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電子部品株にSARSの影――日経金融スクランブル
23日の東京株式市場では前日の米国株高にもかかわらず日経平均株価が小動き。ここへ来て冷え込んだ投資家心理に追い打ちをかけているのは、新型肺炎の重症急性呼吸器症候群(SARS=サーズ)への不安感だ。
SARSは中国や東南アジアなど世界各地に広がり、治療法が見いだせないまま被害は深刻化している。松下電器産業が現地工場の生産ラインを一時停止するなど日本企業にも具体的な影響が出始め、「これまで楽観し過ぎていた可能性がある」との声も聞こえだした。
これまで市場でSARSが売り材料となった銘柄は、航空や旅行会社など実害が出ているものか、中国関連株として人気を呼んでいた日立建機や資生堂など投資家の認知度が高いものばかりだった。しかも警戒感が本格的に強まったのはここ数日。SARSリスクが株価に織り込まれるのはこれからになりそうだ。
株式市場への影響を探るため、中国を含むアジアの売上高比率が大きい企業をピックアップした。対象は決算発表が間近に迫り市場での注目度が高い3月期決算の全上場企業。うち約330社が2002年9月中間決算で「アジア」や「東南アジア」「中国」といった地域別売上高情報を開示していた。
特徴はアジアの売上高比率が高い銘柄に電子部品関連企業が目立つことだ。トップの太陽インキ製造をはじめ、上位には太陽誘電(2位)やTDK(3位)、ローム(5位)、ミツミ電機(6位)、村田製作所(23位)などが並ぶ。グローバル競争に勝ち抜こうとアジアに生産拠点を求めた結果だ。
この数字だけから収益への影響度を断言することはできないが、SARS感染による工場閉鎖など万が一の時に業績に与える影響が大きいとみられ、リスクを注視すべきであることは間違いない。
実際、このリスクが顕在化する可能性も出ている。21日に開いた日銀の支店長会議では、ロームや村田製などが本社を構える京都管内の報告で「(輸出は)先行き、イラク情勢やSARSなど海外環境を巡る不透明感が高く、管内部品メーカー等ではここしばらく低い伸びにとどまるとの見方だ」と指摘された。日銀が各メーカーから聞き取った内容と考えられる。
マクロの経済統計が1カ月以上遅れるため、SARSの影響が数字で明確に出るのは5月以降となることも、不透明感を高めている。財務省が23日発表した3月の貿易統計では中国からの入超額は前年同月比21%減少した。統計のぶれの一つと見られるが、神経をとがらせる市場関係者は「早くもSARSの影響で貿易が減り始めたのでは」(準大手証券)と疑心暗鬼になっていた。
アジアの比重が高い銘柄の23日終値をSARS流行前の2月末と比べると、全般に日経平均株価(下落率6.8%)よりも堅調な銘柄が多い。だが「渡航延期勧告となった北京のように、人や物の移動が急に滞るなど、潜在的なリスクを考えておく必要がある」(第一生命経済研究所の嶌峰義清主任研究員)。
特に決算発表の際には、SARSの影響見通しが最大の関心事となるのは確実だ。東海東京調査センターの中井裕幸投資調査部長は「状況が不透明なため、企業側がネガティブな発言をする可能性がある」と下押し圧力が強まることを懸念する。
世界で唯一の成長セクターとも言われるアジア。株式市場でも期待が大きかった分、反動を懸念する声は多い。
(小野利也)