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UBSウォーバーグ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん(Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Warburg (Japan) Ltd.)は今日のポイントとして、「福井日銀のパフォーマンス」を挙げる。
<1:方向性は正しいが、思い切りの悪い政策運営が継続> まず第1に、「国債嫌いを確認したものの、パンチ力に欠ける」と語る。福井日銀は、発足早々、株式買取り枠の3兆円への増額、資産担保証券の買取り検討を打ち出した。さらには、法定準備率の一時的な引き上げ(当期剰余金の5%から15%へ)に関し、財務省を説得した模様である。予想通り、福井日銀は国債嫌いのスタンスを示した。しかし、「迫力に欠ける」。日銀として、「輪番オペの弊害を本当に大きくみてい るのであれば、『輪番オペの減額』とともに(法的な制約を覚悟の上で)ETF 購入の検討などを打ち出すべきであろう」。また、国債バブルを正面切って批判することも必要ではないか、と言う。法定準備率の引き上げも10%ポイントであれば、剰余金を昨年度とほぼ同額の1.5兆円と見積もっても、2,250億円の準備金積み増しに過ぎず、「これでは日銀の自己資本比率を0.3%強上昇させるだけのこと」である。 自己資本比率が7%台の前半にある日銀が本気になって信用リスク資産を購入しようとすれば、「少なくとも1兆円程度の準備金増強が必要」と見る。準備率で言えば、70%程度への引き上げが必要ということである。
<日銀をあてに長期国債を買い続けること避けるべき> つまり、「方向性は正しいが、思い切りの悪い政策運営が継続している」ということである。 ただ、福井日銀には迫力がないとはいえ、国債市場に冷たいことは疑いの余地がない。財務省が期待する輪番オペの月額2兆円への増額が実現する可能性は低いと言う 。補正予算導入(3−5兆円)があったにせよ、増額は1.6兆円止まりであろう 。「日銀をあてにして長期国債を買い続けること避けなくてはならない」と注意を促す。
<2:縦割り行政を壊すどころか、維持するスタンス> 第2に、「縦割り行政を壊すどころか、維持するスタンス」と言う。福井日銀は、現状で評価する限り、財政や銀行監督といった「他人の領分」については、一歩下がって臨んでいる。速水前総裁は、就任当初から、財政政策や銀行健全化政策に関して、かなりはっきりと注文をつけた。「福井総裁にそうした意気込みは感じられない」。むしろ、日本的な縦割り行政を守るスタンスにある。「財政政策や金融行政は財務省や金融庁の所管であるから、日銀として口出しはしない。そのかわり、金融政策に対して、口出しもさせない」、という姿勢である。福井日銀が構造改革を主導するシナリオは、今のところ、採りにくい。速水日銀に比べ、福井日銀は「より保守的」であるかもしれない、とも言う。
<3:機動力得るため、政治家を意識し過ぎ> 第3として、「政治家を意識し過ぎ」と言う。福井日銀は機動力を重視している。そして、機動力を重視する背景には、政治家から好意的な評価を受けたい、という思惑が働いてい る。福井総裁就任直後の臨時決定会合の開催はその典型例である。今後も、政治から圧力がかかれば、それなりに対応する姿勢を見せることになるだろう。しかし、「実体のない政策を連発することになる可能性が高い」。政治的なジェスチャーという点で高い能力を有しているのが、福井日銀である。
<次は、物価参考値の導入検討で時間を稼ぐ?> 資産担保証券で時間稼ぎをした後は、物価参考値の導入検討で時間を稼ぐ腹積もりと見ている。物価参考値は、目標値とは異なり、ある物価上昇率の達成期限や達成義務を伴うものではない。基本的には、「設定された物価上昇率の参考レンジから実際の物価上昇率が乖離した場合に、政策変更をより真剣に検討する」ということである。こうした政策フレームワークは、物価水準を引き上げるためのツールではなく、「物価下落のペースが加速しない限り、政策変更はしない」という、現状追認型のツールとなる。福井日銀がこうした政策を打ち出すことの最大の意義は、「政治からの風圧を緩和することであり、金融政策の枠組みを変えることではない」