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アナリスト: 大槻奈那、東京 電話 03-3593-8685
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りそな銀行が政府に対し資本注入を申請すると決めたことを受け、スタンダード&プアーズは本日、同行の格付けを「クレジット・ウォッチ」に指定した(本日付プレス・リリースを参照)。その他の大手行については、近い将来、同様の措置が取られる可能性はあるものの、現時点でただちに格付けを変更することはない。今後、他の大手銀行に対する公的資金の注入が決定された場合は、実質的な資本の増強度合いや中期的な財務基盤の改善度合いなどに基づき、格付けへの影響を個別に判断することになる。
スタンダード&プアーズの大手行に対する格付けには、政府が必要に応じて資本注入などの支援を提供する可能性が極めて高いことが反映されている。支援の手法として預金保険法102条1項1号にもとづき破綻前の支援が行われる蓋然性が他の選択肢に比べて高いとみていた(2002年10月9日発表の「S&P、内閣改造で邦銀とソブリンの格付けに新たなシナリオが浮上」参照)ため、今回のりそなの公的資金申請は、政府のサポートに対するスタンダード&プアーズの見方を大きく変更させるものではない。
また、りそなが公的資金の注入を申請した背景の1つに、監査法人による繰延税金資産の減額があるが、繰延税金資産に依存しているという点では他の大手行も同様であることから、今後、影響が他の大手行グループへと拡大する可能性がある。ただし、スタンダード&プアーズは1998年以来、格付け分析にあたって、繰延税金資産を質の低い資本とみなし、株主資本から一部を差し引いているため、大手行の資本の状況に対する見方が大きく変化することはない。市場の動揺に伴って、今後、各行の資金調達条件に何らかの影響がでる可能性がある点にも注視が必要であるが、日銀による流動性支援の枠組みがあることから、現時点では大手行の格付け上、大きな懸念材料にはならないと考えている。
今後、大手行が政府から資本注入などの支援を受けた場合には、主に以下のような点について個別に検証し、その結果によっては格付けやアウトルックを見直すことになる。
・ 資本注入の規模が事業リスクに対して十分か
スタンダード&プアーズでは1998年3月、1999年3月の大手行への公的資金注入の際、注入を受けた各行の格付けを上方修正しなかった。各行の事業リスクに鑑みて、資本注入の額が十分ではないと判断したためである。
・ 資本注入が普通株など「質」の高い形態で行われるか
前回までの公的資金の注入は主に優先株と劣後債の形で行われたため、スタンダード&プアーズは資本の質の面からも十分でないと考えていた。今後、資本注入が行われたとしても、固定の配当支払いを伴うものや将来的に償却されることを前提としたものなど、資本性の低い形態で行われるのであれば、実質的な自己資本基盤の改善にはつながらず、格上げには至らないだろう。
・ 公的資金注入後、経営体制や資産の質の改善に向けて十分な施策がとられるか
前回までの公的資金注入では、不良債権処理や保有有価証券の損失などに伴って再び資本不足が発生することとなった。また、与信判断が旧来の取引関係によって歪められリスクに見合った利鞘を求められない、サービスに見合った対価を徴収できない、といった収益の制約要因が排除されなかったことなどにより、コアの収益性は計画ほどには改善していない。デフレからの脱却の遅れも資産の劣化に拍車をかけている。さらに、公的資金注入に際して、中小企業融資などの公的な役割が再び政府から要請されるようなことがあれば、銀行の財務内容に影響を与える可能性がある。格付けは3−5年程度の中長期的な信用力見通しに基づくものであるため、資本注入によって一時的に自己資本比率が上昇しても、経営に抜本的な改善が見られず、前回までと同様に再び資本が毀損すると予想されるのであれば、格付けが上方修正されることはないだろう。
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