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日本の製造業の賃金は世界一高いのか――。自動車や電機メーカーなどの労働組合で作る金属労協(IMF・JC)が春闘交渉のさなかに日本経団連の公表している賃金の国際比較に異議を唱えたのをきっかけに、5月下旬に両者が協議の場を設けることになった。今年の春闘では経営側から定期昇給の見直しなど賃金カットの「逆提案」が相次ぎ、依然として多くの企業で賃金制度の労使交渉が続いている。「労使の総本山」も異例の延長戦に入る。
論争の始まりは、日本経団連が昨年12月に発表した経営側の春闘交渉指針「経営労働政策委員会報告」に掲載された賃金のデータだ。日本の製造業の時間あたり賃金を100とすると、アメリカは93、ドイツは76となり、日本の賃金が「先進諸国のなかでもトップレベルにある」と結論づけている。
これに対し、金属労協は今年2月末に日本経団連に公開質問状を送り、鈴木勝利議長は「きわめて意図的な『まやかし』だ」と批判した。
金属労協が最も「アンフェア」としているのは、日本経団連がアメリカやドイツの時間あたり賃金では労働時間に有給休暇取得分を入れて計算しているのに、日本については有給休暇を除いた「実労働時間」で計算している点。有給休暇分も労働時間にカウントすれば、働く時間が長くなって時間あたり賃金は安くなる。
金属労協は実労働時間でそろえ、賃金に福利厚生費や社会保障費などを加えた人件費で計算すれば、日本の時間あたりの人件費は、「先進諸国の中では中位にすぎない」としている。
日本経団連は4月7日、金属労協の公開質問状に対し、「データの取り方は従来から一貫した考えのもとで行っており、自信を持っている」と回答し、具体的な反論は避け、その代わりに5月下旬に担当者レベルの意見交換を提案した。金属労協も応じる考えだ。
回答にあるように、日本経団連は旧日経連時代から同じ基準で国際比較をしてきた。金属労協はこれまでの春闘でも問題提起してきたが、今年、あえて公開質問状を出したのは「今春闘で、経営側が日本経団連のデータを盾に、賃下げを迫るケースが続出した」(金属労協幹部)ことに危機感を深めたからだ。
調査研究機関の日本労働研究機構が試算した2000年の製造業の時間当たり賃金の比較では、日本を100とすると、ドイツが112で日本を上回るが、アメリカ89、フランス87、イギリス55といずれも低い。一方、同じ商品をいくらで買えるかという観点からみた購買力平価でみると、ドイツ175、アメリカ143、フランス134、イギリス82で、物価が高い日本は、生活実感として賃金は低いとも言える。
第一生命経済研究所の松村圭一副主任研究員は「各国で統計の基準が異なるうえ、為替レートの影響も受けるので、いろいろな見方ができる」と、賃金の国際比較そのものが難しいとする。一方で、「同じ物を生産するのに必要な労働コストという点からみると、一部の企業をのぞいて、日本の製造業は低くはない。非製造業をいれると、高コスト体質」と指摘している。
(2003/5/4/22:19 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/business/news/20030504ib23.htm