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生命保険会社が契約者に約束した運用利回り(予定利率)の引き下げを巡る動きが、連休明けの6日から再び本格化する。引き下げは、契約者にとって、保険料引き上げか保険金減額につながる。このため、国民の反発を恐れた与党が統一地方選前に論議を凍結した。しかし、選挙が終わったうえ、最近の株安が生保経営を一段と圧迫していることから、論議再開に踏み切る。金融庁は、引き下げを可能にする保険業法改正案の今国会の成立に向けて与党や生保業界との調整を急ぐ構えだ。 【小林理、中村篤志】
●追い詰められる生保
予定利率引き下げの目的は、生保の運用実績が予定利率を下回る「逆ざや」を解消し、生保経営の安定化を図ること。バブル期前後の年5〜6%という高い予定利率の保険契約を多数抱えているため、主要生保(10社)の「逆ざや」は03年3月期に計1兆2000億円にのぼる見通しだ。
高木祥吉・金融庁長官は「当面、(健全性の目安である)ソルベンシーマージン比率が警戒水準に陥る生保はない」と生保危機説を否定するが、金融庁の本音は「逆ざやが続けば、中長期的に生保の経営は難しくなる」(幹部)というものだ。
さらに、議論が急展開しそうな背景になっているのが、株価の下落。4月に入って、バブル経済崩壊後の最安値を更新し続け、日経平均株価の7000円割れの懸念まで出てきた。株安は、保険料を長期運用するため大量の株式を保有する生保の経営を直撃する。日経平均が7972円という03年3月期末の水準で、日本生命、明治生命以外の大手生保は含み損に陥ったと見られる。大手生保7社の同期末の株式による含み損は、計2兆円に達する見通しだ。
与党が求める時価会計見直しも「真の狙いは生保救済」と見る関係者は多い。企業の会計基準を決める財務会計基準機構の議論でも生保向けに特別ルールを設ける案が浮上している。政府は「生保だけの例外は考えにくい」(伊藤達也副金融担当相)と特別ルールには否定的だが、「会計基準は無理だが予定利率なら何とか、という駆け引きの材料になりうる」(金融庁幹部)との声も出ており、多数の契約者を抱える生保の経営問題は、政治色を強めつつある。
●業界は長期化を警戒
「契約者の不安を引き起こし、解約増につながる」と、当初は予定利率引き下げに反対してきた生保業界も、微妙に変化し始めている。
昨年7月に「顧客の財産権を侵す恐れがあり、好ましくない」と反対姿勢を鮮明にしていた横山進一・生命保険協会長も今年3月には「議論が始まった以上、きちっと結論を出すべきだ」と軌道修正。経営環境の一層の悪化から、予定利率引下げもやむなしという空気が漂い始めている。
金融庁は4月以降、大手生保の首脳と個別に接触し、予定利率引き下げに理解を示すよう要請した。業界側は「連休明けの議論本格化に向けた地ならし」(大手生保幹部)と受け止めている。
こうした中、生保各社が心配するのは引き下げ議論の長期化で契約者が動揺し、解約が増えること。生保の相談窓口には「将来も予定利率を引き下げないことを約束する念書を作ってほしい」などの注文も相次いでいる。一部生保の解約率は高止まりしており、経営の懸念材料になっている。「予定利率引き下げを可能にする制度を導入するなら、早期に決着させてほしい」(中堅生保)との本音が漏れる。
●引き下げの下限は年3%
生保の予定利率引き下げを可能にするため、金融庁が統一地方選前の3月に水面下で固めた保険業法改正案の原案には、(1)生保が自主的に同庁に予定利率引き下げを申請(2)申請後の資金流出を防ぐため解約は一時停止(3)生保は人員削減や経営陣退陣による経営責任明確化などを盛り込んだ経営健全化計画を策定(4)予定利率引き下げの下限は年3%程度(5)総代会で4分の3以上が賛成し、契約者からの異議申し立てが1割を下回れば引き下げを承認――が、骨格として盛り込まれた。
原案で、引き下げの下限を年3%程度に設定したのは「破たんより契約者に有利な制度」(金融庁幹部)にするため。01年に更生特例法を申請し破たんした東京生命の場合、破たん後に予定利率を年2.6%に引き下げたことも念頭に置いた。
実際には、この仕組みを使って予定利率引き下げに踏み切る生保は契約者の信頼を失うため、独力で経営を改善するのは極めて困難だ。このため、引き下げの前提となる経営健全化計画では、スポンサー企業による支援や他の生保との合併・買収が必要になることを想定している。
◇生保の予定利率
生命保険会社は契約者から集めた保険料収入を資産運用する。予定利率は、生命保険会社が契約者に約束した運用利回り。現行法では、生保は経営破たんしない限り、予定利率を変更できない。引き下げが認められると、契約者は、保険料引き上げに応じて契約内容を維持するか、利回りが下がる分、将来受け取る保険金が目減りする。
予定利率は、80年代から90年代前半まで年5〜6%台の高率だったが、現在は超低金利を反映して1%台半ば。金融庁が検討している引き下げの下限3%が適用されると、引き下げ対象は96年4月1日以前の契約者。その数は各社により違うが「契約件数ベースで半数程度」(大手生保)なる見通し。
[毎日新聞5月3日] ( 2003-05-03-23:48 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/keizai/20030504k0000m020126000c.html