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三洋電、道半ばの企業改革――日経金融新聞スクランブル
株式相場の低迷が長期化するなかで、企業の経営改革はよほど思い切ったものでない限り、株式市場で評価されにくくなっているようだ。韓国のサムスングループや中国のハイアールグループなど、東アジアのトップ企業を模範に厳しい競争原理を取り入れ、組織改革を断行した三洋電機もその例外ではない。
三洋電が3月17日に組織改革を発表してから1カ月。発表前に310円だった株価は4月半ばに400円近辺まで上昇した後伸び悩み、22日は370円で終えた。この間に日経平均株価は1%安、松下電器産業やソニー、シャープなど主要電機株も軒並み下げたのに比べれば堅調と言えるが、昨年の高値(680円)には遠く及ばない。
今回の組織改革では事業を280のビジネスユニット(BU)に分け、責任を明確化。3年連続で赤字なら原則撤退する。また全体を大きく顧客ごとに4企業グループに分類、将来の持ち株会社化への布石とした。 市場の反応も「事業の撤退基準をより明確にしたこと、報酬を従来以上に業績連動にしたことなど評価したい」(大和総研の三浦和晴アナリスト)と、組織改革自体には総じて肯定的な意見が多い。
「我々はモノの管理ではアジアに先んじてきたが、全体のマネジメントは必ずしもそうではなかった」。こう見る三洋の井植敏会長は「厳しい社員教育やスピード経営など、この1年の間にサムスンなどから多くを学んだ」と話す。今回の組織改革もその延長線上にある。
三洋電は1969年にサムスン電子とともに合弁会社を設立、それ以来長い付き合いの歴史がある。創業者同士の個人的な結びつきがきっかけだった。2002年には燃料電池で技術提携。今年4月10日には家庭用エアコンの共同開発でも提携を発表した。
三洋電がサムスン側に技術提供するといった当初の関係は様変わりしている。すでに売上高や利益はサムスン電子が三洋電を大きく上回る。「経済危機に直面して韓国企業は大きく変わった。日本を脅かしつつある」と井植会長が言うのも無理もない。
だが「サムスンから学ぶ」ことは実際にはそう簡単ではなさそうだ。例えば外国人持ち株比率。サムスンの場合、97年末には29%にとどまっていたが、98年5月に韓国で外国人の持ち株規制が完全に撤廃されたこともあって、その後は50%台で推移している。
事実上のグループ内の持ち合いがあり、経営権が脅かされる可能性は実際には少ないが、それでも5割を超えた「物言う株主」の存在は経営に大きな圧力だ。これが経済危機後の改革の後押しをしたのは間違いない。
それに対して三洋電の場合、同比率は10%前後。ここにきて低下傾向にある。
2003年3月期の最終赤字転落の大きな要因になった銀行との株式持ち合いも本格的な解消に動く気配はない。
信賞必罰の人事制度導入で社員には緊張感を求める一方で、経営者は株の持ち合いに安住する――。こうした中途半端な改革なら、市場から真の評価を得るのは難しい。
投資余力にも差が出ている。豊富な営業キャッシュフローを背景に、半導体や液晶パネルなどに巨額の設備投資を続けるサムスン電子だが、三洋電はバランスシートの早期改善という課題を抱える。デフレの長期化は日本企業に無駄な借金を許さなくなっている。
日本経済が長期低迷を抜け出す一つの方策として、官民での東アジアとの連携が叫ばれて久しい。その意味で三洋電の取り組みはそれを先取りするものと言える。サムスンやハイアールとの協力関係をどう根本的な経営改革に結びつけるか。市場は三洋電の次の一手を注目している。(橋本隆祐)