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銀行株安、意外な犠牲者？――証券会社に損失の可能性[日経金融新聞]（スクランブル）
http://telecom21.nikkeidb.or.jp/cb/au/top/index.html 四日の株式市場では三井住友ＦＧなど四大銀行株が反発したが、朝方にはそろって安値を更新する場面もあった。背景にあるのは優先株などを利用したヘッジファンドの動き。その仕組みを検証してみると、どうやら銀行だけでなく証券会社も食い物にされている可能性があるようだ。
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「転換価格の下方修正条項付き優先株を使った取引では定石。デリバティブ（金融派生商品）担当者なら大体知っている」。ＢＮＰパリバ証券株式クライアント・コンサルティング部の栗田昌孝部長が解説する取引はおおまかに言って二段構えになっている。
転換価格の下方修正条項付きの優先株を単独で保有した場合の損益線はグラフ
（１）のようになる。株価が転換価格（Ａ）を上回れば値上がり益を享受できる。株価が転換価格を下回っても、下方修正の下限（Ｂ）までの範囲内であれば損はしない。投資金額に見合うだけ、入手できる普通株の数量が増えるからだ。だが、株価が下方修正の下限を下回ってしまうと、そこからは損失が発生してしまう。その「穴」をふさぐために、プットオプションを購入する。「売る権利」は転換価格の下限に設定、株価が大きく下落しても、損のない価格で売却できるようにしておく。株価が上昇した場合はオプションを放棄すれば損はしない。購入したプットの損益線はグラフ（２）のようになる。独自のオプションが必要なので、店頭デリバティブ市場で証券会社に相対取引を申し込む。証券会社がオプションを生成する時点の株価は転換価格の下限よりはるかに高い場合が多いので、プットの売り手となる証券会社を探すのに苦労はしないという。そうして生成したプットオプションと優先株を同時に保有した場合の損益線がグラフ（３）だ。株価が上昇すれば確実に値上がり益を享受できる一方で、値下がりリスクはプットオプションでヘッジされている。オプションの購入料金は優先株の配当で賄える。もうかることはあっても損はしない「無敵」のポジションが出来上がったわけだ。だが、これらはまだ第一段階にすぎない。さらにもうけを確実にする第二段階は、プットの売り手である証券会社の損益線（４）まで利用する。プットの売り手である証券会社は、株価の下落局面では、ヘッジの効き具合を調整するために、空売りの株数を増やす必要がある。反対に株価が上昇すれば、買い戻しを入れる。つまり、株価の上下動に合わせて、順バリの売買を強制されてしまうのだ。
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それを利用する狙いで投資家側は空売りを仕掛け、株価を弱含ませる。するとプットの売り手となった証券会社からヘッジ売りが出るため、株価の下げにはますます拍車がかかる。株価が十分に下げたと判断したら、カラ売りしていた株式を買い戻して利益確定したうえで、新規の買いポジションをつくる。株価の反発に応じて証券会社は買い戻さざるを得ないから、株価は力強く上昇、今度は値上がり益が狙える仕組みだ。
例えば三井住友ＦＧの場合、二月の高値四十一万四千円から約六割下落した後、ひとまず下げ止まる兆しも出ている。この取引に当てはめると空売りのサイクルが終了し、買いへと切り替わる局面なのかもしれない。
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株価がどちらに動く場合でも、証券会社は後手に回ってしまうので、大きな損失を被りがちだ。一九九七年に同様の取引でさくら銀行株が急落した際、ある外資系証券会社は約九百億円の損失を被り、現在でも専任の「戦後処理係」を置いているという。
その時の経験から外資系証券には、この取引の危険さがある程度は認知されている。現在、銀行株の売買手口上位には国内の証券会社が顔を出すことも多く、市場では「損失計上につながりはしないか」との警戒感も出始めている。転換価格の下方修正条項という甘味剤なしには資金調達ができなかった大手銀のふがいなさが、今後、思わぬ波紋を広げる可能性がある。
（山下茂行）
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