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経済指標
Sat, 12 Apr 2003, 11:42am JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/shihyo.html?s=APpZ71SXmiOqT74uO
一難去ってまた一難、イラク戦争からSARSへ−日本経済の不安要因
東京 4月11日(ブルームバーグ):イラク戦争は最終局面に入ったとの見方が強まり、この面での日本経済の不確実性は急速に弱まっている。しかし一方で、猛威を振う新型肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)が新たな不確実要因として頭痛の種になってきた。
第一生命経済研究所の川崎真一郎エコノミストは、「日本経済は資産デフレと物価の下落の相互作用が影響し、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は極めてぜい弱だ」としたうえで、「イラク戦争の終結は近いようだが、隣国で発生したSARSの影響は、新たな不確実性となり日本経済の懸念材料となる」と指摘する。
SARSの経済への影響ルートは、主に海外旅行と貿易(輸出)の2つ。第一生命経研は、旅行面で0.03%、貿易面で0.06%、合わせて0.09%程度、日本の4−6月国内総生産(GDP)を押し下げ、年間ではGDPは0.03%押し下げられるという。
UFJ総合研究所では、SARSとイラク戦争による海外旅行キャンセル増で、GDPは約730億円、02年GDP比0.01%程度減少すると試算。数値だけみると小さいが、海外旅行だけでなく日本経済全体に対する影響が軽微で済むとは言い切れない、としている。
また同総研は、SARSが中国・東南アジア地域の経済成長率を押し下げるリスクがあると指摘。現時点ではSARSの影響は7月までに終息すると仮定しているものの、長期化もあり得ると注意を促している。
航空、旅行業界に大打撃
旅行面の影響はマクロ経済的には軽微だが、ゴールデンウィークで繁忙期を迎える旅行業界や航空業界にとっては大打撃だ。第一生命経研は、今年のゴールデンウィークは休暇日数が短いとはいえ、航空、旅行業界に与える影響は多大だと指摘する。
大手旅行会社はすでに香港、中国、シンガポール向けのツアーを相次いで中止。10日には国内旅行代理店最大手のJTBが香港、広東省へのパック旅行中止の期間延長を発表するなど、影響は広がっている。治療方法、感染源などがはっきりしないため事態好転のめどは立っていない。
第一生命経研では、6月までの約3カ月は騒ぎが続き、この間のツアーは全面中止、個人旅行は半減すると仮定。この場合、旅行キャンセル率は平均69%となり、香港への旅行者は24万人、中国は52万人、シンガポールは12万人、合計で88万人が旅行を取りやめると試算する。一方で、香港、中国、シンガポールから来日する人も11万人程度減るという。
UFJ総研では、仮に3−6月の香港・中国への旅行者数が前年同期の約145 万人から半減した場合、旅行業の売り上げは前年比657億円程度減少し、同期間の旅行取扱高は3.7%減少するとしている。
一方で、入国者より出国者の方が多いため、日本国内経済への悪影響が数字上は軽減されることに加え、海外旅行中止分のいくらかが国内旅行に振り替えられれば、国内経済への悪影響は一段と小さくなる、という指摘もある。
三井住友アセットマネジメント、アセットアロケーショングループの本間基照エコノミストは、日本の年間海外旅行消費額は約5兆円で、このうち被害の大きい香港、シンガポールは合わせて全体の1割と指摘。「半年間、香港、シンガポール旅行の消費額がゼロとなっても影響額は2500億円にとどまる。仮にこれらが国内消費に回ったとしても影響は限定的だ」とみる。
雇用・所得環境も厳しく、イラク戦争の影響もあり先行き不透明感が強いなかで、消費者の財布のひもは依然固く、「国内旅行にも出かけない」という人も多い。内閣府の景気ウォッチャー調査でも、旅行代理店から「海外旅行の申し込みが低迷。国内旅行へのシフトも顕在化していない」といった声が寄せられている。また、観光が主産業の沖縄では修学旅行や社員旅行を中心にツアーのキャンセルが相次ぎ、同地域の経済に深刻な影響を与え始めている。
輸出、生産への影響
貿易面の影響は、輸出に頼る日本経済には致命傷になりかねない。香港、中国、シンガポールなどは日本の現地生産工場が多く進出しており、同国・地域への日本からの輸出は全輸出の19%程度を占める。
SARSの影響で、同国・地域で工場・オフィスの閉鎖、外出の自粛、マインド悪化などが広がった場合、生産ラインの停止、部品供給への影響、物流への悪影響などを通じて日本の輸出に影響が出る可能性がある、と川崎氏は指摘する。
第一生命経研の試算では、4−6月の同国・地域向けの輸出が5.0%減少した場合、日本の輸出全体に0.95%程度のマイナスの影響を与えるという。ただ、製品製造過程で日本とアジアが分業関係にある場合が多く、輸出減と同時に輸入も減少するため、外需全体ではGDPを年間で0.02%押し下げることになる。
輸出の減少は、国内の生産にも影響する。UFJ総合研究所では、仮に中国、香港向け輸出が10%減少した場合、鉱工業生産は1.0%程度押し下げられ、なかでも、中国、香港向け輸出のウエイトが大きい繊維、精密では2%を超える生産減となる、としている。また、すでに弱含みとなってきている「輸出」、「製造業の生産活動」に、SARSによるアジア向け輸出減が追い討ちをかける懸念も大きいと指摘している。
東京 青柳 仁美 Hitomi Aoyagi
http://www.bloomberg.co.jp/jphome.html