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外国人惑わす外形課税――日経金融スクランブル
14日の東京株式市場では引き続き買いを手控える投資家が多く、日経平均株価は連日でバブル後安値を更新した。4月1日以降、ほとんどの欧米市場で相場が上昇しているのに対して、日本株の軟調ぶりが際立っている。
代行返上に伴う企業年金の売りなど日本独自の制度変更が相場の頭を抑えている格好だが、最近になって別の制度変更も投資家に混乱をもたらしている。2003年度の税制改正で決まった法人事業税への外形標準課税導入だ。
地方税の一種である法人事業税は、今までは所得に対して課税されていた。標準税率は9.6%だが、自治体によってはより高い税率を課しているところもある。
今回の税制改正では法人事業税の4分の一を外形標準に置き換えた。具体的には所得課税の税率を従来(9.6%)の4分の三に相当する7.2%に引き下げ。一方で支払い給与などに基づいて課税する付加価値割と、資本金などに基づいて課税する資本割という外形標準課税を新たに導入した。
地方自治体が財源を安定的に確保できるようにするのが狙いだが、これが意外な影響を及ぼした。日本公認会計士協会が外形標準課税の導入に合わせて法定実効税率の計算方法を修正。今まで標準税率で40.87%だった法定実効税率は、39. 54%へ1.33ポイント低下した。この法定実効税率の変更が、税効果会計上の繰り延べ税金資産などに影響を与え、企業業績を左右してしまったのだ。
繰り延べ税金資産は、企業が将来回収できると見込んだ税金を資産として計上するもの。だが、税率が下がれば将来の税金が減る計算になるため、計上していた繰り延べ税金資産も減ることになる。
外形標準課税の導入は2004年度からだが、法定実効税率の変更は2003年3月期決算から反映しなければならないため、多くの繰り延べ税金資産を持つ企業は前期決算で損失を出すか、株主資本を減らす必要が出てきた。
投資家がこの事実に気づいたのは3日のNTTとNTTドコモによる業績修正発表がきっかけだ。実効税率の低下に伴い繰り延べ税金資産を再計算した結果、NTTは560億円、NTTドコモは270億円の連結純利益の減少要因になった。それまで市場で外形標準課税がほとんど話題になっていなかったこともあり、投資家は100億円を超える損失に驚いた。
投資家からの問い合わせが増えてきたのに伴い、外形標準課税に関するリポートをまとめる証券会社が相次いでいる。大和総研が2002年9月中間期の数字を基に試算したところ、外形標準課税の導入で連結純利益、あるいは株主資本が減少するとみられる企業の上位には、総合電機やJRグループ各社が顔を出した。中には100億円を超える影響が見込まれる企業もある。
モルガン・スタンレー証券の神山直樹ヴァイスプレジデントも同様の試算をしており、影響の大きい企業として神戸製鋼所や日立金属、NECなどを挙げている。神山氏は「総合電機などは過去に退職金の引き当てなどを税法上認められた以上に実施しており、それだけ繰り延べ税金資産が多くなっているのでは」と説明する。
この制度変更に伴う損失は2003年3月期限りのもの。しかも資金の出入りを伴わないため企業の経営実態は変わらないとの指摘はある。中長期的には収益性の高い企業ほど税負担が減るため、企業が収益性を高める動機になると期待する声もある。
だが、足元では制度を知らなかった投資家を惑わす要因になっている。特に外国人投資家は「新たな業績下方修正の要因に驚き、日本の制度変更はわかりにくいと改めて実感したかもしれない」(メリルリンチ日本証券の菊地正俊シニアストラテジスト)。
折から与党が時価会計の一部凍結を検討するなど、投資家からすれば情報開示の後退と映る話も出ているとき。今回の制度変更もきちんと投資家に周知させておかないと、外国人の日本株離れを加速する一因になりかねない。(水口博毅)