現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産25 > 378.html ★阿修羅♪ |
|
UBSウォーバーグ証券会社・経済調査部チーフエコノミストの白川浩道さん(Hiromichi Shirakawa/ Chief Economist, UBS Warburg (Japan) Ltd.)は今日のポイントとして、「個人消費の視点」を挙げる。昨日の日銀の決定にサプライズはなかったとした上で、「早ければ、5月末にも 、高格付けABCPの買い切りをスタートさせるだろう」と語る。しかし、実体経済への効果は限定的で、「今回の措置は、時間稼ぎに過ぎない」と見る。6月以降 、財政と同時出動へ行くのか、あるいは金融システムの混乱の中でETFへ行く のか、2つに1つ。「当社の見方は前者のシナリオの確率が高い」と言う。
<最も重要な背景は、平均消費性向の高止まり継続> マクロ的にみた場合、個人消費は、昨年来、予想に比べて堅調な推移を見せている。その背景として最も重要な点は、「平均消費性向の高止まりが継続している」ことである。四半期平均の勤労者世帯・平均消費性向(季節調整後)をみると、昨年1−3月期以降、70.1%、72.5%、74.5%、73.2%、72.5%(1−2月平均)となっており、昨年7−9月期のピークからは緩やかに低下している。だが、低下のペースは想定比鈍く、また、絶対水準でみても、97年4月の消費税引き上げ後の平均値 (71.7%)を上回っている。
<消費性向が容易に低下しない、2つの基本的考え方> やや長い目でみても、消費性向がなかなか低下しない点については、基本的に2つの考え方がある。第1の仮説は、所得の関数となっているのは、消費ではなく貯蓄である、というものである。これは、「消費者は消費計画の大幅な変更を嫌がる傾向があると同時に、消費水準の平準化を望む」という仮説である。この仮説に従えば、可処分所得が減少を続けても、消費者は、暫くの間(1−2年程度の比較的長期となる可能性もある)は貯蓄水準を調整するため、平均消費性向が結果として上昇することになる。第2の仮説は、ある特定の消費者層で平均消費性向の著しい上昇が生じ、これが結果として、マクロでみた平均消費性向の上昇に繋がっているというものである。
<中高齢者層では、自動車関連費や通信関連費が増加> 家計調査の年報を用いた分析によれば、「昨年に関して言えば、第2の仮説が妥当する可能性が高い」と言う。すなわち、勤労者世帯についてみると、「世帯主年齢が50歳以上の高齢者層で、消費性向が大きく高まっており、これが全体の消費性向を押し上げている」。その結果、我々の試算によれば、昨年の勤労者世帯の名目消費は1.3%程度も押し上げられたものとみている。さらに興味深いことに、これらの 高齢者層では、自動車関連費や通信関連費が増加している点だ。「高齢者が、海外旅行や遊興費等乗数効果の低い消費項目ではなく、耐久消費財や通信関連といったマクロ経済にそれなりに波及効果のある項目にも支出したことが観察される」
<中高齢者の消費性向、予想比で高止まる可能性> 問題は、こうした高齢者世帯の消費性向上昇が、「構造的なものであり、持続可能性が高い」のか、あるいはそうではなく、「一時的な現象に止まるのか」という点である。この点について、「我々は、現状では、明確な答えを持ち合わせていない」。しかし、高齢者層の消費性向上昇の背景に、雇用環境の安定(高齢者の失業率が相対的に上昇している事実はない)や公的年金制度の現状維持といった要素がある。それらの要素について今年も大きな変化が起こらないとすれば、「高齢者層の消費意欲が大きく低下するシナリオは想定し難く、彼らの消費性向が予想に比べて高止まる可能性がある」。同社の個人消費見通し(実質GDP・年度ベー スで−0.5%)にはアップサイド・リスクが出てきたと言わざるを得ない、と言う。(詳しくは、明日発刊の「日本経済展望」(月次レポート)を参照されたい)