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低迷する東京株式市場で、証券会社自身が売買の主役に躍り出ている。収益の柱だった売買手数料収入の激減に見舞われた中堅・中小証券が自己売買部門を強化しているためだ。ただ、「投資家層の拡大という業界の課題に逆行する」という批判に加え、規制強化の逆風も吹き始めている。
東京証券取引所にほど近い東洋証券のディーリングルーム。約20人のディーラーが、それぞれのデスクの上に並ぶ10台前後の情報端末の画面に目を走らせていた。
一人当たり数億円を割り当てられ、独自の判断で株などを売買する。本島栄取締役は「自己売買は大きな収益源の一つ」と話す。
市況の低迷で、証券会社は投資家からの注文を取り次いで得られる売買手数料が減少。特に固定客に支えられていた中堅・中小証券は顧客がネット取引に移行したりして注文が激減したうえ、大手3社のように業務の多角化に力を入れる資金的余裕に乏しい。
そこで活路を求めたのが自己売買だ。売買代金のほぼ100%が自己売買という会社も10社前後ある。東証など主要3市場での売買代金全体に占める自己売買の割合はバブル期の89年前後には20%台前半だったが、昨年8月には39.2%まで達した。
自己売買のディーラーの数は、東証がある兜町周辺だけで1500人とも3000人とも言われる。中堅証券のベテランディーラーによると、80年代には数百人程度だった。今や1社で50人ほど抱えるところも珍しくない。
ディーラーの大半は、99年に閉鎖された東証の立会場で売買の仲介をしていた「場立ち」の経験者。97年に破綻(はたん)した山一証券と三洋証券のOBも多いという。
00年前後のIT(情報技術)バブルでは、年収が1億円を超す「1億円プレーヤー」が10人ほどいたとされ、このころから優秀なディーラーの奪い合いが始まった。
雇用形態は東洋証券では正社員だが、歩合制の契約ディーラーも多い。証券会社にとっては固定費が抑えられ、成果が残せなければ解雇も難しくない。利益の数十%が報酬になるが、損をしたら「自腹」という契約を交わす会社も多い。こうした手軽さも各社が自己売買の拡大を進める要因になっている。
しかし、自己売買を取り巻く環境は厳しさを増している。大きな逆風は金融庁が昨年9月に導入した信用売りへの価格規制だ。
信用売りは借りてきた株券を売り、株価が下がった段階で買い戻して利ざやを得る手法。金融庁の規制で、株価の下落局面では、直近の株価より高い水準でしか信用売りが出来なくなった。株価操縦的な売りを防ぐ狙いだったが、「下落場面では指をくわえて見ているしかない」と中堅証券ディーラー。
03年3月期決算で、株式売買金額の自己売買比率が96%を占めた光世証券も、前期に6億円稼いだ株式の自己売買損益が赤字になった。
さらに今年3月、金融庁は株価対策の一環で、自己売買の取引量に上限を設けるよう業界に要請した。金融庁は「投資家保護」を掲げるが、ディーラーの間では「自己売買が株安の悪玉の一つと見られている」という。
6月には、上場銘柄ごとにどの証券会社がどれだけの株数を売買したかを示す「手口情報」について、東証が開示をやめる。自己売買のディーラーが売買の参考にしていた重要な情報だ。
自己売買には、一般投資家のように証券会社に手数料を払わなくていいという「特権」がある。このため自己売買の拡大に対しては、もともと業界内にも「投資家の注文を仲介するという社会的使命を果たしていない」という批判がある。市場が「プロだけの世界」になり、ますます投資家が遠のくという懸念だ。
ただ、規制強化は、株式売買の流動性をさらに低め、結果的に市場の魅力低下につながるジレンマも抱える。あるディーラーは「個人投資家が少ない中、すでにディーラー同士の戦いになっている。今後、淘汰(とうた)が進むだろうが、それで個人投資家が増えるわけでもない」と指摘している。
■自己売買 証券会社が自社の勘定で、株式や債券などを売買すること。かつては投資家の注文に基づく委託売買の「補完業務」とされていた。90年代に金融自由化の流れで徐々に規制が緩和され、98年の改正証取法で「主たる業務」の一つとして位置づけられた。 (05/06 01:57)
http://www.asahi.com/business/update/0506/001.html