には10%以上の高関税が賦課されることとなっており、新ラウンド交渉あるいは自主的な自由化を通じて、さらなる引き下げに取り組むことを強く求める。10%以下の関税品目についても早期の引き下げ、関税撤廃を望む。また、商標・ソフトウェア等の使用料について、過去に遡って関税を賦課する措置を講じており、その除去を望む。
(3) 知的所有権
わが国経済界は、中国全土において、知的所有権の実効的な保護が行なわれることを強く求める。知的所有権には、WTOのTRIPS協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights:知的所有権貿易関連側面協定)上、著作権、商標権、地理的表示、意匠権、特許権、集積回路の回路配置、開示されていない情報の保護が含まれる。中国における知的所有権の保護については、専利法、商標法、著作権法といった法律が、基本的には刑事罰及び民事罰を含む形で整備されているが、罰則が不十分などの問題が残っている。また、知的所有権の保護が現場において徹底されていないことはさらに大きな問題である。わが国経済界は、特に、商標権、意匠権、特許権、著作権の保護について多大な被害を蒙っており、中国政府が、以下のような措置を講じることを希望する。
罰則の強化と適正な法手続の確保
知的所有権の保護に関する法律の侵害に対する罰則が不十分である。例えば、行政罰の罰金の下限額の引上げ、刑事罰の適用対象の拡大、損害賠償額の引上げを望む。適正な法手続については、例えば、押収した模倣品などを侵害者の責任において完全に廃棄することを法制度に含めるよう求める。さらに、知的所有権に係る訴訟について、専門的な知識を有する大都市の裁判所が管轄権をすることも検討すべきである。また、技術ライセンス契約に関して、中国企業に外国企業より有利な待遇が与えられており、その是正を求める。
知的所有権保護の執行の徹底
知的所有権を保護するため、地方を含めた中国全土において、権利行使を徹底する制度を整備すべきである。具体的には、司法に基づく刑事上及び民事上の救済、行政及び税関における取り締まりの徹底が強く求められる。行政による取り締まりに当たっては、異なる省庁間の調整を行ない、統一的に執行されることを望む。また、こうした執行手続を、国内企業及び外資系企業に対して無差別に適用するとともに、被害の拡大を防ぐ観点からも迅速な処理を求める。
知的所有権(特に商標権、意匠権、特許権)の審査基準の国際基準への整合化・明確化、無差別な適用ならびに手続の簡素化・迅速化
中国において、知的所有権を取得する際の審査基準を、国際的な基準に整合的かつ明確なものにするとともに、国内企業及び外資系企業に対して無差別に適用すべきである。また、こうした基準を満たす権利については、早期審査制度を設ける等によって、適切かつ迅速に行なうよう求める。また、一部の特許権については、企業上の機密であるにもかかわらず、中国政府に強制使用許諾に関する広範な権限が与えられており、この是正を望む。
(4) その他の分野
わが国経済界は、中国政府が、全てのWTO協定を実質面及び手続面の双方において、過去のWTO紛争処理手続きの判例をも参考に、厳格に遵守することを強く求める。いわゆる非関税措置については、WTOの約束を超える国内規制において、不必要な貿易障害を設けることのないよう確保することを強く求める。特に関連諸協定(例えば、TBT協定(Technical Barriers to Trade:貿易の技術的障害協定)、SPS協定(Sanitary and Phytosanitary Measures:動植物検疫措置協定)など)を国際基準に照らして厳格に遵守することを期待している。
さらに、多くの国内規制については、WTO協定上は問題とはならないものの、上記で指摘したような不透明性、煩雑性に加えて、主に外資系企業を対象とした過度に制限的なものが見受けられるので、こうした措置について長期的な観点から自由化を進めていくよう望む。
厳格な基準に基づく貿易救済措置の発動
中国政府が発動した一部鉄鋼製品に対するセーフガード措置については、WTO協定違反の懸念があると考えている。また、一部の化学品等に対して調査、発動が行なわれているアンチ・ダンピング措置についても、WTO協定との整合性について疑問が残る点がある。今後、中国政府がこうした貿易救済措置を発動する際には、WTO協定を厳格に解釈した上で遵守することを強く求めたい。
基準・規格の国際基準への整合化、明確化ならびに簡素化
