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逃げ出す外国人マネー――[日経新聞] スクランブル
2日の東京株式市場は日経平均株価が続伸し、8000円台を回復して引けた。前日の米国株が反発したことなどを受けて幅広い銘柄が買われ、東証一部の値上がり銘柄数は千を超えた。ただ、大手銀行株は軒並み下落。新年度入りと同時に持ち合い株の売却が出やすくなったとの見方があった。
銀行株や国際優良株が典型だが、足元の株価低迷の最大の要因は持ち合い解消や代行返上に伴う売りなどに代表される需給の悪化だ。特に大手製造業を中心とした国際優良株については、企業の実力から見ればかなり割安な水準まで下げたとの声も増えてきた。だが、本当にそうなのだろうか。
法人企業統計に出てくる大企業製造業の設備投資と減価償却費を比較すると、2002年の設備投資額(ソフトウエアを除く)は前年比21%減の7兆8500億円で、減価償却費(8兆3800億円)を下回った。設備投資が減価償却より少なくなったのは調査開始以来初めて。企業が海外で設備投資を増やしたり、リースを活用するケースが増えていることを考慮する必要はあるが、縮小する日本の製造業の一端を物語っている。3月の日銀企業短期経済観測調査(短観)によると、2003年度も大企業製造業の設備投資計画は2.9%増にとどまり、先行きに対する慎重な姿勢は今後も続きそうだ。
成長の源泉となる設備投資の低迷は、日本株に対する投資家の見方を大きく変える可能性がある。クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券の市川真一ストラテジストは「日本全体の過剰供給構造が是正されていないために、優良企業ですら設備の更新が進まない」と指摘。過剰設備削減のさなかとはいえ、設備投資の弱さは日本企業の中長期的な競争力に直結する。
成長期待が薄れれば、日本株を積極的に買う外国人投資家は減る。特にアジア地域で見れば、ハイテクで日本より強い事業分野を持つ韓国や台湾、コスト競争力で有利にある中国など、成長性の期待できる市場は少なくない。実際にそういう判断から"日本株離れ"の姿勢を強める外国人が増えているとの指摘も出てきた。
ある外資系運用会社のファンドマネジャーは、2002年10月以降の欧米株の反発時に、他のアジア株に比べて日本株の戻りが鈍かったことについて、「国際分散投資をするファンドがアジア内における日本株の比重を下げた」と解説していた。外資系証券のストラテジストの中には、海外出張のたびに韓国との比較で日本企業の成長性について質問される人もいる。
クレディ・アグリコル・インドスエズ証券東京支店の草野豊己副支店長によると、1990年代半ばまでの外国人は日本の国際優良株に投資する際に、長期の成長を前提として高いPER(株価収益率)でも買っていた。だが、ここにきて外国人の間では前提が崩れた。「成長性がさほど期待できないならPERは10―15倍で10分」(草野氏)という。だとすれば、今の国際優良株も決して割安とは言えなくなる。 実際、企業業績が大きく改善したにもかかわらず2002年度の外国人の買越額は2001年度に比べて4分の一ほどに縮小したもようだ。 日本市場の流動性低下も外国人が敬遠する要因の一つとの声もある。2002年末時点での時価総額を見ると韓国や台湾は日本の約1割にとどまるが、売買代金では日本の約4割の水準まで膨らんでおり、国際投資をしている投資家にとってそれだけ重要性が増している。逆に売買代金の低迷する日本では外国証券の日本株業務からの撤退が相次いでいる。
日本経済の再生の原動力はやはり設備投資だろう。マクロでみれば設備削減の動きは今後も続くが、市場が吟味しているのは個別企業の投資動向。シャープは今期、前期比二倍の1080億円に及ぶ液晶事業への集中投資を決断した。こうした企業が増えれば、外国人が再び日本株を「PERで買う」日がくるかもしれない。
(水口博毅)