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金急騰、戻り高値更新、370ドル間近(「ドル安の背景」) ☆☆ [住友ゴールド]
http://www.asyura.com/0304/hasan26/msg/481.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 5 月 22 日 21:33:48:


ドル建て金価格の戻りが急な動きになってきた。

週明け19日のNY市場、NYコメックス(先物市場)は364.40ドル、前日
比9.5ドルもの急騰である。現物市場のほうも、前日比10.20ドル高の36
4.40ドルとなっている。こちらも大幅高である。

何が金市場にあったのか?

19日のNY市場の値動きは1日の上げ幅としては、今年に入り最大のものである。
イラク戦争突入前の急騰相場でも見られなかった動きである。とくに現物市場(ス
ポット)の値動きがいいのが特徴だ。背景は、このところのドル建て金価格上昇の
理由として指摘されてきた「ドル安」である。とくに対ユーロのそれは、昨晩は一
時1ユーロ/1.17ドルを突破してきた。週足(1週間単位の値動き)で見た場
合、ユーロは先週で6週連続の上昇となっている。すでに専門家の間では、今月に
入ったあたりからユーロ相場過熱気味として警戒感が高まっているのだが、勢いは
衰えない。

私自身は一般の方に、株にしろ為替にしろ相場と名のつくものは、本格的な値動き
(いわゆる大きなトレンド≒流れ)が始まった場合、それはあたかも「振子」のよ
うなものだと説明している。振子は振り切れる所まで行かないと逆方向に戻ってこ
ない。そして振り切れる所とは、往々にして水準としては誰もが予想もしなかった
値位置であることも多いのである。それが、プラス方向(買われ過ぎ)であれマイ
ナス方向(売られ過ぎ)であれ、程度が大きいときは、いわゆる「バブル」発生と
なる。いまの日本株にしてもなかなか底打ち感が出ないが、「負のバブル」の領域
にあるのは明らかであろう。どこまで行くかの度合いの見極めが難しく投資家は苦
労するのである。「相場のことは相場に聞け」という格言はこうした状況を指すの
だろう。流れは逆だが、いまのユーロの動きにもそれを感じる。

為替に話をしぼると、90年代後半以降の「米国の時代」のなかで、ここまで世界
中の資産がドルに偏り過ぎていたのは否めない。

それが2000年の株式バブル崩壊から2001年の同時多発テロ発生、2003
年イラク戦争勃発と経過するなかで、バブル崩壊の直接的な経済への影響、またテ
ロ発生以降の世界的枠組みの変化のなかで国防費急増による財政圧迫など米国を取
り巻く環境は様変わりしてきた。米国経済の先行きに不安の影が指し始めるととも
に、少しずつ「ドル離れ」がおき始めたのである。バブル崩壊の経済への影響を抑
えるため米国の中央銀行FRBが実施した急激(かつ頻繁)な利下げは、米国とユ
ーロ圏、つまりはドルとユーロの間にあった金利差の逆転をもたらした(ドル金利
よりユーロ金利の方が高くなった)。それもわずか1年という短期間にである。こ
れもドル離れを後押しすることになる。ちょうどNY株式の投資妙味が薄れ始めた
時期と重なったためだ。エンロンに代表される会計疑惑の問題もそこに加わる。

最初はチョロチョロと目立たない流れが、それなりの主張を持った流れに転じ、奔
流となり始めたのが、いまのドルとユーロの関係ではないかと思う。運用の受け皿
としてのドル資産の魅力が落ちているのと、むしろここに来て米国自体がドル安を
望んでいるかに取れる状況(この1週間のスノー米財務長官の発言内容)の発生が、
さらにドル離れを加速させているようにも見える。まだ、米国自身が危機感を持つ
までには至っていないし、それほど騒ぐ必要もないのかも知れぬが、世界経済の状
況を考える場合、無視はできない。

当初は、適度なドル安は、米国企業の輸出競争力を高め、プラスであるとの見方を
していたNY株式市場も、行き過ぎたドル安見通しは外からの資金流入で回ってい
る米国経済にとってむしろマイナスとの解釈から週明け19日以降軟調展開に戻っ
てしまっている。

いずれにしても、市場は“やっと(当欄の捉え方としては「やっと」という表現に
なる)”米国経済の先行きを懸念し始めた。昨年、5000億ドルを超えて驚いた
米国の経常収支の赤字(多くは貿易赤字)は、今年6000億ドルという空前の規
模に達するとの予想も米系証券会社により為されている。従来であれば、ドル預
金、米国株、債券、米国企業への直接投資(M&A)など魅力あふれる投資対象が
あり資金を引きつけてきたため、これらの赤字は賄われた。ところが、米国自体が
資金を引きつける妙味が薄れたところへもってきて、赤字はどんどん膨らむという
のだから、さすがに市場関係者の多くは心配になってきたというわけだ。つまり、
継続的なドル安は、そのまま先行きの米国経済への懸念を映し出したものとなる。

前回取り上げたように「利下げ」という金融政策上の切り札も限られていること
も、心配のタネである。おまけに2003年度は財政赤字も記録的水準となること
が予想されてもいる(3000億ドル超)。そのなかで、政府が打てる手段として
「ドル安への誘導」が選択肢としてあるのだが、これは過去数年来の政策を変更す
ることを意味する。市場関係者がスノー米財務長官の発言に神経質になるのは、こ
のためだ。舵取りを誤れば、ドル急落となり世界経済も少なからぬ影響を受けるだ
ろう。そうした不安が、ここにきての金価格の上昇に映し出されている。
(5月20日記)


金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、実際の投資にあたってはお客様ご自身にてリスクをご判断ください。


http://www.sumitomo-gold.com/market/index.html


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