中国独自の国内基準・規格の制定は必要最小限に留めるべきである。こうした基準・規格は、できる限り国際基準に整合的にするとともに、明確かつ簡素なものを採用することを求める。また制定に当たっては、一般の法・規制と同様に透明性の高い手続を経るべきである。
WTO加盟上の個別約束の順守
また、自動車の輸入数量割当て枠の配分については、加盟約束違反の疑義のある不透明な運用がなされており、是正を求める。
国内税制の改革、増値税の還付
増値税を含む、あらゆる国内税制及び徴税手続に関して、簡素化を求める。特に増値税に関しては、還付手続及び実際の還付の迅速化、徹底化を望む。
中古設備の事前検査の廃止
進口旧機電産品検験監督管理弁法に関する指令において、2003年5月1日以降、中国に中古機器を輸入する場合には、輸入者に対する資格審査を行ない、かつ輸出段階で当該中古機器が中国の国家基準に適合しているかを検査することとなる。実質的に中古機器を輸出する際の貿易障壁となるので、この撤廃を求める。
国内規制の緩和
国内規制の導入、適用に当たっては、貿易に不必要な障害をもたらすことのないよう求める。いくつかの業種において、例えば、二輪車都市ナンバー・プレート発給規制といった、国際的に例を見ない厳しい国内規制が存在し、中期的には撤廃を求める。
政府調達協定への参加
中国政府が、WTO複数国間協定である政府調達協定に参加することを強く求める。
2.投資
わが国経済界は、中国政府が、WTO加盟約束の徹底、WTO投資ルールの策定や日中投資協定の改訂等によるさらなる自由化、ならびに国内構造改革等を通じて、以下のような措置に取り組むことを求める。なお、サービス分野における投資については、GATS(General Agreement on Trade in Services:サービス貿易一般協定)の枠組みにおいて、分野ごとにモード3の自由化を通じて達成することをあわせて求める。
WTO・TRIM協定(Trade-Related Investment Measures:貿易関連投資措置協定)の遵守、パフォーマンス要求の禁止の徹底
TRIM協定及び加盟約束に明記されたすべてのパフォーマンス要求を条件としないことを徹底するよう求める。一部の分野においては、技術移転やローカル・コンテンツ部品の使用が奨励され、事実上の要件となり得るので、こうした措置の撤廃を求める。
透明性の確保
一般的な法・規制及びその手続と同様に、投資に関連する法・規制についても、透明性を確保することを求める。投資関連法・規制は、一般的に外資系企業に適用される法・規制に加えて、地域ごと、産業分野ごとに細かい法・規制及び実施細則が適用されるため、パブリック・コメントの機会の付与を含む高い透明性を確保することを望む。
禁止業種、制限業種の削減・撤廃
中国においては、外国からの直接投資に対して、奨励業種、許可業種、制限業種、禁止業種に分けている。禁止業種については、国家の安全保障などに必要な限りに留めるとともに、制限業種については、外資出資比率制限の除去などのさらなる自由化を進めることを求める。
許認可プロセスの簡素化
許可業種については、一部の分野における許認可体制の維持は、国内の社会・経済情勢を考えれば、短期的にはやむを得ないと考えるが、その場合は、基準を明確にするとともに中国企業と外資系企業に対して無差別に適用することを求める。こうした基準は、外資系企業に対して実質的に差別的な内容にならないよう確保するとともに、過度の条件を付与しないよう望む。また、許認可に当たっては、基準を満たす企業には迅速にライセンスを発給すべきである。中期的には、可能な限り多くの分野において許認可制度を廃止し、登録制度に移行する自由化を行なうよう求める。
各種制限の撤廃
制限業種、許可業種において定められている地理的制限、外資出資比率、店舗数、中国人雇用比率などの数量制限、活動範囲などの制限について、出来る限り多くの分野において、段階的に制限を撤廃し、中期的にはすべての分野において外国資本が自由に会社を設立できるようにすべきである。
海外送金の自由の確保
中国においては、利益や配当金などの海外への送金が実質的な外国為替管理等によって制限される事例が多く、法制度を遵守し、円滑な海外送金の自由の確保を強く望む。
3.サービス貿易
(1) 総則
約束の履行に向けた着実な法・規制・行政ガイドラインの整備
サービスの自由化約束では、ほとんどの分野において、自由化対象地域の拡大、資本比率の増加、総産出量の制限等において段階的自由化が予定されているが、最終的な約束自由化レベルを確実に履行するため、着実に法・規制・行政ガイドラインを整備していくことを求める。
