★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産25 > 543.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
第11回「占有屋排除と云うけれど」 (弁護士 土岐 敦司氏)【nikkei bizplus】.
http://www.asyura.com/0304/hasan25/msg/543.html
投稿者 hou 日時 2003 年 4 月 20 日 11:34:04:HWYlsG4gs5FRk


http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/rensai/index.cfm?i=s_toki11


 民法の改正法案が、次の通常国会に提出されることとなった。法制審議会担保・執行部会で、審議されていた要綱案に基づくものであるが、その中で、特に気になる部分がある。
それは、「短期賃貸借の保護制度」の廃止である。

 1 「短期賃貸借の保護制度」とは何か

建物の借り主(一般的な呼び方でいえばテナント)は、建物の担保権者との関係では、原則的に、担保権の設定登記がなされる以前に、借りる部分の引渡或いは賃借権の登記を受けていないと、担保権が実行され、建物が競売された場合には、競落人(競売で所有権を取得した人)との間に賃貸借契約は引き継がれず、明渡しに応じなければならない。しかも、敷金や保証金も、競落人からは、一切返してもらうことはできない。

しかし、これでは、借り主は、あまりにも不安定な立場に立つこととなることから、担保権者との利益を比較衡量して、一定の短期の賃貸借契約に限って、残存期間内での賃貸借の存続を図ることとしたのが、「短期賃貸借の保護制度」である。

 2 廃止の理由

 しかし、担保権者からみれば、設定登記後に現れた賃借人が担保権に優先することとなり、敷金などの競落人への引き継ぎなどから、落札価格が、下落することとなる。また、競売を妨害する目的で、短期賃貸借契約を締結し、法外な立ち退き料を請求するという事態を引き起こしていることも事実である。そこで、不良債権処理が、現政権の大問題となっている諸事情から、競売の早期終了と競落価格の底上げを行う必要から、占有屋の排除を第一として、「短期賃借権の保護制度」を廃止することとしたのである。

 3 廃止することの問題点

 確かに、占有屋の跳梁跋扈をこのまま放置することができない状況に至っていることは事実である。しかし、テナントビルを建築する場合、ほとんどは、その建築資金を金融機関からの借入金で賄っており、当然、土地や建物には、完成と同時に担保権の設定登記がなされている。そこで、今回の改正が成立すると、担保権の設定登記後に入居するテナントは、担保権の実行がなされれば、3カ月の猶予期間後は、明渡しに応じなければならず、結局オーナーの資金状況を常に把握しなければ、賃貸借の継続も敷金の回収もできないこととなってしまう。テナントのうち、大多数は、優良であり、テナントビルや賃貸マンションとして、事業を継続することについて、障害になるような存在ではないのに、こんな不安定な地位に立たされることとなると、賃料の相場は下落し、敷金や保証金も、非常に低額しか預託しなくなって、不動産の賃貸事業自体の収益性が低くなり、結局、貸し金の回収にとって、プラスには働かない。

 また、競売では、競落人は賃貸人の地位を引き継がないから、敷金・保証金相当分、競落代金が高くなるので、破産などで、管財人の努力による任意売却ができなくなる。 また、同様の理由で、テナントは、預託した敷金や保証金の回収ができなくなることから、大家が破綻した途端に、賃料の支払いをストップするようになる。そうすると、管財人には、管理費も入らなくなり、財団から放棄するしかなくなることとなり、テナントビルが廃虚となるのは、火をみるよりも明らかである。

 この点については、全ての担保権者が承諾し、登記された賃借権は競落人に対抗できることとして保護するとする制度を導入することとしているが、まず、そのためには、担保権者の承諾料分の費用が増えることとなる。また、一棟全体がテナントビルの場合には、その一部屋を借りているテナントは、区分所有権の登記がされていない限り、個別に登記することができないことから、保護の方法がない。これに対して、金融機関は、テナントビルの建築資金を融資する際には、それが賃貸されることを前提にお金を貸している。従って、テナントからの収益に着目して、返済計画を策定しているはずであり、オーナーが破綻した場合に限って、特に、早期の回収を図る利益はないはずである。特に、競売が実行される不動産の賃借人は、短期賃貸借を理由に建物などを不当に占拠している悪辣な占有屋である場合よりは、優良テナントであることの方が圧倒的に多いはずであり、これらの賃借人との賃貸借契約を前提に収益還元法・DCF法による価格評価が行われている現状を考えれば、短期賃貸借制度を一方的に全面廃止しようとする今回の改正案については、反対を唱えざるを得ない。

 賃貸ビルの中に事務所を借りておられる国会議員の先生方は、このような事態に立ち至ることについて、認識しておられるのであろうか。



 次へ  前へ

国家破産25掲示板へ

フォローアップ:
  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。