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イラク戦争は、予想通り米軍が圧倒的装備にものを言わせる形で、また予想外にイ
ラク側の抵抗が見られない形で、ひとつの区切りが付く気配である。すでに戦後を
睨んだ動きが始まっている。
先週末ワシントンで開かれたG7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)では、各国
が抱える経済上の問題点に関する討議という本来の議題は二の次に、米国側(議長
国)の意向によりイラクの復興支援問題に時間が割かれたと伝えられている。“戦
前の流れ”はここでも見られ、米英主導型(実質米国主導)の復興策か、国連を中
心軸とする多国間協議での復興かで米仏の意見が割れたとされる。復興を睨んだイ
ラクの対外債務軽減問題に関しても、意見が分かれた。ちなみに米国は、「復興」
は経済分野が中心となるのでIMF(国際通貨基金)や世界銀行が主導する形を前
提にしている。もともとこれらの国際機関は、米国の影響力が強いとされ、従来か
らIMFや世界銀行を前面に押し立てることで(隠れ蓑にして)、米国は自国の国
益に適う方向で様々な問題を処理してきた過去の経緯がある。今回のG7では結果
的に、「国際的な枠組みでイラクを支援。さらなる国連安保理決議を支持」、「復
興支援で世界銀行とIMFを活用」と両サイドの主張を盛り込む形での折衷案のよ
うな「共同宣言」となっている。
いずれにしても「戦前」に際立つことになった米欧間(正確には米と独仏)の溝
は、今後どう進展するのか、政治面よりもむしろその世界経済への影響が心配され
る。今回のG7も(例えば米国の赤字問題など)将来の国際金融情勢を揺るがしか
ねない足元に存在する個別の問題を協議するのではなく、イラク問題に時間を割か
ざるを得なかったということが、それを物語るわけだ。もっとも、すでにこうした
国際会議自体が空洞化しているという意見もある。G7も「ここにきて戦争終結に
目途がついた、したがって不確実性は減少した」とするが、世界に楽観的見通しを
発表するスタンスは毎回同じで、確かにルーティン化は否めない。
そこでこうした時、今のような環境を投資家がどう捉えているのかを判断するの
に、株式市場を見るという方法がある。一般に株式市場は、経済の先行きを示すい
わゆる「先行指標」とされている。これは株価には将来利益を反映するという側面
があることからきている。足元より将来の状況に明るさを見て取ると株価は上昇基
調をたどるということだ。
そこでNYダウの先週の動きを見ると以下のようになっている。
始値 高値 安値 終値 前日比
4月7日(月) 8284.15 8550.40 8272.24 8300.41 +23.26
4月8日(火) 8299.12 8382.43 8222.24 8298.92 +1.49
4月9日(水) 8299.28 8404.25 8174.90 8197.94 −100.98
4月10日(木)8198.99 8274.56 8109.85 8221.33 +23.39
4月11日(金)8232.22 8360.76 8156.77 8203.41 −17.92
先週の市場環境のポイントは、首都バクダッドが大きな抵抗もなく陥落したことか
らイラク戦争の想定を上回る早期決着が見えた週ということである。つまり市場が
想定したことが現実になる可能性が高まった。そこで株価の推移を見ると、9日
(水)はやや下げ幅が大きかったものの、週を通し小動きに始終しているのがわか
る。結果としては、「おやっ?」という感じである。もう少し反応してもいいので
はと。
そこで、それぞれ発表された経済データや当日のイラク戦の戦況などと照らし合わ
せ個別に見ていくと、(ちょっと大袈裟に表現すると)この一群の数字が物語るも
のが見えてくる。
まず7日。この日の特長は、取引開始直後に高値を記録たものの(前日比約300
ドル高)それを維持できず、時間の経過とともに売りに押され、値を消したという
ものだった。具体的には、バクダッド包囲から間を置かず市内侵攻という米軍の動
きを受け、早期終結見通しが高まったことから買われたものの、高値では売りがま
とめて出た。その面では9日など、バクダッド陥落でフセイン像が米軍とイラク民
衆の手で引き倒されるという展開の日に、やはり前日比100ドル以上買われたも
のの終値では逆に100ドル以上安かった。
先週末11日の展開も似ている。この日の材料はイラク戦ではない。まず発表され
た3月の小売売上高が予想をはるかに超える2.1%の伸びとなったこと、加えて
この日決算を発表したGE(ゼネラル・エレクトリック)の純利益が20%(1−
3月期前年同期比)もの伸びを示したことから一時上げ幅は130ドルを超えた。
しかし、やはり勢いは続かなかった。結局ダウは前日比マイナスで終わり、好業績
を発表したGEも一時上昇したものの小安い展開だった(2セント安)。
この動きは何を物語るのか。先月3月24日配信号にて開戦前後のNY株の派手な
戻りは、ヘッジファンドなどの空売りの買戻し(ショート・カバー)であり、「こ
こからが“見所(みどころ)”つまりは正念場であろう。問題はこの上を誰がどこ
まで買うのか」としたが、ここまでの展開は、それを示している。1日あるいは1
週間の株価の値動きから判断するテクニカル分析からしても、上値を売られる展開
は弱いといえる。株価が戻している期間に株式投信が解約されていたという事実
は、投資家が戻り局面を“売り場”として捉えていたことを示すものでもあろう。
したがって、株式市場はイラク戦後の先行きを楽観していないことを表わすととも
に、投資家は運用対象としての株式に見切りをつけ始めているというと言い過ぎで
あろうか。今週も主要銘柄の決算発表が予定されており要注目である。時間の経過
とともに悪環境を織り込むのも株式市場の常ではあるが、SARS(重症急性呼吸
器症候群)の発生など欧米以外の成長セクターであった中華圏経済への懸念の高ま
りもあり、当面弱含みの展開が続きそうだ。
そのなかで金市場は、325ドル近辺の狭いレンジでの取引が続いている。
(4月14日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、実際の投資にあたってはお客様ご自身にてリスクをご判断ください。
http://www.sumitomo-gold.com/market/index.html