法・規制・行政ガイドライン等の導入段階における迅速な通達、パブリック・コメントの実施
約束を履行するため、膨大な数の新たな法・規制・行政ガイドラインならびにサービス貿易に影響を及ぼす措置が導入されているが、通達が遅れ、充分なパブリック・コメントの機会が確保されないままに実施に移される場合がある。法・規制・行政ガイドライン等の導入段階における迅速な通達、パブリック・コメントの実施を徹底し、透明性を高めることを望む。
法・規制等の内容の透明性確保
約束履行に伴い導入した、もしくは導入予定の関連法案・規制のなかには、内容が不透明で実質的には行政の自由裁量に依存するものがある。法・規制の導入ならびに運用・解釈において透明性を確保することが求められる。
許認可手続の内外無差別性の確保
約束を行っている分野でも、許認可手続において外資を差別的に扱うケースが見られる。許認可手続の内外無差別な運用を求める。
恣意的もしくは突然の規制変更の禁止
ある約束を履行するために他の部分で外資の活動を規制して穴埋めをするような恣意的な規制・行政ガイドラインの導入や突然の運用・解釈の変更が見られる。事業の予見性を確保するために、恣意的もしくは突然の規制変更はなくすよう要望する。
多省庁にまたがる許認可権限・管轄の整理・一元化
サービス産業の場合、一つの事業を行なうためにいくつものライセンス取得が要請されるが、いくつもの省庁に管轄が分かれている。可能な限り許認可権限・管轄の整理・一元化を実現することを求める。
円滑な許認可手続の実現
ライセンス申請を受理しても、ライセンス付与までに数年かかることがある。円滑な許認可手続の実現を強く希望する。また、ライセンス付与の遅延や非受理については、明確な理由を提示することを求める。
中央・地方による統一的行政の確保
中央と地方の間、地方間あるいは省と独立都市の間で法律・規制の解釈が異なる。中央政府の間でさえ、省庁間で約束の解釈が異なったり、約束履行のための法律・規制の解釈が異なることがある。法・規制の運用ならびに解釈を全国一律に行なうことを要望する。
消費者の新たなサービス産業のニーズに応えるための自由化の促進
自動車の普及に伴う充実した自動車保険の整備、拡大する消費社会を支えるタイムリーな流通システムの確保、中国人の海外旅行へのニーズ拡大等、経済発展に伴う消費者の高度化・多様化するニーズに応えるために外資サービス産業を積極的に活用することを期待する。
(2) 主要分野
金融サービス
【銀行】
人民元業務に関する地理的制限及び顧客範囲制限などの段階的撤廃(5年後の完全撤廃)に関する加盟約束の着実な実施を期待する。
外貨業務に対する顧客範囲の制限廃止に関する加盟約束の着実な実施を要望する。特に、顧客側に存在する多くの制約(1企業につき1口座しか開設できない、現地法人・支店・事務所等を登記した地区を所管する外貨管理局の管轄地域以外にある支店における口座開設が認められない、1企業が資本金口座以外で保有できる外貨に制限があり、これを超えると人民元への換金が義務付けられている等)が事業展開の障害となっていることから、これらの制約の早期撤廃を求める。
人民元業務に関する自己資本比率8%制限ならびにインターバンク借入比率規制40%(検討中)等の、現地における業務基盤の違いを考慮せず実質的に内外差別的な扱いに繋がりかねない規制を見直し、人民元業務マーケットを整備することを求める。
【生命保険・損害保険】
WTO加盟約束の地理的制限の完全撤廃(2004年12月まで)、引受制限の段階的撤廃等を含むWTO加盟約束が着実に履行されることを求める。
WTO加盟約束履行のため、保険法改定(2003年1月)等をはじめとする法整備が進んでいるが、外資保険会社管理条例や一部規定には不透明なものがある。関連法令・規制の透明性の向上を求める。
生命保険について、(1)合弁生命保険会社の外資出資比率規制の緩和、(2)外資による独資、支店形態での進出が認められることを求める。
自動車保険(第三者賠償責任保険、車両保険等)は、外資損害保険会社での取扱ができない。自動車の急速な普及が見込まれる中、豊富な経験を持つ外資損害保険会社に対する自動車保険の全面開放を将来的課題として指摘する。
外貨建契約の禁止規定の撤廃を求める。
運送・ロジスティックス関連サービス
商務部(旧対外貿易経済合作部)の管轄するフォワーディング免許と交通部の管轄するNVOCC(Non Vessel Owning Common Carrier:外航利用運送事業)免許の境界が不明瞭である。免許範囲の明確化もしくは管轄の一元化を求める。
