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l ヘッジ急増が落とす影――日経金融スクランブル
18日の東京株式市場では、日経平均株価が反発したとはいえ7900円近辺で急速に伸び悩んだ。株価が戻す場面で厚生年金基金の代行返上に伴う売りが重しになる構図はなお変わらないが、先安に備えて幾層にも重なった投資家のヘッジ取引の影響を指摘する向きが増えている。UFJホールディングスは3月末に「UFJエクイティインベストメンツ」を設立した。持ち合い株式を管理する日本で初めての会社で、UFJから5000億円程度の株式が移管される。「取引先との関係で売ることはない株式」だが、4月末からは金融派生商品(デリバティブ)を使ったヘッジ売りを計画しており、そのためにわざわざデリバティブの専門家を新規採用した。東証に上場している東証株価指数(TOPIX)先物の建玉が増え続けている。中心限月ベースで時系列にたどると、昨年9月末時点で19万4000枚弱だったのが、18日時点では26万2000枚強に膨らんでいる。例えば大同生命保険は、昨年末時点で2500億円あった株式のうち900億円弱の部分をTOPIX先物を売り建ててヘッジしていた。一般に金融機関などが保有ポートフォリオのヘッジに使うのはTOPIX先物が多い。UFJの場合も持ち合い株そのものは売らなくても将来の株安から身を守る目的で先物などを活用することが見込まれる。デリバティブを通じて確実に相場は影響を受けるはずだ。ヘッジの規模の大きさで知られる安田生命保険が活用している手法に「ベア・ウインドウ」と呼ばれるオプション取引がある。権利行使価格の異なるコール(買う権利)の売りとプット(売る権利)の買いを組み合わせる。損益曲線はグラフ(左側)に示したようになり、相場が一定水準より下がれば下がるほど利益が出る仕組みだ。
この取引で相手方になるのは大半が証券会社の自己売買部門。損益曲線はちょうど対称的になって逆に相場が下がるほど損失を被る。このため相場が下がりそうな時には必要分だけ先物を売る。安田生命が保有株を直接売らなくても先物を通じた売りは出るわけだ。安田生命ではベア・ウインドウ以外の手法も用いて昨年9月末時点で保有株式8900億円のうち4000億円ほどをヘッジしていた。
企業年金が最近運用で活用するようになったファンドに「マーケット・ニュートラル」がある。相場全体の変動に左右されず、銘柄選別の巧拙だけを競おうとする手法だ。値動きの似通った複数の銘柄間の売り買いを組み合わせたりする。銘柄間の価格差が開いた時にポジションを手じまうことで収益を得る。
英国系のバークレイズグループが運用しているマーケット・ニュートラル・ファンドは日本株を対象にしたファンドとしては国内で最大級。3月末に728億円だった残高が4月上旬になって900億円の設定上限まで急増した。
ファンドそのものが市場に与える影響は売り買いが同額になるように設計されているため市場全体で見れば「中立」だが、株式を単純に購入するタイプのファンドから資金がシフトするという影響が出ている。それぞれの企業年金は株安の影響を避けようと自衛的にこうしたファンドに取り組むようになったのだが、そうした基金の数が増えることで実際には買いが細る一因に働いているわけだ。
株価指数先物市場では最近、中心限月でない期先限月の日経平均先物取引が話題を集めるようになっている。建玉の水準でみると2003年12月物が2万千枚、2004年3月物が1万7000枚になっており、この時期としては異例なほどの水準が積み上がっている。多くが立会外取引で成立したものだけに憶測を呼んでいる。
これだけ早い時期に建玉が膨らんだ意味を、株式市場関係者の多くは「今後1
年間、相場が上昇する機会はないとあきらめた投資家がいるのだろう」とみてい
る。1人ひとりの投資家が株価下落から身を守ろうとして活用するヘッジの積み
重ねが相場の先行きをさらに弱くしている。(松崎雄典)