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BNPパリバ証券会社・経済調査部チーフ・エコノミストの河野龍太郎さん(Ryutaro Kono/Chief Economist, BNP Paribas Securities(Japan) Ltd.)は、「貸し渋りの主たる原因も、資産デフレとデフレにあり、それへの対応策も資産デフレとデフレの除去ということになる」と指摘する。過小資本の金融機関を放置してはならない理由は、それが貸出低迷や貸渋りにつながるからではなく、「過度なリスクテイクを抑制し、過小資本の金融機 関の破綻処理コストを拡大させない」ためである。「銀行部門の自己資本不足を解消してマクロ経済を回復させる」という考え方は、適切とはいえないと言う。マクロ経済の回復を目的とするならば、「低迷の原因となっている資産デフレとデフレを直接除去する政策を検討すべきである」
<資産デフレ+デフレ=企業倒産確率の上昇> 金融機関による「貸し渋り」が生じているのは事実。これに対して河野さんは、実際に生じているのは次のようなことだと見ている。まず、(1)デフレや資産デフレによって、企業の業績やバランスシートが悪化する。(2)金融機関は資産デフレやデフレによって倒産確率の高まった企業に対して、リスクに見合った利ざやを求めるだろうし、追加融資を依頼された場合、それに躊躇するだろう。金融機関のこうした対応は明らかに、企業から見れば「貸し渋り」である。 しかし、この「貸し渋り」は、金融機関の自己資本の不足やそれがもたらす貸出し能力の低下からというよりも、「資産デフレやデフレの影響による企業の倒産確率の上昇がより大きな原因となって起きている」。もちろん、銀行貸出債権に対する査定の厳格化も大きく影響しているだろうが、これも金融機関の自己資本不足が原因とはいえない、と言う。金融機関の自己資本が充実していても、不足していても、「倒産リスク の高まった企業に対して、金融機関は同じ行動をとるはずである」
<むしろ過小資本が銀行行動をリスキーにする> むしろ、反対に、「自己資本が不足している金融機関は過大なリスクをとる可能性がある」とも言う。一般には、金融機関の自己資本が不足すると金融機関のリスクテイク能力が低下すると考えられている。しかし、「実際には、自己資本が不足した金融機関は起死回生を狙って過度なリスクをとることが多い」と言う。「過小資本が銀行行動をリスキーにする」というのは世間の常識とは全く逆のように見えるかもしれないが、これは経済学ではこれは常識に近い。 例えば、80年代のアメリカのS&Lはこの典型的な例である。また、80年代後半のバブル生成についても同様の説明を行うことができる。90年代の日本で見られた問題企業への貸出継続、あるいは「追い貸し」についてもこのロジックが当てはまる。
<97-98年:過小資本→追い貸し→破綻処理コスト拡大> バブル崩壊後も98年頃までは、不動産業や建設業など 問題を抱える業種への融資は増加していた。「追い貸し」によって破綻が運良く回避され健全さを取り戻せば、それはハイリターンとなるかもしれないが、デフォルトの可能性が高いとすれば、それは決してリターンに見合ったリスクをとっているとはいえない。そもそも問題企業とはデフォルトの可能性が高いのであるから、極度なリスクテイクである。だが、過小資本に陥った金融機関にとっては失うものがないため、過大なリスクをとることは、「私的利益の最大化としては合理的な行動となる」。 しかし、その金融機関が破綻に至れば処理コストは大きく膨らみ、社会的コストは拡大する。97年末から98年にかけて、問題銀行のいくつかは破綻に追いやられたが、金融機関の過小資本が「追い貸し」という極端なリスクテイクにつながり、処理コストを大きくした可能性は否定できない。