海関総署と国家税務局の間で、保税地区の解釈の違い等、法・規制の運用解釈が異なるケースが生じており、業務展開に支障を来たしている。両機関の協力を求める。
ロジスティック全体が効率よく統括できるよう、許認可権限・管轄の整理・一元化を行なうことを要望する。
「中国海運白書」に今後の市場開放過程が具体的に紹介されているが、現状比、開放過程が不明確な案件が存在している。更に具体的な予定の提示を求める。
海運業に従事する会社の業務展開に関する制限(現地邦人設立、支店開設等)の早期撤廃を求める。
在中国の日本船社現地法人に付与されるライセンス(業務範囲)は、限定的なものである。在日本の中国船社現地法人に認められている業務範囲と同等の許可を与えることを求める。
建設・エンジニアリングサービス
外商投資建築業企業管理規定(2002年12月施行)が導入され、WTO加盟約束事項である独資現地法人の設立ならびに50%以上の合弁企業の設立が法的に可能になったが、厳しい設立基準が課されており、外資の進出は実質上ほぼ不可能な状態になっている。以下の条件の緩和・撤廃を求める。
独資企業・外資合弁には受注制限が課せられており、全額が外国からの投資または寄付によるプロジェクト、外国資本が50%以上の合弁プロジェクト等しか受注できない。
多額の資本金が等級ごとに要請される。
資本金より多くなる純資産及び多数の常雇従業員が要求される。
日本における工事実績は資質など等級評価の対象外となる。
上記新法の細則及び各地方での規制等については、明文化されたものがなく法の運営が不透明である。早期の関連細則整備を求める。
流通サービス
国内需要の急成長に伴ない、流通サービスは経済発展の原動力となる極めて重要なセクターとなっていることから、外資系流通業を積極的に活用していくことを希望する。WTO加盟約束事項に際しては、卸売業、小売業、フランチャイズの出資比率、地理的制限、経営範囲等の段階的制限緩和・撤廃が着実に行われるよう、具体的スケジュールの明示を要望する。特にフランチャイズについては、3年以内の出資比率制限撤廃が曖昧であるところ、明確化を求める。
流通の発展にはサプライチェーンの構築が必要となるが、増値税の還付に関する制限ならびに還付の大幅な遅れ等がサプライチェーン構築上の障害となっている。改善を求める。
フランチャイズ形式による契約の認可が不透明である。認可手続の透明性確保を強く求める。
ロイヤリティは販売額の0.3%までと決められているが、ロイヤリティの定義が曖昧である。そもそも、ロイヤリティは企業間で決めることで、法律で決めることではなく、さらに中国企業間では制限が課されていないところ、ロイヤリティの支払い自由化を求める。
電気通信サービス
外資企業の中国展開が拡大・深化するにしたがってサービスのインフラとなる電気通信サービスに対するニーズは高度化・多様化している。また、高速度のデータサービス利用、中国内販売店網のネットワーク導入、モバイルコミュニケーションの需要等、中国内の通信ニーズも急激に変化している。このようなニーズに応えるためには、一貫した質の高いサービス供給体制が必要となる。経済の実情に準じたWTO約束の更なる自由化、事業者間の競争導入を求める。
VAN(Value Added Network:付加価値通信網)・ページングについては2003年に外資50%上限が可能となるが、移動通信データサービスならびに国内・国際基礎サービス(再販を含む)は、外資49%(それぞれ2004年、2007年)が上限である。過半の外資開放を求める。
需要が高まるインターネット通信サービス提供については、開放スケジュールの明示を求める。
メーカー等外資企業の円滑な事業展開には、通信インフラの整備が不可欠である。通信機器等の持込に関する規制の緩和を求める。
外資系通信事業者への通信サービス再販事業分野の開放を求める。
資本金をはじめとする新規参入要件の緩和を求める。
現地法人設立の手続で不透明な運営が行われている。透明化の確保を求める。
観光関連サービス
独資企業の設立及び支店の設置が2005年以前に実施と約束されているが、中国人の海外旅行(香港、マカオ、台湾を含む)の取扱は認められておらず、開放を求める。
ホテル等の事業化に際しては、建設、電機等の他業種との横断的連携が不可欠であるが、これらの分野にも様々な規制があるため外資企業間のジョイント・ベンチャーで依然として高い障壁が残っている。観光関連サービスの発展のため、横断的な規制緩和を求める。
以上