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UBSウォーバーグ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん(Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Warburg (Japan) Ltd.)は今日のポイントとして、「米国の為替政策無関心で、日本の需要刺激が遅れる?」を挙げる。
<円ドル相場の安定が、需要刺激策を遅らせる> 政府から思い切った需要刺激策(追加的財政刺激策)の議論が出てこない最大の要因は、「円ドル相場が120円前後で安定していることである」と語る。115円に迫るような 円高がなかなか見えないことが、政策対応の遅れを生んでいる。財務省は、「米国経済の安定化を待って、日銀による量的緩和を拡大すれば、再び円安方向に為替相場を誘導することが可能となり、デフレ圧力の軽減が可能であろう」とみている節がある。
<金融政策面でも、円高シグナル出ているが・・・> 日本の経常黒字は2月には再びGDPの3%に迫っており、日米間のインバランス は拡大傾向にある。また、日銀は、ABS/ABCP買い切りを打ち出したこと に象徴されるように量的緩和姿勢を消極化させており、金融政策面でも、円高シ グナルが出ている。それでも、円高圧力が顕在化しないのは、「米国政府の為替政策が膠着状態にあるためではないだろうか」と見る。 米国政府の為替政策が煮え切らないのはなぜであろうか。ドル安にすれば外需の 回復を通じてデフレ圧力を低下させることができる反面、資本流入を抑制してし まうことで、金利上昇、内需スローダウンといったマイナス面がもたらされる、 といった議論はよく耳にする。しかし、本当にそれだけであろうか。
<米国の対外収支問題が徐々に「構造問題化」> チャート(後掲載)はそうした疑問に対する1つのヒントを与えてくれる。チャートからわかることは、「米国の対外収支問題が徐々に『構造問題化』しつつある」と いうことである。すなわち、米国の国際収支は、98年以降、大きく悪化している が、その大きな背景は、アジアやラテンアメリカ諸国といった新興諸国の通貨に 対する米ドル相場の大幅上昇と、それによる同地域に対する貿易収支の大幅な悪 化、である。換言すれば、「中国元を中心にした新興諸国の通貨が米ドルに対して 過小評価されてしまった結果、米国の対外バランスが構造的に大きく悪化してい る」ということである。
<対新興諸国通貨、対円、対ユーロでのドル切り下げも難題> 米国が対外収支を改善したいと本気で考えれば、これら新興諸国に、対米ドルでの為替相場切り上げを迫る必要がある。しかし、これは、アジアやラテンアメリカの地域経済を直撃するとともに、場合によっては、国際的な安全保証問題にまで発展する可能性がある。「米国政府にとって新興諸国通貨に対する米ドルの切り下げは、依然として、現実的な政策オプションではないだろう」。それでは、ユーロや円に対して米ドルを下落させる政策に出るかと言えば、米国が近々、そこまでの決断をするとは考えにくい。対日、対欧で対外収支を改善できたにせよ、その効果はより限定的なものに止まる可能性が高いうえ、円高、ユーロ高によって 、日欧の貿易黒字が縮小すれば、米国の対外ファイナンスに支障が出るリスクもあるからである。
<米国の無関心振り背景に、為替相場は大きな変動なし> 米国の為替政策上、「ユーロや円といった先進国通貨は、もはや2次的な関心しか持ち得ないものである可能性が高い」と言う。最近のG7会合における為替政策論議の停滞は、米国の無関心ぶりによる部分が大きいものと推察される。為替市場は、そうした米国の無関心ぶり(為替政策の膠着状態)を目の当たりにしながら、当面 は大きく変動しないのではないかとして、こう続ける。「そうなると(日本国内における)財政の追加 出動に関する議論はモメンタムを失う可能性があり、注意が要る」